愛知vs西尾
少ないチャンスを生かした愛知が継投でリードを守り切る
8回途中まで、好投した愛知・市川君
新年度を迎えた4月の2週目の週末。この日から春季愛知県大会が始まった。好天にも恵まれて、絶好の野球日和と言ってもいいだろう。
西三河地区予選を敗者戦から何とか最後の県大会出場枠を11位で得た西尾。1つ勝って、西三河地区1位の西尾東に挑みたいところである。一方、愛知も1次予選は中京大中京のブロックに入ってしまい完敗し、2位で2次トーナメントに進出。その戦いで天白、千種を下して県大会進出を果たしている。ともに、試合をこなしながら少しずつチーム力を高めてきていると言っていいであろう。
西尾は鈴木海渡、愛知は市川の両先発投手。共にテンポのいい立ち上がりで、リズミカルに試合は進んでいった。お互いに上手に打たせていっているという投球だった。
5回を終えて、50分足らずというスピーディーさ。そして10個の0が並んだが、放った安打は西尾が2本、愛知は4回の杉本の1本のみだった。先頭打者が出たのも、愛知のその回だけ。両投手が、しっかりと自分の投球をしていたと言えよう。
しかし、どちらが突破口を開けることができるのかと言うと、どちらも、その糸口はなかなか見つかりそうにもなかった。そんな形の、投手戦になった。また、お互いの野手陣もよく守り、西尾の江畑の三塁ライナーを飛びついて捕球する美技なども出ていた。そうした好プレーの度にベンチも盛り上がり、いい雰囲気の試合展開となっていった。
果たして、どこまでお互いの0が続いていくのかと思われた試合だったが、均衡が破れたのは6回だった。
西尾は3番榊原が安打したが後続は市川に抑えられる。そしてその裏、愛知は1死から1番檜山が死球。二盗後杉本も四球で一、二塁。鈴木も、わずかに意識してコーナーを狙いすぎたのだろうか。それでも、続く竹内は三ゴロ。しかし併殺にはならず、2死一、三塁と2人の走者が残ってしまって4番澤野となった。愛知としては、最も頼りになる打者でもある。その澤野の狙いすました一打は、左中間の深いところへ飛んで、追いかける横山左翼手のわずかに上を抜けて行って二塁打となり、2人の走者がかえった。
試合の流れからしても、かなり貴重な2点になると思われた。それでも、西尾も食い下がる。7回は先頭の6番神谷が右前打して二塁まで進んだが得点ならず。しかし、8回に1死から野田と榊原の投手強襲打で初めての連打。ここで、愛知の飛田陵佑監督は、「市川はよく投げてくれていたけれども、ここぞという時には、飼沼の投入は考えていた」と言うところで、迷うことなく継投となった。これに対して西尾は、5番の鈴木海渡が中前へはじき返してついに1点を奪った。こうして、試合はもつれていくかもしれないぞと思わせたが、その後は、飼沼がきっちりと抑えた。
愛知は、こうした展開で、安打数ではわずかに2本と西尾の7本よりも少なかったけれども、辛くも1点差リードをキープして逃げ切った。飛田監督は、「今年のチームは、こういう戦いで何とか勝ってきています。西尾打線がしっかり食らいついてきて、なかなか苦しかったのですけれども、少ないチャンスを生かすことができました。5回の整備の時に、考え方を『自分がやらなきゃ…』と言うところから、『自分はできるんだ…』と言うように変換していくような話をして、6回にはそれが功を奏したのかなと思います」と喜んでいた。
西尾の田川誠監督は、「結果的に、相手投手を攻略しきれませんでした。注意はしていたのですが、スライダーに手を出してしまって、それが痛かったですね。それでも、去年の秋から比べて、やっている野球は質が高くなってきていると思います。去年のチームとはカラーは異なりますが、それぞれの力は出せるチームになってきている」と、これから夏へ向けて、チーム作りとしてはいい感触を得ているようだった。
(記事:手束 仁)