鹿児島実vs薩南工
抑えるイメージはできていたが…・薩南工
マウンドに集まる薩南工ナイン
鹿児島実はエース吉村陸矩(2年)が薩南工打線から18三振を奪い、本塁を踏ませなかった。
延長11回表、二死一、三塁と初めて三塁に走者を置いて迎えた場面も18個目の三振で切り抜けると、その裏二死一、二塁のチャンスに途中出場の9番・長谷龍太郎(2年)がレフト前タイムリーを放ち、2時間41分の死闘に決着をつけ、吉村の好投に報いた。
薩南工・夏越勝三監督は「組み合わせが決まった時点で、準々決勝で鹿児島実と当たったら水野の先発を決めていた」という。スタメンに左打者が常時6、7人並ぶ鹿児島実に対しては左スリークオーターの変則投手・水野将孝(2年)をぶつけた「秘策」が的中した。
「自分らしいトリッキーな投球ができた」と水野。左打者にとっては背中からボールがくるような威圧感があり、内角のボールはシュートして切れ込んでくる。外角のボールは外に逃げていき、右打者にとっては膝元に食い込んでくる。
「コーナーを丁寧に突いて、変化球をうまく使って緩急で勝負する」投球が鹿児島実打線を翻ろうした。
鹿児島実に対する夏越監督の秘策はもう1つあった。6回裏一死二塁で、6番・西村僚祐(2年)、7番・吉村と右打者が続くところで、右腕のエース柳元義貴主将(2年)をリリーフに送る。2人を抑えきったところで、再び水野がマウンドへ。6回以降、毎回走者を背負ったところで右打者を迎えると、柳元にリリーフを繰り返した。
延長11回まで、計8回マウンドと外野を行き来した2人は「集中を切らないようにすること」だけを心掛けて鹿児島実打線を抑えていた。
水野、柳元の力量から、強打の鹿児島実打線といえども「抑えるイメージはできていた」と夏越監督。これまでも何度か鹿児島実と対戦し、その度にコールドに近い点差で敗れていたが「今回が一番勝つ可能性はあった」。実際その通りに試合を進めることはできたが、肝心の得点を奪えなかった。鹿児島実のエース吉村に対して18奪三振。外角のスライダーに全く手が出なかった。11回表、二死から連打で一、三塁と、初めて三塁に走者を進めたが三振に打ち取られた。
「奇策」が的中して互角に渡り合うことはできたが「どんなに頑張っても負けは負け。春、夏はこの策は通用しない」と夏越監督。柳元主将は「このクラスの投手を打てる打力を身に着けること」をこの冬の課題に挙げていた。
(文=政 純一郎)
注目記事
・2017年秋季大会 特設ページ