筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)「正しいスイングこそ理想の打撃の近道だ」【前編】
日本球界を代表する筒香嘉智。昨年は25歳ながら、セ・リーグ二冠王に輝き、今年は第4回WBCに出場し、打率.320、3本塁打、8打点の好成績を収めた。そんな筒香の打撃について技術的な側面から迫った。
最も大切なことは正しいスイングでバットを振り抜くこと
筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)
バッティングは始動からボールを捉えるインパクトまでの間に技術を要するさまざまなポイントがある。上半身ならバットを構える位置、バットの上下動の有無、あるいはバットの引きの大きさや振り出すときの位置と角度、下半身なら始動のときの足を動かすタイミング(右打者は左足)やどのタイミングでステップするのか、あるいはステップはゆっくり出すのか速く出すのか、インステップかアウトステップか……等々、そして総合的にはボールを捉えるポジションが投手寄りか捕手寄りか、というのも重要ポイントだ。
こういうさまざまな動きを簡単に表現すれば、「反動を抑えた小さな動きで強くボールを捉える」ということになる。私が考える理想のバッティングに最も近いのが筒香嘉智(横浜DeNA)である。プロに入って急に理想的なバッティングをするようになったわけではない。横浜高校時代からバッティングの完成度は極めて高かった。
3年生になる直前、雑誌の取材で話を聞いたとき、反動を使わないバッティングはいつからしているのか聞くと、「昔から反動をつける打ち方はしていないです」と言う。さらに、「昔」とはいつのことか聞くと、「中学生になって本格的に野手になってからですね」と答えた。
上半身のパワーだけで打つ力自慢なら「嘘つけ」と思ったかもしれないが、それより3カ月前の08年夏の甲子園大会で筒香はパワーだけでなく緩急対応型のバッティングで大会通算3本塁打、14打点、打率.526と打ちまくり、準々決勝の聖光学院戦では今もって大会記録として残る1試合8打点を記録しているのである。正直、意識の高さに驚かされた。
コンパクトなスイングでも強い打球を飛ばせる理由
筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)
09年のドラフトで横浜(現DeNA)の単独1位指名を受けてプロ入り、昨年は7年目にして44本塁打、111打点を挙げ初タイトルに輝き、ベストナインにも2年連続で選出され、準決勝進出のWBC(ワールドベースボールクラシック)では侍ジャパンの4番としてスタメンで起用され、本塁打3、打点8、打率.364というみごとな成績を残している。
この国際大会の話から聞こうと、「WBCの使用球は日本のボールと比べると大きくて、遠くに飛ばすのは大変だと思うんですけど、それは想定してキャンプからやられていたわけですよね」と聞くと、「想定というよりは、僕は国際大会どうこうよりベイスターズでも反対方向に打つのをきっちりやってきたので、それで国際大会では苦にならなかったというのはあります」といきなり本題に入ってきた。
私が一番聞きたかったのは、反動を抑えたコンパクトな打ち方でどうしたら強い打球を飛ばせるか、ということ。それに対しては次のようなやりとりになった。
筒香 嘉智選手(以下、筒香):それはもう自分でやり込むだけじゃないですか。
――振り込むということ?
筒香:はい。そういう正しい練習をすることです。
――正しいスイングで理想とするスイングでバットを振ると?
筒香:そうですね。僕の感覚で言うと、正しいスイングを繰り返すことが大事ですね。悪いスイングをするとそれがずっと残るので、正しいスイングをやり続けるということが大事ですね。
後編ではその正しいスイング、バッティングに迫っていきます。
(インタビュー/文・小関 順二)