試合レポート

昭和薬大附vs具志川

2017.06.19

両軍死闘のシーソーゲーム。夏特有の”重み”が好試合を生んだ

「夏の大会だけは、普通と違う。暑さもあるがそれだけではない”重み”がある」とはある監督さんから頂いた言葉。それがこの試合でも多く見られた。

 先制したのは昭和薬大附。1回、二死一塁から4番上間貞俊がセンターを襲うタイムリー二塁打を放った。追う具志川は3回、二死一塁から盗塁を成功させると4番仲松大路が三遊間を破るタイムリーで同点に追いつく。昭和薬大附は4回、下位打線で一、二塁とチャンスを作ると2番新川にタイムリーが出る。その後相手のエラーでもう1点を追加すると6回には3番國吉と仲松の連続タイムリーで3点を加え6対1と突き放した。

 劣勢の具志川だったが相手のエラーをきっかけに息を吹き返す。7回、一死からエラーで出塁すると稲福大伸がレフト前ヒットで続く。ここで3番久野辰吏が右中間を深々と破る2点タイムリー三塁打。仲松も負けじとライト前へ運び久野を迎え入れた。

 さらに具志川は8回、一死二塁として春の県大会でホームランを放っている1番山内隆雅にライトを襲うタイムリー二塁打が生まれる。久野にも二打席連続となるタイムリーが飛び出すと相手のエラーでもう1点を追加。5点のビハインドを僅か2イニングでひっくり返したベンチとスタンドは歓喜に包まれた。9回にも山内隆のタイムリー三塁打で1点を加えこれで勝負あったかと思われたが、夏の大会だけは最後まで分からない。

 追い込まれた昭和薬大附だったが9回裏、一死二塁として6番太田がタイムリー二塁打。二死となったが9番潮平にセンター前タイムリーが飛び出し土壇場で同点に追い付いたのだ。10回、11回と両軍ともにゼロが刻まれるが12回、昭和薬大附にとっては悔やまれるワンプレーが試合の流れを変えてしまった。

 12回、具志川山内隆が3打席連続となる長打を放つと稲福も続く。一死二、三塁で4番仲松を迎えた昭和薬大附バッテリーは敬遠を選択。スリーボールとなった次の4球目だった。ピッチャーの手からボールが離れる前に、キャッチャーが大きく三塁側へ移動して捕球。

「さ、満塁策。近いところでアウトを取るかもしくは併殺…」と考えた矢先だったろう。しかし、球審が試合を止めボークを宣告。三塁走者が生還した。夏特有の緊張感が、気を焦らせてしまったのかも知れないが、それを取り返すことはかなわない。逆にこれで流れを一気に引き寄せた具志川榮野川真己人目取真聖也にもタイムリーが出るなど一挙5点を奪った。

 投げては途中から登板した仲本迅が、延長以降ヒット僅か1本のみに抑える力投。
「(5点離され苦しかった中)みんなが諦めなかったのが、最後もあのような運を引き寄せたのでしょう」と宮里淳監督。夏が織り成すシーソーゲームで疲れ切った中にも、勝てたことの喜びと安堵感が具志川ナインを包んだ3時間43分の熱闘だった。

(取材・写真=當山 雅通

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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