緻密さと豪快さを求めて!ニュー岩倉で春に挑む!(東京)【後編】
前編では秋ベスト8の岩倉が着手した意識改革で手に入れた「爆発力」。その武器を使って勝ち進んだ八王子戦までを振り返ってもらった。後編では準々決勝の東海大菅生戦で見えた課題。そしてその課題への取り組み方と春への意気込みを伺った。
爆発力で勝ち取ったベスト8!チームの意識を変えて挑んだ岩倉(東京)【前編】
東海大菅生戦で見つけた新たな課題
坂本一樹(左)と宮里優吾(右)
昨秋都大会で8強まで勝ち上がる最大の要因となったのは、6試合をわずか9失点に抑えた投手陣だ。なかでもエース・宮里優吾の存在感はずば抜けていた。
「宮里は制球力があってリズムを壊すことなく投げられるピッチャー。良いところから落ちるようになっていたフォークが秋季大会でも冴えていました」(豊田浩之監督)。
その宮里と共に、東京都高野連の選抜チーム代表としてキューバ遠征に参加した坂本 一樹(2年)も好投した。「坂本は脇腹を痛めていて故障明けだったのと、あまりにも宮里が良すぎたので、もっと投げさせたかったというのが正直なところです。11月のセレクションでは東京都の選抜チームに選ばれるなど、この2ヶ月ほどで急にスポットライトを浴びているところなのですが、質の良いボールが投げられる投手なので、これからしっかりと実力を根付かせていきたいです」(豊田監督)。
選手に声をかける豊田浩之監督
こうして迎えた準々決勝では東海大菅生と対戦。好投手・中村 晃太朗(2年)に対し、「得点が入りやすい[stadium]神宮第二球場[/stadium]での試合だったので、点を取らなければ勝てないゲーム。立ち上がりでラッキーパンチが出れば……」と考えていた豊田監督の思惑通り、初回に内野安打で出た走者を置いて打席に立ったのは主砲の荻野魁也。しかし、ライトポール上の際どい位置へ飛んだ大飛球はファウルで得点ならず。
それでも6回裏にムードメーカーの永田 拳聖(2年)が四球で出塁。バントをせずにヒッティングに出た宮里は一塁ゴロに倒れたものの、その間に永田が得点圏へ進むと岡根秀がタイムリーを放って先制点を挙げた。ただ、なおもランナー二塁のチャンスは生かせず、1点のみに抑えられると直後の7回表に追いつかれ、8回表には勝ち越しを許してしまい1対3で敗れた。
「あの展開で勝つとしたら1対0しかなかった」と悔やむ豊田監督は、さらに「すべての力が足りませんでしたが、中継プレーで間に合わないホームへ送球する間に進塁されてしまうなど、東海大菅生の選手と比べると判断力が大きく欠けていると感じました」と振り返った。
[page_break:緻密さと豪快さを兼ねそろえた新しい岩倉の誕生へ]緻密さと豪快さを兼ねそろえた新しい岩倉の誕生へ
声とジェスチャーでアウトカウントを確認する選手たち
そこで、現在は走者を付け、ノッカーがどこに打つか分からないシートノックで実戦に近い守備練習を行い、判断力を高めている岩倉。また、この冬については「シートバッティングや紅白戦などで実際の試合に近い練習で選手に頭を使わせたい」と豊田監督は目論んでおり、「これまではベンチのサインを確実に実行すれば良かったのですが、これからは選手がその場で最善を探し、ベストにはならなくてもベターなプレーを選択していく。新チームが結成してから期待していたことでしたが、やはり2ヶ月では機能しなかったので、各選手が自分の意志を持ってグラウンドで戦うことをテーマにしていきたい」と課題を挙げた。
また、投手陣については「基本に対して妥協せず、ストレートでも変化球でもいいのでストライクゾーンで勝負できるボールを身に付けてもらいたい」と要望。打線については「来春には1試合で6点以上取れるようになってもらいたいので、そのためには得点するための確率を上げていかなければいけないと考えています。だから、この秋は『振っていけ』だけでしたが、春以降はバントや打球の方向を意識する必要も出てくるはず。ですから攻撃面でも『判断力』を磨きつつ、『強く、遠くへ飛ばす』という意識も継続して取り組んでいきたいです」
これまでのやり方と現在のやり方をミックスした攻撃を目指すことになる岩倉。来春、緻密さと豪快さを兼ね備えた「ニュー岩倉」の誕生が待ち遠しい。
(文・大平明)