至学館(愛知)は、こういう状況だからこそ、自分たちの持ち味が出せると前向き
至学館高校グラウンド
高校野球の現場は、全国どこも大変な状況であることは変わりない。ただ、そんな中でも、甲子園を視野に入れている強豪校は、「夏の大会は始められる。練習を再開出来たら、一気にはじけていこう」という意識を高めている。
東日本大震災のあった2011(平成23)年夏に初出場を果たし、2017(平成29)年春にも出場を果たしている至学館の麻王義之監督は、自信を持って言う。
「こういう非常事態の時にこそ、ウチのようなチームは強さを発揮できると思っています。それは、生徒たちにも言っています。もちろん、不自由だし、やり切れていないことだらけですよ。だけど、そこはどこも一緒です。こういう波乱含み対になった時には、ウチはいい結果を出しているんですから、選手たちには『夏はノーシードだし、ウチなんかは有利になってくるぞ』ということは言っています」
3月から4月の1週目あたりくらいまでは、状況を見ながら、何試合かは練習試合もこなせていたという。もちろん、当初予定していた県外校との相手との試合はキャンセルになってしまっていた。しかし、県内で動けるところとは連絡を取り合って試合もやっていたという。そうした中で、昨夏から投げている渡邉都斗君などは球速140キロ越えしてきて、愛工大名電などの有力校を抑えたということもあり自信を持ってきているという。また、188cmの長身投手疋田光琉君も、大きく成長してきて麻王監督は、「過去15年の中でも、かつてないくらいに、投手陣は充実してきている」という手ごたえを感じている。
それだけに、今の状況にもどかしさがあるということは否めない。
一応、私学の場合は今の状況に対して、学校独自でそれぞれの判断ということになっているが、もちろん至学館の場合も学校そのものは休校が続いている。一昨年に完成した志段味の専用球場も門は締まったままだから、集まっての練習は一切できない。
4月になって、練習自粛という状況になり、各自が親の車などでトレーニング室の器具などを持ち帰り、それぞれの課題に応じてのトレーニングなどを課しているという。
日々の各自の練習に関しては、「野球ノート」を活用している。今日は何をやったのか、その成果としてはどうだったのかというようなことを書いて、それを鈴木健介コーチに写メで提出するという形をとっているという。
「元々、自分たちで考えてやっていくというスタイルですから、こういう時にウチらしい個々の考える力がモノを言うんですよ」
と、麻王監督も選手たちが、この逆境の中でさらに精神的に成長していくことを期待している。そして、暗示的にも「逆境で強い至学館」ということを意識付けしており、そのことの波及的効果もあるのではないかとも感じているようだ。
新入生に関しては、入学式に一度顔合わせをしただけなので、「まだ、把握できていない」というのが正直なところだ。ただ、それでも校名入りの用具などは配布してあるということなので「至学館の野球部に入ったんだ」という意識は出来ているはずだと信じている。そんな新入生たちも加わってグラウンドで練習出来る日を心待ちにしている。
今年のチームに関して麻王監督は、
「客観的に見ても、今年の愛知県は中京大中京が抜けて強いと思いますよ。だけど、その強い中京にもしかして勝てるとしたら、ウチくらいかなとも思っています」
そう言い切るくらいに自信を持っている。
「6月になって、きちんとやれるようになったら、思い切りはじけさせてあげたい。だけど、その時にはケガだけは気をつけないといけませんから、そのことはしっかりと手綱も引いておかないといかん」
そういうことも言い聞かせながら、来るべき時を待っている。
記事:手束 仁
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