トレーニングのメリット&デメリットを徹底解説!
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
空はすっかり秋らしくなり、寒暖の差が激しい気候となりました。選手の皆さんは体調管理にはいつも以上に心配りを行い、体調不良などで練習や試合を休むことのないように、元気にがんばってほしいと思います。さて今回は技術練習と並行して行っている体力強化のためのフィジカルトレーニングについて、特にフリーウエイトを使ったものとトレーニングマシンを使ったものの違いなどについて、お話をしたいと思います。
フリーウエイトのメリット・デメリット
フリーウエイトを使ったトレーニングは専門的な動きづくりに役立つ
器具を使ったウエイトトレーニングの中で、特にダンベルやバーベルなど自分で動きをコントロールしながら行うことの出来るものをフリーウエイトと呼びます。フリーウエイトのメリットとしては比較的大きな部位を鍛えることが出来るだけではなく、身体を支えるための支持能力やバランス、腹筋・背筋などの体幹筋群も同時に鍛えられることがあげられます。
またトレーニングというのは基礎的なエクササイズがある程度出来るようになると、専門生の高いエクササイズに移行しますが、野球の動作に似たような動きを取り入れるときは、フリーウエイトを使って行うことが多くなります。トレーニングマシンは動きの軌道が固定されているため、自由な動きを行うことはむずかしいのですが、その点フリーウエイトであればさまざまな動きに対応しやすくなります。
ただしフリーウエイトは正しい動きを習得するために時間がかかることと、間違ったフォームでトレーニングを積み重ねていると、パフォーマンスアップどころかケガのリスクが高くなってしまうデメリットが考えられます。フリーウエイトでトレーニングを行う場合は、専門家や指導経験のある人などに正しい動きをチェックしてもらうことが望ましいといえるでしょう。また高重量のウエイトを一人で扱うこともケガの原因となりやすいため、必ず補助者(トレーニングパートナー)をつけてトレーニングを行うようにしましょう。
トレーニングマシンのメリット・デメリット
一方トレーニングマシンではそれぞれに鍛える部位が限られているため、全身を鍛えるというよりは気になる部位を重点的にトレーニングするときに用いられます。動きの軌道が固定されているため、トレーニング中にバランスを崩すことは少なく、重量の設定も簡単に行うことができるので、トレーニングパートナーが不在でも一人で安全にトレーニングを行うことが出来ます。
またケガをして全体練習に参加できないときには積極的に患部外トレーニング(ケガをしているところ以外の筋力を維持するためのトレーニング)を行いたいところですが、こうしたトレーニングマシンは強化したい部位を特定しやすく、関節可動域も限られているため、安全に行えるという点で適しているといえるでしょう。
一方でフリーウエイトのように自由な動きを伴うトレーニングには不向きであり、専門性が高くなればなるほどトレーニングマシンでは対応しにくくなってきます。身体を支える支持能力やバランス、体幹の安定性といったものもトレーニングマシンではあまり鍛えられません。また単調な動きの繰り返しではトレーニングがマンネリ化しやすいことも考えられるため、エクササイズ種目を変えたり、フリーウエイトでのトレーニングを取り入れたりしながら行うようにしましょう。そもそもトレーニングマシンの種類が少ない環境では、鍛えられる部位は限られてしまうことも考えられます。
腹筋を鍛えるマシンは効果があるの?
体幹トレーニングはEMSマシンとは違って、脳からの指令を受けて筋肉を収縮させる
よく通販番組などで紹介されている腹筋を鍛えるためのEMSマシン。EMSとはElectrical Muscle Stimulationの略で電気刺激によって筋肉を他動的に鍛えるマシンのことを一般的にEMS(もしくはEMSマシン)と呼んでいます。腹筋運動はキツいと感じる人が多いと思うので、こうした電気刺激によって腹筋が鍛えられるのであれば、手軽でいいかも…と考える人は少なくないでしょう。ただし自分で行う腹筋運動とEMSマシンには大きな違いがあることも知っておきましょう。
まずトレーニングは脳からの指令によってターゲットとなる筋肉を収縮させて鍛えているということ。脳からの指令は脊髄を通って運動ニューロンと呼ばれる神経に伝わり、そこから運動ニューロンが支配している筋肉を動かすようになっています。一つの運動ニューロンが動かす筋線維のまとまりを運動単位と呼びますが、トレーニングをすることによって筋線維のまとまりをより大きくしたり、神経から筋への出力が高まったりして、筋力を向上させることが知られています(トレーニング開始から1ヶ月程度)。
この時期は筋線維の太さはあまり変わらないのですが(だからトレーニング効果は目に見えて現れにくい)、筋力はアップする傾向にあります。EMSマシンではこうした過程が省略されてしまうため、筋線維そのものを太くすることは得意でも、さまざまな動きの中で筋力を発揮するということについては、実際にトレーニングを行った方がより適しているといえるでしょう。またEMSマシンは電気刺激によって人工的に筋肉を収縮させるため、筋肉の持つ限界値を超えてしまうと筋線維を傷めてしまうリスクが高まります。
一方でEMSマシンは自分の意志ではうまく動かしにくい筋肉に対し、電気刺激を与えることによってトレーニングすることが可能ですので、鍛えにくい部位や細かいところを鍛えることに適しています。皆さんが鍛える腹筋は野球のパフォーマンスにつながるものであることが前提としてありますので、EMSマシンだけに頼らず、地道にさまざまなトレーニングを行って専門的な動きのレベルを高めることが大切ではないかと思います。
【トレーニングとEMSマシン】
●フリーウエイトは強化部位のみならずバランス能力の向上や体幹の安定性にもつながる
●トレーニングマシンは動きの軌道が決まっているのでより安全に行うことができる
●EMSマシンは電気刺激によって筋肉を他動的に動かすもの
●脳から指令を受けて筋肉を動かす過程を省くと、見た目のみの筋肥大になりやすい
●フリーウエイトとトレーニングマシンそれぞれのよいところをうまく活用し、筋力強化しよう
(文=西村 典子)
次回コラム公開は10月30日を予定しております。
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