全力を尽くし西東京で一番いいチームを目指す! 昭和第一学園(東京都)【後編】
今秋の東京都大会は国士舘が10年ぶりの優勝を果たした。その国士舘が、決勝戦と東海大菅生戦と共に苦戦したのが二回戦の昭和第一学園だった。高校野球としてはまだあまり知られていない存在かもしれないが、近年着実に力をつけてきており、強豪校にとっても油断ならない存在となっている。
前編では、限られた環境の中で工夫を凝らし活動していく様子をお伝えした。後編ではチーム力強化に奮闘する捕手の存在や、西東京で一番良いチームを目指すための取り組みに迫っていく。
ハングリー精神でさらなるチーム強化目指す 昭和第一学園(東京)【前編】
捕手としてチーム力強化に奮闘する
グラウンドでの監督・土屋詩温
投手陣をリードしていくのが、「グラウンドでの監督」という意識を持っている捕手の土屋詩温君だ。特に、「投手から信頼されるように、言葉の交換はたくさんするようにしていきたい」という意識は高い。だから、日々の練習でも、投手陣とのコンタクトは全員と行っていくように心がけている。それだけに、チームとしての課題も「みんな一生懸命に練習をしているのだけれども、自分も含めて小さいところでの気配りが出来ていないことが多い」と感じている。だから、それを少しずつでもなくしていくことが、来春にはさらに上へ行くことが出来るようになるのだと信じている。
野手陣は、責任教師でもある中島勇気部長と高橋悠介コーチがグラウンドの使用可能状況を見ながらメニューを考えていく。休日などは、グラウンドへ来て見て、併用しているサッカー部や陸上競技部、ラグビー部など他部の練習状況が分かるということもあるからだ。メニューとしては、勢い個人練習が多くなっていく。
打撃面ではマシンを使ってのバント練習や、約3キロの鉄パイプでのタイヤ叩き、横の変化球対策として背中の方向から投げ入れるティー打撃などに加えて、スイングはタオルを巻きつけてタオルのなびき方でスイングを確認していく練習も行っている。これは30本を8セット行う。また、別の班はその間にウエイトトレーニングで体幹や下半身を鍛えるなど、そつなくローテーションさせていっている。
そして、全体練習としては走者をつけての一本バッティングをメインとして行っている。これは野手が投手として投げるということもあるが、打撃練習というよりも、走塁練習や、それに対処する野手のランダウンプレーや中継プレー、判断力の練習としての要素の方が大きいともいえる。そして、疑問点や問題点があれば、その都度高橋コーチや中島部長がアドバイスをしていく。田中監督は、そんな様子をさまざまな角度から見ているというスタイルである。
[page_break:チーム一丸となって悲願の甲子園へ]西東京で一番良いチームへ”全力を尽くす”
副主将・野川琉希也
総勢51人(2年=22人、マネージャー1人。1年=24人、マネージャー4人)のチームをまとめていく主将の石井真之君は、「今は、投手を中心とした守りのチームだけれども、この冬を越えてもっと点数を取って、打って勝てるチームとしていきたい」という思いが強い。
そのためにも「身長-体重=95」という数字を一つの目標として、チームとして体重増加とパワーアップに取り組んでいる。強豪校と多く対戦出来たことで、改めて自分たちの非力さも実感したという。パワーアップしていくことで、打球そのものが強くなっていくというのは当然のことである。それを、「打球の質を上げていきたい」という言葉で表現してくれた。
石井君を補佐する立場でもある副主将の野川琉希也君は、チーム随一のパワーヒッターでもあるのだが、ブロック予選では4番を任されながらももう一つ結果を出し切れず、本大会では外れたことを個人の最大の反省点としている。そのためには、田中監督とマンツーマンで素振りの音だけに集中して取り組んでいる。「自分のポイントで『ブン』という短く強い音が聞こえるまで集中して振っている」と言う。
また、チームとしては、「‟全力を尽くす”という言葉にこだわっています。ミーティングでも、何度も宿題として出して考えています」と「西東京で一番いいチームを作っていくためには、どうしたらいいのか」ということを掲げて、選手たち同士で話し合い、指摘し敢えて行く姿勢も大事にしている。
就任して4年を経て、田中監督は、「一つずつ、階段を上って成果も出ている実感もある」と言う。「強豪校に対しても、意識では負けなくなってきているようにはなってきている」が、甲子園常連校といわれる強豪校を下して、さらに上のステージを進むためには、「やはり、パワーアップが必要。スタート時点で(体力、技術面で)劣っているのはわかっているのだが、それだけに限られた環境ではあるが、心技体のレベルを上げていく伸びしろは多い」と感じている。そして、それを伸ばしてあげるのが自分の役割だと言う。社会人野球とは違って、まだ成長途上の高校生である。それだけに、吸収力も高く、遣り甲斐も感じているようだ。来春以降の、さらなる飛躍が期待されるチームとなりそうだ。
(文・写真=手束 仁)