明大中野八王子vs国士舘
明大中野八王子 国士舘にコールド勝ちの裏側
歓喜の明大中野八王子ナイン
4月3日、春季都大会開幕。一番のハイライトといえば、明大中野八王子が18年から2年連続で都大会を制していた国士舘を8回コールド勝ちした一戦だろう。明大中野八王子視点と国士舘視点でお伝えしていきたい。
明大中野八王子の1番から5番が2019年秋の準々決勝・国士舘戦に先発をしている。
特に4番・築地 星流は当時1番ファーストでスタメン出場し、最後の打者となり、6対7で敗れていた。それだけに誰よりも悔しさを味わっていた。
都大会で国士舘との対戦が決まり、絶対に倒すつもりで試合に臨んでいた。
椙原監督は「国士舘を率いる永田監督は私が現役の時から有名な方で、長く東京都の先陣を切るチームを作り上げた方です。目標とすべきチームを勝利していこうと、常々話していました」
昨秋は投手力が高い日大豊山に敗れたことで打撃強化に着手。そしてベンチワークにもこだわった。ベンチ入りしている選手も大きく盛り上げ、選手たちに勢いをもたらす。
その姿勢がこの試合で大きく発揮する。1回裏に1点先制を許したが、2回表、4番築地が高めの直球を振りぬき、左中間を破る三塁打でチャンスを作り、三部 大智の適時打ですぐに同点。さらに8番松本 澪音の三塁打、さらにバッテリーミスで3対1と逆転に成功。3回表には5番三部の犠飛で1点を追加し、4対1に。
試合を決定づけたのは5回表だった。2番福本 真士、3番黒島 拓実の連打で無死二、三塁のチャンスを作ると、4番築地が低めのチェンジアップを振りぬき、場外へ消える特大3ランで7対1となった。
築地は右方向を狙った結果が功を奏した。
「この場面は次へつなぐつもりで、右方向を意識していました。結果的に中に入ったチェンジアップをしっかりと呼び込んだのでとらえることができたと思いますが、ただ本塁打はたまたまです(笑)」
とらえただけだと思った打球が本塁打にできるのも肉体改造のおかげだ。パンフレットでは173センチ71キロの登録だが、実際は173センチ83キロと一回り体型が違う。筋トレ、食事の量を増やしただけではなく、ややタブー的かもしれないが、ケーキを食べて体重を増やしたようだ。もちろん今ではそういったものを控えながら、体を絞る最中のようだ。
ただ6点リードでも椙原監督にとっては内心落ち着かなかった。以前の国士舘戦では3点先制しながらすぐに追いつかれ、8回に追い上げられたらすぐに1点を入れられ、最終回粘り及ばずという試合展開で、国士舘の怖さを実感していた。
最終スコア
監督の心配を杞憂としたのが、エースの井上仁だった。182センチ81キロと恵まれた体格。投球フォームに特徴があり、右腕のグラブを折りたたむようにして突き上げながら、テークバックも折りたたむような動きからトップに入り、リリースに入るという独特な動きからオーバースロー。ボールの威力はなかなかのもので、常時130キロ中盤(最速135キロ)の直球はミットに突き刺すような勢いがあり、110キロ中盤のスライダーが低めに集まり、国士舘打線を翻弄した。国士舘打線はバットが遠回りする打者が多く、井上の投球が存分に生きたといえる。
そして8回表にも1番須江 陽海の適時打で8対1と点差を広げ、その裏、井上が国士舘打線を抑え、コールド勝ちで2回戦進出を決めた。
椙原監督は「この試合を勝たせてくれたのは卒業した3年生だと思います。
その悔しさを忘れずに臨んでくれた。またベンチの選手たちも非常に活気がありました」とスタメンの選手たちだけではなく、ベンチでチームを盛り上げてくれた選手たちも労っていた。また主砲の築地は「ベンチで盛り上げてくれた選手たちは心強いですし、またサポートしてくれる2,3年生たちのためにも打ててよかったです」
明大中野八王子の野球はいわゆる全員野球だろう。前向きなメンタリティが国士舘撃破の1つの要因だが、築地をはじめ、スタメン全員の技術力の高さも見逃せない。無駄のない構えからしっかりとトップを作り、骨盤が綺麗に回転するレベルの高い打撃フォームとなっている。スイングの速さ、打球の速さは都内でも上位のものがあり、投打の総合力の高さを見ればかなり怖いチームとなりそうだ。
次の相手は日大二。この試合も激しい試合が期待できそうだ。
(記事:河嶋 宗一)