小関 順二氏が選ぶ高校生ビック3!甲子園の投球がドラフト戦線を分けた!
私の“高校生ビッグ3”はこの3人!
藤平 尚真(横浜)
マスコミが当初伝えた“高校生ビッグ3”は藤平 尚真(横浜)、寺島成輝(履正社)、高橋昂也(花咲徳栄)の3人だった。野球にとって「3」は基本中の基本の数字で、試合は3回ずつ前半、中盤、終盤の順に進み、スターティングメンバーは3の倍数の9人で構成され、打率、ホームラン、打点の打撃タイトルをすべて獲れば三冠王である。
漫画家の故畑田 国男氏は3に霊的な力があるとして、「野球にとって3は霊数である」と言ったことがある。その3(“ビッグ3”)を捨て、今井達也(作新学院)を加えて“ビッグ4”と呼ぶようになったのは、マスコミのビッグ3に対するこだわりの強さと、今井の無視し切れない迫力のためである。ビッグ3の呼称は捨てたくないが、その痕跡を残しつつ今井を加えて“ビッグ4”と呼ぶ。そこに違和感がないわけがない。
藤平はストレートが150キロを超える力のピッチング、寺島は展開によって力をセーブする大人のピッチングでスカウトの評価が甲子園大会前から高かった。高橋は埼玉大会準決勝、3ボールが一度しかない盤石のコントロールで春日部共栄戦を4安打完封に封じ込めるピッチングを見て“ビッグ3”の呼び名に誇張がないと確信した。
そんな私が「序列が変わったのでは」と思ったのは甲子園大会が始まってからだ。
甲子園を境に入れ替わった6人の調子の波
髙田 萌生(創志学園)
甲子園大会に万全の体調で臨めなかった藤平、寺島、高橋に対して、甲子園大会にピークを合わせたのが今井、髙田、堀 瑞輝(広島新庄)の3人だ。今井は甲子園大会まで無名の存在として過ごすが、尽誠学園との初戦に先発、ワンバウンドするかと思った低めからホップするように伸びてくる最速151キロの球筋を見て、「この選手こそナンバーワン投手」と確信した。
その翌日、初戦の盛岡大附戦でストレートが今井を上回る152キロを計測したのが髙田だ。ストレートを前面に押し立てるのではなく、縦変化のカーブ、スライダーとの緩急で打者を翻弄、3回まで1安打に抑えるピッチングに春からの成長を感じ取った。4~5回にコントロールを乱し11点を取られるが、強い腕の振りに揺るがない下半身の充実がものすごく、私の中では藤平、寺島、高橋より印象が強く残った。
堀は甲子園大会よりテレビ観戦したU-18アジア選手権(台湾)のほうがよかった。甲子園では毎試合144キロ程度だったストレートが台湾では148キロまでスピードアップし、「打者から見て消える」と言われた真横変化のスライダーは岩瀬 仁紀(中日)の勝負球と酷似し、3試合、9回3分の2を投げた結果は、被安打1、奪三振18、防御率0点という迫力。評価の上げ幅が最も大きかったのはこの堀かもしれない。
高校生ビッグ3を入れ替えるというより、甲子園大会を境に6人の調子の波が入れ替わったというのが正直な思いである。
旧高校生ビッグ3……藤平 尚真、寺島 成輝、高橋 昂也
新高校生ビッグ3……今井 達也、高田 萌生、堀 瑞輝
こう書いたほうがピンとくる。6人は揃ってプロ志望届を提出し終え、10月20日のドラフト会議に臨む。プロスカウトの厳しい目はどういう評価を与えるのだろうか。
(文・小関 順二)