末尾2の年は何かが起こる?2022年東京の勢力図は?
秋不振の投手の復調次第で勢力図は大きく変わる
鈴木 泰成(東海大菅生)
コロナもようやく落ち着いてきたかと思っていたら、オミクロン株という新たな懸念材料が登場してきた。感染がそれほど広がらず、春の1次予選を2年ぶりに開催し、夏の大会は応援も含め、いつも通りの形で大会が開催されることを願わずにはおれない。
秋季大会を取材していると、「この子たちは、高校野球の日常の姿を知らないのですよ」といった声を、指導者からよく聞いた。いまの2年生は、入学した時からコロナの特殊状況のなかで活動を続けてきた。せめて3年生の時くらいは、普通の高校野球を経験してほしいものだ。
例年だと、春や夏の大会で活躍した2年生投手が秋の大会を引っ張ることが多い。しかしこの秋は、そうした投手の故障や不振が目立った。東海大菅生の鈴木 泰成投手(2年)、八王子の星野 翔太投手(2年)、創価の杉江 敏希投手(2年)らがその代表格だ。彼らが本来の力を発揮すれば春以降の勢力図は、大きく変わる可能性がある。
鈴木 泰成は夏前に肘に違和感を訴え、甲子園はベンチ外になり、秋も調整不足という感じであった。東海大菅生は、福原 聖矢捕手(2年)、小池 祐吏内野手(2年)ら甲子園経験者が多く残るだけに、鈴木 泰成が本来の調子を取り戻せば、当然優勝候補になる。
八王子には、身長184センチの大型投手の片山 悠真(2年)もいる。片山はこの秋も4回くらいまでは好投していたが、5回くらいから突如崩れた。片山も膝の手術明けで調整不足ということだった。八王子には佐野 シモン(2年)という大型投手もいる。これに星野が本来の投球を取り戻せば、八王子も優勝争いに加わると思う。
創価は1年の秋からエースとして活躍していた杉江が、この秋は欠場したのは痛かった。夏は日大三と互角の投手戦を繰り広げるなど、実績は十分なだけに、復帰すれば、当然期待は高まる。
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ジョンソン・マーカス太一(都立片倉)
秋は序盤もしくは、ブロック予選で敗れたチームにも、2022年の活躍を期待したいチームは多い。この秋は、都立狛江、都立城東、都立日野台、都立小山台ら、都立勢の活躍が目立った。このほかにも、都立八王子北の伊藤 智哉投手(2年)は初戦敗退ながらも、奪三振10を記録している。都立東大和の朝岡 涼太投手(2年)は、制球に難があるものの、球のキレに素材の良さを感じさせる。都立片倉のジョンソン・マーカス 太一投手(2年)も、春以降の成長をみたい選手だ。秋は9人ギリギリで戦った都立大島は、しっかりとまとまったチームだ。
秋は関東一を苦しめた東京成徳大高の須藤 竜童(2年)も楽しみな投手だ。安田学園は、エースの山田 怜央投手(2年)らが故障で投げられない中でも、二松学舎大附に善戦。戦力が整えば、20代の會田勇気監督の下、面白い存在になる。
若手監督が出てくる一方で、1977年にサブマリン投法で早稲田実業を春夏の甲子園8強に導いた弓田鋭彦が2019年に監督に就任した豊南は、2022年以降、旋風を起こす可能性がある。
また秋は1次予選で敗れたチームにも、岩倉は吉澤 大翔内野手(2年)、小山 大和外野手(2年)らの打線や、日大豊山の狩野 光晴捕手(2年)の肩など、見どころのあるチームが多い。
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2021年の秋季都大会を優勝した国学院久我山
帝京は、高橋 蒼人投手(1年)以外の投手が育つか。フルスイングが魅力の佐藤 大空外野手(2年)がいる修徳は、守りをどう修正してくるか。秋に力を出せなかったチームが多いだけに、そうした選手の復調次第で、春以降は質の高い試合が期待できる。そうした中でも、國學院久我山、二松学舎大附、関東一、日大三という秋の4強が、優勝争いの中心にいるだろう。
準決勝でまさかの5回コールドで敗れた日大三は、打線がいいだけに、矢後 和也投手(2年)以外の投手が育つかどうか。関東一は、秋は途中腰を痛めた成井 颯投手(2年)を含めた投手陣の立て直しが課題になる。
秋優勝の國學院久我山は、イチローの指導を受けたことが大きい。もともと学習能力の高い選手が多いだけに、かなりの力になるはずだ。そして、センバツでどこまでやれるかは分からないが、その経験は、夏に向けての力になるに違いない。
いまから40年前、現監督の市原 勝人投手擁する二松学舎大附は、秋季都大会準優勝ながらもセンバツに出場し、準優勝している。今回、センバツに出場できるかどうか分からないものの、いまのチームは、その時の雰囲気に似ている。そして50年前となる1972年のセンバツ決勝は、日大桜丘・日大三の東京決戦だった。そして92年のセンバツでは、帝京が優勝。それ以来、東京からセンバツの優勝チームは出ていない。2012年のセンバツでは関東一が準決勝に進出。そこから東京勢のセンバツ4強はない。
2002年のセンバツを除けば、東京勢が好成績を残している末尾2の年。2022年は当たり年だけに、健闘を期待したい。
(記事:大島 裕史)