富山第一vs三条
76季ぶりの北信越大会の三条、立ち上がりの失点が致命傷で敗退
富山一・濱田陸君
地元富山県と新潟県の2位校対決となった試合。富山一は、富山商と高岡商という伝統の公立商が引っ張る富山県内で近年台頭してきた私学である。大胆な胸文字のデザインは、甲子園でも注目を浴びた。
これに対して、三条は新潟県三条市の歴史のある公立普通科校。校歌は旧制一高の西寮寮歌「春爛漫の花の色」と同じ旋律を用いている伝統校だ。野球部は地元で集まった生徒たちが真面目にコツコツと練習を積み上げてチームだ。
平澤周太郎監督が積極的に関東遠征、関西遠征などを組みながら地道にチームを強化して作り上げてきた。今春の県大会2位で76季ぶりとなる北信越大会出場は、その成果が一つ形となって表れたといってもいいであろう。
しかし、試合は初回の攻防が、結果的には明暗を分けることになってしまった。
初回、富山一は先頭の浪岡君、続く本郷君が立て続けに安打して無死一三塁かと思われたら、それを後逸してたちまち富山一に先制点が入った。さらに、一死三塁で4番の村君も右前打して2点を先取した。いささか落ち着きのないまま失点してしまった三条だったが、ここで二塁盗塁を刺したことで落ち着いた。
その裏、三条も加藤君と長谷川君の1、2番が連打してすぐに反撃機を作りかかったが、送りバント失敗とけん制死で結局チャンスの芽を摘んでしまった。これが、最後まで響いたという結果になってしまった。
2回にも、富山一は一死満塁から押し出しで追加点を挙げる。こうして試合は富山一の流れで進んでいくこととなった。それでも、三条の2年生エース丸山君も、3回からはしっかりと自分の投球を取り戻してきていた。走者を出しても、粘り強く堪えていくのも丸山君の持ち味と言っていいであろう。また、小林君もそんな丸山君の特徴をしっかりと把握していたリードと言っていいであろう。
ただ、三条が富山一の濱田君の184cmの左腕からの角度のある投球を絞り切れないでチャンスをなかなか作れなかった。
富山一は6回には浪岡君のタイムリーで、8回には9番菊池君のしぶとい中前打で追加点を挙げた。それでも、試合後の黒田学監督は「残塁が多すぎましたね、全部において反省だらけです」と、試合内容そのものには不満だったようだ。
それでも、今日の濱田君に関しては、「本当は完投という予定ではなかったのだけれども、打線が点を取り切れないので完投せざるを得なくなってしまった。そういう中で、よく投げた」と評価していた。濱田君は、実は先週の富山県の招待試合で関東大会王者の東海大相模に対して好投しているという。
黒田監督は、「その時に比べたら、今日は、まだまだ内容がよくない」ということだが、それでも昨年から一生懸命努力してきているので、3ボールになっても、慌てることなくしっかりと自分の球を投げられるようになってきたことが成長だという。素材力としても高い濱田君でもあるし、夏へ向けてまだまだ進化していきそうな気配は十分だ。
そんな濱田君に対して、9回に四球と4番井上大輝君、途中から出場していた関川君の安打で1点を返して一矢を報いた三条。
平澤監督は、「別に硬くなっていたということはないと思うのですが、初回にいきなりやられてしまって、あそこで“間”を取り切れなかったこと、それは私としての反省点でもあります。こういう高いレベルでの大会では、一つひとつのプレーの大事さということを改めて感じました」と、今大会の経験を次へ生かしていかなくてはという、学習心の高い平澤監督らしい発言でもあった。
夏へ向けて、三条がさらにどこまで心技をアップしていくのか、楽しみでもある。
(文=手束 仁)