化け物クラスの投手へ 中森俊介(明石商)が求めるのは「柔軟性」。【後編】
2002年生まれの中でも世代ナンバー右腕の呼び声が高い中森俊介(明石商)。実際にその投球は素晴らしいものがある。常時140キロ中盤・最速151キロの直球、多彩な変化球の精度もレベルが高い。
だからこそ求められるものが非常に高い。中森にとって2019年はさらに高みを目指すうえで、苦しんだ1年だったといえる。そんな中、中森は進化するためにどんな答えを導きだしたのか。今回は現在の課題、そして高校野球最後の1年にかける想いを語っていただきました。
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最速151キロ、二季連続甲子園ベスト4と全国的な活躍も…。もがき苦しんだ中森俊介(明石商)の2019年【前編】
好きなタイプではない。それでも故障を防ぎ、成長させた狭間監督の指導
ピッチングをする中森俊介(明石商)
最速は150キロを超える速球、スライダー、スプリット、チェンジアップ、カーブと多彩な変化球を投げ分ける。だが、狭間監督は中森の投手としての能力の高さは評価しながらも、ある部分が引っかかっていると語る。それは柔軟性が欠けることだ。
「正直いうと、中森は投手としてはあまり好みではありません。肩甲骨の周りもそうですが、体重移動するうえで重要な足首も硬い。柔軟性を欠くということは故障のリスクが高まるからです」
また中森は体力測定をすると、数値自体は低く、体幹もそれほど強いタイプではないことは狭間監督も、中森も自覚している。それながら150キロ台の速球が投げられて、打者としてもホームラン級の打球をガンガン飛ばせるという。
狭間監督から言わせれば「不思議な投手です」と語る。そういう中森に対し、狭間監督はどう指導したのか。必要以上にバックスイングをさせないということだ。
「無理なく腕が振れる範囲があるので、バックスイングはその位置にさせています。柔軟性がないのに、必要以上にバックスイングをしてしまうと、肩が入りすぎて負担をかけてしまうので、故障のリスクが高まりやすい。
ただ投手として本能的に引きたくなってしまう。そうなると抑えが効かず、高めに浮いてしまう。打たれるパターンはそういうケースなんです」
中森もこの1年のピッチングを総括し、柔軟性がないことを深く自覚し、可動域を広げるトレーニングを欠かさず行い、風呂上りに柔軟体操を行うようになった。
インナーマッスルを鍛える中森俊介(明石商)
取材日ではキャッチボールの前に、チューブトレーニングでインナーマッスルを鍛え、そしてキャッチボールとピッチング練習を終えた後もしっかりとダウンを行った後、チューブトレーニングを行い、体幹トレーニングに向かう姿があった。
また筋肉量を増やすことにもこだわっている。現在の中森の体重は86キロ。ここから増やす予定はない。
「脂肪が多く、動ける体ではないと思っています。脂肪を落としつつ、筋肉量を固めて、キレが出てくればもっと出てくるのではないかと思っています」
狭間監督もこうしたトレーニングで良い方向に向かうことを期待している。
「今まで数値が低かったわけですから、柔軟性を高めて、投球フォームもよい方向にいって、筋力的な数値も高まっていけば、とんでもないストレートを投げるのではないかと期待をしています」
その兆しは見えている。
兵庫県選抜に選出された中森は12月7日の関西国際大戦では2回無失点の好投。最速148キロをマークした速球は大学生でさえ楽々と空振りを奪い、120キロ前後のスライダー、最速133キロを計測したスプリット、120キロ前後のチェンジアップ、100キロ台のカーブと自在に投げ分けるピッチングは別格の一言だった。
リードした兵庫県選抜の上林 直輝(神戸弘陵)は「速球、変化球も狙い通りにまず投げられてすごい。速球は伸びてきましたし、リードしていて楽しかったです」
改めて世代を代表する右腕と印象付けるピッチングだった。
[page_break:これからも追いかける立場。勝つことにこだわって、日本一を目指す]これからも追いかける立場。勝つことにこだわって、日本一を目指す
さらなる飛躍を誓った中森俊介(明石商)
2019年12月、中森と同じくドラフト候補として注目される来田涼斗を含めて連日の取材ラッシュ。改めて注目度の高さがうかがえる。近畿大会ベスト8に終わり、選抜出場はボーダーラインだが、期待は大きい。
また中森は同級生の投手からあこがれる投手となった。今年の高校生投手として注目される高橋宏斗(中京大中京)は中森のことを強烈に意識していると聞かれると、
「まだ僕は追いかける立場です。僕は高いレベルを目指したいですし、そのために奥川さんの映像を見て学ぶことは多いですし、これからもトップを追いかける立場でいきたいですし、それは普段と変わらないです」
挑戦者としてレベルアップを向かうことを誓った。
選抜出場が決まれば、日本一を目指す。それに向けての課題をこう語った。
「まずは体の面では12月、1月でしっかりとトレーニングを行い、土台作りの部分を行っていきます。ピッチング面はたくさん課題はありますが、自分の失点パターンは理解しているので、それを防ぐためのコントロールを身に付けていきたいと思います。9回通して低めに投げられるコントロールを身につけることが理想です」
そして2020年は自身の今後の野球人生がかかった1年でもある。中森は甲子園優勝だけではなく、高卒プロへの思いを口にした。
「今までは150キロを出したいとか、自分の目標にこだわっていたところがありましたが、2019年はベスト4に終わってしまい、日本一をとるために勝つことにこだわって、貢献していきたいと思います。もちろんその先にプロは考えています」
高いレベルを求めているからこそ、向かうベクトルは正しい方向に向かっている。憧れの奥川同様、ラストイヤーで恵まれた素質を完全開花させることができるか注目である。
(取材=河嶋 宗一)
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