Interview

丸山和郁(前橋育英)「日本の韋駄天、勝負の一手を決める」

2017.09.05

 9月4日、第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ4日目。日本はオランダと対戦。試合は5回終わって、0対1と1点ビハインドの試合展開。そこで足を絡め逆転に成功。逆転のきっかけを作ったのは、8番の丸山和郁前橋育英)である。安打で出塁した丸山は鮮やかな二盗を決め、同点のホームを踏み、そして8回表には3点目のホームを踏み、足で勝利に貢献した。甲子園では大会タイ記録となる1大会8盗塁。今年の高校生を代表する韋駄天だが、自分が身に付けた盗塁の感覚はオリジナリティ溢れるものだった。

衝撃の告白!8盗塁のうち、ほとんどがスタートが遅れたものだった

丸山和郁(前橋育英)「日本の韋駄天、勝負の一手を決める」 | 高校野球ドットコム

丸山和郁(前橋育英)

 0対0の投手戦。あるいは0対1の1点ビハインド。相手はかなりの好投手。そんな緊迫とした場面で状況を切り開くには、

・一発長打
・足を絡める

この2つの方法しかない。オランダ戦はまさにそんな展開だった。日本はオランダの先発のD.ブレークの投球に苦しめられ、5回までわずか1安打。6回表、先頭打者として打席に立ったのが丸山和郁だ。丸山は先頭打者として出塁する。1球目、サインは待て。そして2球目で盗塁のサイン出て、仕掛けた。なんとリードを取ってから2秒94という驚愕のタイムで二塁へ陥れた。ただ本人は
「スタートが遅れてしまいました」と首を傾げたが、これが同点のきっかけとなり、丸山はその後、バッテリーミスで同点のホームを踏んだ。日本にとって崩すチャンスはこの回しかなかった。その場面で盗塁を決める丸山の勝負強さに恐れいる。

 夏の甲子園では8盗塁。いかにして盗塁技術を磨いてきたのか。すると驚きの答えが帰ってきた。
「スタートが大事だと思うんですけど、自分、実は盗塁のスタートが苦手なんです。本当はスタートがもっと上手くなりたいですけどね。あと甲子園の8盗塁中、スタート良く切れたのは1個しかありません」

[page_break:丸山が大事にする加速のポイント]

丸山が大事にする加速のポイント

丸山和郁(前橋育英)「日本の韋駄天、勝負の一手を決める」 | 高校野球ドットコム

丸山和郁(前橋育英)

 つまり自慢のスピードだけで盗塁をもぎとったのだ。それはこの試合の盗塁タイムである2秒92という数字にも表れている。本人が盗塁で意識しているのは、「加速」。走ってから三歩目でトップスピードに乗れるという。これは教わったものではなく、自然と備わった感覚だ。
「いつ頃からは分かりませんけど、昔から三歩目に入った時から体が軽い感じがして、風の音が聞こえるんです。練習をしたわけではないんですよね。あと、自分は中学野球が終わったら、陸上部に在籍していたんです。自分は短距離をやっていて、そこで走り方を覚えたかもしれません」
高崎市立倉渕中は、左投げでありながら、投手、捕手、遊撃手を務めた経験があるが、陸上部でもスピードを養っていたのだ。

 そして8回表、センターへふらふらと上がった当たりで一気に二塁へ。これは前橋育英で学んだ「先の塁を狙う」走塁姿勢をここで魅せた。一死一、二塁となって、1番藤原 恭大大阪桐蔭)の左前安打。本塁に進むか迷い、一瞬止まりかけたが、丸山は三塁コーチャーの米澤貴光(関東一監督)コーチが手をぐるぐる回している姿を見て、本塁へ突入。きわどいタイミングになりながらも、捕手のミットをかいくぐり、貴重な3点目のホームを踏んだ。

 なかなか打って点が取れない試合展開の中、日本が投じた勝負の一手。それは最高の形となった。足でもぎ取った2点。この2点は日本の勝利をもたらした。

 丸山自身、こういう展開となれば、自分の足が求められるのは分かっていた。今日は走って得点を取る成功体験を得た。今後も期待がかかるだろう。丸山は次へ向けてやるべきことをこう話した。

「次も走れたら、今日みたいな仕事をしたいです。見えなくて、相手にプレッシャーを与えられる仕事をしたい」

 いずれはリードしただけでプレッシャーを与えられる選手となるだろう。日本の韋駄天の本領発揮はこれからだ。

(取材/文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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