専大松戸vs千葉英和
投手歴は1年半。捕手出身の専大松戸2年生右腕は、なぜ150キロを投げられるようになったのか
平野 大地(専大松戸)
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<第104回全国高校野球選手権千葉大会:専大松戸8-1千葉英和>◇19日◇4回戦◇千葉県総合スポーツセンター
専大松戸vs千葉英和の実力校同士の4回戦。
専大松戸は2回表に3点を先制。5回裏に1点を返されたが、専大松戸の先発、エース・鈴木 良麻投手(3年)は最速144キロの速球や120キロ前半の切れ味抜群のスライダーを武器に8回1失点の好投を見せた。
そして9回表、犠飛と5番吉田 慶則内野手(2年)の満塁本塁打で8対1と点差を広げる。
9回裏、2番手で登板した平野 大地投手(2年)が最速150キロをマーク。1イニングを無失点に抑え、試合終了。勝利した専大松戸は5回戦進出を決めた。
まさにニュースターの誕生だ。
平野は大会前から最速147キロをマークする本格派右腕として注目していたが、まさかここまでの投手とは想像できなかった。立ち上がりから140キロ後半の速球を連発し、1人目の北條竜太郎内野手(3年)相手に150キロをマークすると、球場内がどよめいた。北條には中前安打を打たれるが、後続の打者を抑えて、試合終了となった。
球場内での平均球速は146.47キロをマーク。手元のスピードガンでも、145.52キロと、高校2年生で、わずか1イニングとはいえ、ドラフト候補に挙がる3年生と比較しても負けていない直球だった。ちなみに変化球は投げていない。
「自分が一番自信に持っているのがストレートですので、まずそれで勝負したかった」と夏初登板のリリーフは、持ち球のカーブ、スライダー、フォークを使わず、一番の武器で勝負した。
さぞかし、中学生から並外れた直球を投げていると思っていたら、取手シニア時代は捕手としてプレーしていた。それでも、投手として強くやりたい思いは常に持っていたという。専大松戸入学のきっかけは龍ケ崎市長山中出身の原嵩投手(元ロッテ)に憧れていたことと、投手育成能力が高い環境を知って、入学を決断した。
平野 大地(専大松戸)
高校入学後、投手転向を直訴し、投手としてプレーすることとなった。持丸監督は肩の強さや、キャッチボールから素質の高さを感じ取っていたようだ。
専大松戸は経験値の有無に関わらず、まず投手は直球から磨く。上沢直之投手(日本ハム)らも、まずは伸びのある直球が光っていた投手であった。理想の投手はヤクルト・奥川恭伸投手(星稜出身)のような直球。フォーム、指にかかった高スピンのストレートに憧れ、日々の投球練習では動画を撮影してもらいながら、自分の投球フォームを固めた。さらに175センチ、60キロ前半からの体作りにも費やした。とにかく食べた結果、身長は5センチ増えて、180センチ。体重は20キロ近く増えて、84キロとグラウンドで見てもわかるぐらい、がっしりした体格となった。
これまで多くの投手の育成に携わった持丸監督も想像以上の成長だという。
「一冬越えてきてから130キロ台だったのが、140キロとなって。春の大会が終わって、144、145キロと少しずつレベルアップして、そして今日の投球です。私でも想像できないほどの成長です」
そうした成長ができたのは段階的に投手のスキルを強化したことが大きい。勝つ投手になるために必要なコントロール、変化球、細かい駆け引きではなく、まず高2年夏までは根本となる直球を伸ばすことを最優先した。持丸監督は「コントロール、変化球についてまだまだですが、ここまでは順調にステップを歩んでいます」と語る。タイプとしては上沢らの本格派右腕の比較となるが、「上沢は駆け引きよりもしっかりと指にかかったストレートを投げることを大事にしていました。それでも高校時代は抜け球は多かったので、平野はまだ完成度が高いタイプだと思います」と評価する。
上沢は今では球界でもトップクラスのテクニシャンタイプの投手になるが、高校時代は荒削りながらも伸びのある直球を優先して勝負していた。まだ、平野も細かいところに課題はあるが、経験を積んでいけば、駆け引きも覚えていくはずだ。
能力的にいえば、右でいえば、松石 信八投手(藤蔭=大分)、宮國 凌空投手(東邦=愛知)を見た時と同じぐらいの衝撃を受けた。平野はこの2人より器が大きいので、剛腕タイプへ化ける可能性があるだろう。
23年夏まで千葉を盛り上げてくれる投手となりそうだ。
(取材=河嶋 宗一)