試合レポート

前橋育英vs中村

2017.03.20

前橋育英投手陣に共通する技術的長所とは?

前橋育英vs中村 | 高校野球ドットコム
皆川喬涼(前橋育英)

 前橋育英の投手陣が素質の豊かさを見せた。現在の野球界はプロ、アマに関係なく、複数の好投手を擁していることが勝ち抜くための条件になっている。結果的に藤浪晋太郎(阪神)1人が投げ抜いた形になったが、2012年の春、夏連覇を達成した大阪桐蔭澤田圭佑(オリックス)という好投手が控えていたのがいい例である。

 さて、私が注目した前橋育英の投手陣とは左腕の丸山和郁、右腕の皆川喬涼根岸崇裕のことだ。3人に共通するのは前肩の早い開きがないこと。1人だけそういう長所を備えているならそれは個人の自覚と言えそうだが、3人に共通するならそれは指導者の教育の賜物と言わなければならない。

 丸山でとくによかったのは右打者の内角に投じるストレートだ。左腕のこういう球筋は一般に「クロスファイヤー」と言われる。対角に切れ込んでくるので「クロス」という言葉が充てられるが、丸山の場合はクロスしないで直線的に内角に飛び込んでくる。投げられた瞬間、打者は死球の恐怖にかられるのではないか。腕の振りが本当のオーバースローで右肩の早い開きがないからこういう球筋が生まれる。中村の各打者がボール球の高めストレートを空振りするシーンも目立った。プロ野球の和田毅(ソフトバンク)、杉内俊哉(巨人)に共通する球の出所の見えづらさも大きな武器である。

 ストレートの球速は最速144キロと速く、大きい縦割れのスライダーのキレも見事。さらに111キロ台前半のカーブとチェンジアップを備え、コントロールも安定している。欠点はなさそうに見えるが、スタミナ不足が唯一の不安要素。6回表、先頭打者にセンター前ヒットを打たれたところで降板したのはいいタイミングだったと思う。


 2番手として登板したのは3番打者でセンターを守っていた皆川。身長170センチの丸山に対して皆川は178センチ。最速141キロのストレートは打者近くでもキレのよさを失わず、丸山同様にリリースでボールを押さえ込めるので低めがよく伸びる。

 皆川のあとを受けて8回から登板したのは192センチ、93キロの巨漢、根岸だ。丸山と皆川の開かない長所は根岸にも共通するが、2人にくらべると腕が振れない。最速141キロのストレートやカーブのキレなどボール1つ1つを取ればひけをとらないのに、腕が振れないだけでどこか自信なさげに見える。相手校、高知中村のOB、山沖之彦(元オリックスなど)を思い出してしまった。山沖が本格化したのは専修大学進学後なので、根岸にもそれくらいの時間的な猶予が与えられれば大化けする可能性があるが、とりあえず今は自信をもって腕を振ってほしい。

 高知中村では一圓優太(3年・三塁手)がよかった。6回のライト前ヒットは皆川のベストボールと言ってもいい内角低めの141キロのストレートで、これを何の躊躇もなく振り抜いた。9回には根岸の137キロストレートを捉えて右中間を破る二塁打。もう少し見たかった選手である。

前橋育英vs中村 | 高校野球ドットコム
オススメ!
第89回選抜高等学校野球大会特設サイト

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.07

上田西が0封に抑えられて初戦敗退 23年はオリドラ1を擁して甲子園出場

2024.07.06

23年三重王者・いなべ総合が初戦で敗れる!9回に逆転満塁弾を許す

2024.07.07

滋賀大会では日野がサヨナラ勝ち、伊吹はコールド勝ち【2024夏の甲子園】

2024.07.06

MAX153キロ、高校通算39本塁打、偏差値70! 東京の超進学校に現れた“規格外の男”森井翔太郎の「気になる進路」

2024.07.07

大阪桐蔭・德丸らとU-12代表経験のエリート主将率いる立命館守山が5回コールド発進!【24年夏・滋賀大会】

2024.07.05

白山高元監督の“下剋上球児”再現はあるのか!? センバツ1勝の宇治山田商、2年生集団で東海大会準優勝の菰野など各ブロックの見所を紹介【2024夏・三重大会展望】

2024.07.05

春連覇した加藤学園は悲観達成を狙う! 静岡、日大三島、藤枝明誠、プロ注右腕・小船を擁する知徳らが行く手を阻む!?【2024夏・静岡大会展望】

2024.07.05

静岡大会ではノーシード勢が初戦、常葉大菊川、聖隷クリストファーが開幕6日に登場【2024夏の甲子園】

2024.07.05

大阪大会は京セラドーム大阪で6日に開幕、大阪桐蔭は14日、履正社は14日に初戦【2024夏の甲子園】

2024.07.05

三重大会が6日開幕、昨夏代表のいなべ総合が初日に登場【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!