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今年の選抜出場選手をドラフト的観点で評価!投打のトップクラスはこの選手たちだ!

2017.04.16

 センバツの楽しみ方は、選手たちをドラフト的な観点で見て評価することにある。今回はスポーツライター・小関順二氏に、今年の第89回センバツ大会の出場選手からドラフト的に総括していただいた。

140キロ超え投手の中からドラフト的に魅力なのはこの4人!

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三浦銀二投手(福岡大大濠)

 第89回センバツ大会をドラフト目線で見直してみたい。
 投手で140キロを超えたのは26人。この中で、ドラフト目線で見て私が魅力的だと思ったのは次の4人だ。
 148キロ 川端 健斗秀岳館・左左)175/70
 146キロ 三浦 銀二福岡大大濠・右右)175/75
 145キロ 徳山 壮磨大阪桐蔭・右右)183/73
 142キロ 櫻井 周斗日大三・左左)177/81

 三浦は延長15回、1対1の引き分け再試合となった滋賀学園戦のピッチングが光った。前々日に15回投げた疲労残りのためか1、2回は外角にかわす姿が目立ったが、1点ずつ取られた反省もあったのだろう、3回からは一転して攻撃的なピッチングに変わった。9回投げ、四球1、死球2の内訳に、内角攻めの意欲が垣間見える。

 変化球はカーブ、スライダー、チェンジアップがあり、ストレートにも±10キロ程度の緩急をつけバリエーションをもたせていた。2日前に延長15回、196球投げながら、2日後の再試合で130球投げた9回完投。ストレートは最速146キロから142キロに減速したが、この142キロを7回に投げるスタミナにも驚かされた。

 内角を攻める攻撃的精神とそれを可能にする制球力、さらに3日間で326球投げるスタミナなど三浦の魅力は多いが、最もいいと思うのは投球フォーム。早く開かない左肩、投げにいくときのヒジの高さ、球持ちのよさ、下半身主導の流れ……等々、美点は数多く、それがあるから過酷な投球数にもかかわらずきれいな球筋の直曲球を投げられるのだと思った。

 左腕、櫻井は昨秋の東京大会決勝早稲田実戦で左打者の清宮 幸太郎を5打席連続三振に仕留めて話題になった。そのときの結果球がすべてスライダーだったので変化球投手の扱いを受けているが、最速144キロ(センバツでは142キロ)のストレートには力強さがあり、スライダー勝負を行う際の重要な伏線になっている。

 スライダーのキレはドラフト候補の名に恥じない。1回戦履正社戦で記録した13奪三振のうちスライダーが結果球だったのが10個(チェンジアップ2、ストレート1)あり、清宮と並び称される超高校級スラッガー、左打者の安田 尚憲からは3打席連続、4番で右打者の若林 将平からは4打席連続で三振を奪い、この7三振のうち結果球がスライダーだったのは6個もある。

 縦、斜め、さらに大、小2種類をカウントや局面によって使い分け、左右に関係なく強打者ほど手玉に取る姿や右肩上りの投球フォームから、往年の広島のエース、川口 和久を思い出す人もいるだろう。

 この櫻井より川端は右肩上りのフォームで投げる。それが魅力として映るのはリリースのときボールをしっかり押さえ込めていて、ストレートが低めに伸びるからだ。それでも、ゲーム序盤や終盤には抜け球が目立つ。1回戦の奈良高田商戦は2回裏に2四球、2回戦の作新学院戦は代わって2イニング目の8回表に3四球、さらに9回に2四球を出す乱調ぶりだった。

 それが2日後の準々決勝健大高崎戦ではストレートのスピードこそ最速141キロに落ちたが真縦に落下してくるキレ味抜群のスライダーとカーブが決まり、13奪三振、2失点に抑え完投した。準決勝大阪桐蔭戦でも好調は続き、8回1死二塁からリリーフ登板し、計6人の打者を相手に4奪三振の快投を演じた。175センチ、70キロという線の細い体形はプロ好みがするとは言い難いが、高角度から落ち込んでくるスライダー、カーブのブレない球筋、さらに左腕という希少性にプロが食指を伸ばさないはずがない。

 優勝投手の徳山は昨年から最も変貌を遂げた選手ではないだろうか。「ストレートがそこそこ速い直線的なピッチャー」というのが昨年までの印象。それがこの大会で「超高校級」まで駆け上がってしまった。

 内外のコーナーワークにすぐれ、とくに外角低めのコントロールは抜群。変化球は105キロ程度で斜め変化するカーブに、横変化のスライダーが主体で、130キロ前後で鋭く小さく落ちるフォークボールがあるが、履正社の主砲、安田にはストレート主体で挑み、3打数1安打(1四球)と互角の勝負を演じた。「ドラフト上位候補」と言っていいと思う。

[page_break:今年のドラフトの主役である清宮、安田の魅力とは?]

今年のドラフトの主役である清宮、安田にしかできないスペシャルな特技とは?

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清宮幸太郎選手(早稲田実業)

 野手は清宮 幸太郎早稲田実・一塁手・右左・184/103)と安田 尚憲履正社・三塁手・右左・188/95)が、今年の「高校生の」というより、今年の「ドラフトの主役」と言ってもいいくらい存在感を高めている。

 清宮が所属する早稲田実は戦前、優勝候補の一角と評価されていたが、投手力の不安定さが改善されていなかったので私は高く評価していなかった。それでも清宮のバッティングの破壊力は破格で、できれば準々決勝くらいまで見たかったというのが正直な感想である。

 1回戦明徳義塾戦では第1打席、初球の低めストレートを鋭く振り抜いてセンター前に弾き返したが、「えっ、ここから打ちに行くの」と思うくらい、じっくりボールを呼び込んでから打ちに行った。第2打席は高い放物線を描くセンターフライで、打球はあわやスタンド入りか、というくらいの飛距離。この高い打球は2回戦東海大福岡戦でも見られ、第3打席では右翼手が目測を誤るくらいの高い打球となって記録は三塁打、第5打席の打球もとんでもないくらい高い放物線を描くショートフライだった。

 第2打席の一塁ゴロのとき途中で走るのをやめてしまうなど、大型選手にありがちの怠慢プレーもあったが、東海大福岡 安田大将のアンダーハンドからの超絶技巧に走ることを忘れてしまったのだと好意的に解釈したい。平凡なフライアウトが評価の対象になる選手などそうそう現れるものではないことだけは確かである。

 清宮と評価を二分する安田も凄い。清宮が「脱力」なら、安田の凄みは「始動の遅さ」にある。振り遅れにつながるなど否定的に言われることが多いが、始動の遅さは安定した体勢でボールを長く見続けられることでもある。差し込まれる危険性は高いが、その状態からバットを振ってもボールを芯でとらえるスイングスピードがあるなら、始動は遅いほうがいい。メジャーリーグ放送を見ればわかるが、向こうのほとんどの打者は遅い始動でバットを振りにいっている。

 1回戦2回戦の成績は7打数1安打、打率.143と絶不調の底であえいだが、準々決勝以降の3試合は10打数6安打、打率.600と当たりに当たり、チームを決勝に送る原動力になった。

 始動の遅さとともに動きの小ささも安田の大きな特徴である。バッティングの振幅が小さいということは反動を使わないということでもある。これは清宮でも真似のできない、安田だけのスペシャルな特技である。

 2人以外では2年生に取り上げたい選手が多く、3年生は「即プロ」という目線で見れば少ないというのが素直な印象である。ストップウォッチ的な評価では、捕手としてイニング間で最速1.84秒をはじめとして1.8秒台を連発し、実戦ではそれを上回る1.78秒を2回戦静岡戦で計測した福井 章吾(大阪桐蔭・右左・168/73)が目立つ存在だ。

[page_break:そしてベストナインも発表!]

 打者走者としての各塁到達タイムの上位選手はほとんど2年生で占められていて、今大会の特徴をよく表している。ちなみに、私が考えた今センバツのベストナインが次の通りである。2年生の多さが実感できると思う。

 ◇捕手/古賀 悠斗福岡大大濠3年)
 候補→福井 章吾大阪桐蔭3年)、篠原 翔太報徳学園3年)
◇一塁手/清宮 幸太郎早稲田実3年)
 候補→山下 航汰健大高崎2年)、木本 凌雅秀岳館3年)
◇二塁手/北川 智也福井工大福井3年)
 候補→大西 翔日大三3年)
◇三塁手/安田 尚憲履正社3年)
 候補→廣部 就平秀岳館3年)、野村 大樹早稲田実2年)、13633大阪桐蔭3年)
◇遊撃手/小園 海斗報徳学園2年)
 候補→安里 樹羅健大高崎3年)、半情 冬馬秀岳館3年)
◇左翼手/成瀬 和人静岡2年)
 候補→若林 将平履正社3年)
◇中堅手/藤原 恭大大阪桐蔭2年)
 候補→鈴木 萌斗作新学院3年)
◇右翼手/西浦 颯大明徳義塾3年)
 候補→山本 ダンテ武蔵大阪桐蔭3年)
◇右投手/三浦 銀二福岡大大濠
 候補→徳山 壮磨大阪桐蔭)、金久保 優斗東海大市原望洋
◇左投手/櫻井 周斗日大三
 候補→丸山 和郁前橋育英)、川端 健斗秀岳館

(文=小関 順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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