Interview

下町の143キロ右腕・床枝魁斗(修徳)。早実戦で出た脆さを冬に克服できるか

2020.12.23

 東海大菅生が優勝を飾った秋季東京都大会。今年は市川祐関東一)に本田峻也東海大菅生)、羽田慎之介八王子)や秋山正雲(二松学舎大附)など好投手が目白押しの大会となったが、彼らにも引けを取らぬポテンシャルを見せたのが修徳の床枝魁斗(2年)だ。

 179センチ・84キロのガッチリとした体格から、最速143キロの直球を投げ込む床枝。スライダーやカーブなどの変化球の精度も高く、真上から投げ下ろす角度は出色。2013年夏以降、遠ざかる甲子園へ期待を持たせる本格派右腕だ。秋季東京都大会では1回戦で早稲田実に敗れたが、春以降の飛躍に向けて床枝はどんなオフシーズンを過ごしているのだろうか。

修徳で身についた「考えて投球する」こと

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床枝魁斗(修徳)

 兄の影響で小学校入学前から野球を始めたという床枝。リトルリーグの中野リトルに入団し、投手は小学校5年頃から始めた。元々肩には自信があり、小学校6年時には全国大会で3位の実績を残すなど活躍を見せたが、中学に上がり練馬北シニアに入団すると投手としての出場機会は減り、外野手として出場することが多くなる。

 修徳の荒井高志監督によると「チームの方からは、中学野球で距離が伸びたことでフォームのバランスを崩してしまったと聞きました。もちろん体が成長期だったこともあると思います」と明かし、中学時代は決して大きな実績を残してるわけではなかった。

 だが当の床枝本人は投手が出来なかったことに関して、それほど深く考えていなかったという。
 「中学校時代までは何も考えずに野球をやっていて、投手をやっていたのもただ行けと言われたからやっていました。マウンドでも何も考えずに、良いボールを投げているのかどうかも深く考えていなくて、外野になったときも何でだろうくらいの感じで。深く考えるという考えがなかったです」

 良く言えばポジティブ、悪く言えば物事を深く考える習慣がなかった床枝。だがその欠点も、修徳入学後から少しずつ改善されていくことになる。
 中学野球では投手としての登板は少なかったが、その間に体はどんどん大きくなり、高校入学時には176センチ・79キロにまで成長していた。球速も125キロを記録するまでになり、高校野球では再度投手に挑戦することに決めた。

 入学してまず床枝が取り組んだのが肉体の強化だった。
 「6月くらいまでは、ブルペンに入らずずっと体作りやトレーニングという感じでした。柔軟性も重視されて、開脚前屈で頭を付けるまでにならないとブルペンに入れないよと言われて、練習についていくだけで精一杯でしたね」

 この期間の体作りは効果てきめんだった。6月にようやくブルペン入りが解禁されるといきなり137キロを記録。また山本将太郎コーチ指導の下、牽制やバント処理といった投球以外のスキルも基礎から身に付けていき、また「打者を見ながら投げる」ことも教わった。
 これまでは何も考えずただボールを投げるだけだったが、打者の反応やランナーの反応を見ること、一球一球に意図を持ってボールを投げることを学び、弱点であった「考えること」を習慣にしていった。

 「ただ投げるだけの投球だったのが、いかにして相手を抑えるか考えるようになったと思います。まだまだの部分も多くありますが、ブルペンの時から打者を観察したり、バッターやランナーの動きを観察しながら投げるようになったと思います」

[page_break:味方のミスにも崩れない勝てる投手に]

味方のミスにも崩れない勝てる投手に

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床枝魁斗(修徳)

 その後、体作りも順調に進み2年生の夏には143キロを記録。変化球や投球術も少しずつ身に付けていき、新チーム最初の大会である秋季東京都大会を床枝は自信を持って迎えた。
 だが1回戦の早稲田実戦、床枝は大きな課題を突きつけられることになる。

 修徳は3回に守備のミスから先制点を献上すると、その後3連打を浴びて5失点。7回にも再び集中打を浴びた床枝は、早稲田実の流れを食い止めることが出来ずに最終的にサヨナラコールド負けで1回戦敗退となった。

 早稲田実戦を経て、床枝はまだまだ投手としての「強さ」が無いことを痛感した。
 「守備にミスが出たときに、そのミスをカバーできずに相手に流れを持っていかれてしまうところがあります。自分のピッチングで逆に流れを持ってきて、相手をねじ伏せられる投手とならないといけないと感じています。この冬は体力面、技術的、精神的、すべてで成長しないといけないと思っています」

 また荒井監督は、試合だけで無く練習からチームを引っ張ることを求めている。これまでは練習の中でも甘さがあったが、最近ではチームの中心である自覚も出てきた。実は床枝は打線でも4番に座っており、投打の柱として、そして精神的な支柱としての活躍が今後は期待される。

 「実は床枝は嫌いなことをこれまで避けてきた経歴があって、ランニングなど苦手なことから逃げてきました。でも苦手なことに取り組む重要性もようやく理解して、今は変わろうとしている途中だと思うので期待しています。また床枝は自分の課題も理解している賢い選手ですが、チームを自分の背中で引っ張ることまでは出来ていません。やろうとしていることは伝わりますが、まだまだ出来ていないところがあるので彼にはそこまで求めています」

 修徳が掲げる目標は全国制覇、そしてその目標に達するために床枝が掲げる目標は勝てる投手になり、全国トップクラスの投手になることだ。目標に近づくために、床枝は強い思いを持ってオフシーズンのトレーニングに打ち込んでいる。

 「全国レベルのピッチャーを見ると、みんな150キロを越えるボールを投げてきます。レベルは高いですが、そこは負けないように高い意識を持って練習していきたいと思います。ただスピードが出れば良いという話ではなくて、甲子園に行くためには勝てるピッチャーにならないといけないと思います。この冬はそこを求めていきたいと思います」

 7年ぶりの甲子園の舞台は、床枝の成長に懸かっていると言ってもいい。勝負の冬にどこまで成長することができるか注目だ。

(記事=栗崎祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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