これも必要な過程!平安のスター候補生・奥村真大(龍谷大平安)が味わった苦い経験
5年ぶりの近畿大会優勝の龍谷大平安で気になる存在になってきたのが奥村真大。東京ヤクルトの奥村 展征の弟である。まずは奥村の弟として注目されてきた真大だが、この1年でしっかりと奥村真大として注目される選手になってきた。ゆったりと左足を上げて、内回りのスイング軌道で高めのボールをかっさらいながら、長打にする打撃は脱力感を感じさせ、近畿大会ではサヨナラ打・本塁打を打つなどここぞという場面の勝負強さも兄譲り。面構えの良さからスター性を感じるようになってきた。自信をもって兄がプレーする神宮球場に乗り込んだが、厳しい現実が待っていた。
いつもと違った精神状態
奥村真大(龍谷大平安)
いつもとは違った。
奥村 真大は唇をかみしめてこの試合を振り返ったが、何が違うのだろうか。
「緊張しなかったんです。今日はいつも違ってリラックスした心境で入ることができて。でもそれがエラーにつながったのかもしれません」
近畿大会準々決勝のサヨナラ打、準決勝の本塁打、決勝の堅い守備。とても1年生は思えない落ち着きがあり、勝負強さを感じるパフォーマンスを見せてくれたが、それは程よい緊張感がもたらしたものだった。
「負けられない試合で、そういう緊張感があったからできたと思います」
決勝から4日後での初戦。初の神宮舞台。しかしリラックスした気持ちも、1回裏のミスで消え去った。
「1回裏のミスで、すぐに頭が真っ白になってしまいました」
いつもの精神状態ではない。これでは西原健太(札幌大谷)に勝負できない。今回の指示は「低めのボールに手を出さず、高めに浮いたボールを逃さず打ち返すこと」。だが、奥村はそれができなかった。
「近畿までは浮いたボールが多かったですし打ち返すことができた。低めに手を出してしまい自分の打撃ができなかった。神宮ではそう簡単にそんなボールが来ないことはわかっていたんですけど、実践ができませんでした」と無安打に終わり、最後はバントミス。奥村らしさを見せることができなかった。奥村は「今日は本当に先輩たちに申し訳ないと思っています」と肩を落とした。だが、神宮大会を経験したからこそ分かったことがある。どんな場所でも自分の力を発揮しやすい精神状態で臨むこと。
これまでのパフォーマンスを見れば奥村は期待の逸材だ。内回りのスイングから、うまくボールを巻き込んで、左中間方向へ打ち返すバッティングはとても1年生とは思えない。ここぞという場面で力を発揮する勝負強さは平安ファンのみならず近畿の高校野球ファンも認めていることである。
「この冬はもう一度、自分の課題克服へ向けて取り組んでいきたい」
と語る奥村。
今回の辛い経験は奥村真大の成長にとっては必要な過程だったと。そう信じたい。
取材=河嶋宗一