左右非対称の体を理解する
野球のベースランニングは左回りであり、体を左に傾けやすい特徴が活きる
野球は左右非対称の動作を伴うスポーツです。何度も繰り返しているうちに、筋力や柔軟性など体力面での左右差が現れるようになるため、フィジカルトレーニングでその左右差を改善するようなエクササイズを取り入れることも少なくありません。特にケガをした場合は、ケガをした側(患側)としていない側(健側)の関節可動域(関節の動く範囲)、柔軟性、筋力などを比較して競技復帰の目安とすることがあります。
一方で私たちの体はもともと「非対称である」ということも理解しておく必要があります。体の臓器は肺や腎臓など一対になっているものもありますが、多くの臓器は一つであり左右どちらかに偏って位置しています。特に重量のある肝臓は右寄りに位置しているため、両足で立ったときやや右側に寄りがちです。また左右の回旋動作を行ってみると、右回旋に比べて左回旋の方がやりやすいという人が多いのではないでしょうか。右側には肝臓が位置するため、左に比べると回旋の妨げとなりやすいことがその一因として考えられるためです。
この内臓の配置は呼吸にも影響を及ぼします。例えば呼吸を行うためには肺をふくらませたり、縮めたりしながらガス交換を行いますが、肺は自らふくらんだり縮んだりするのではなく、肺を支えている横隔膜が上下に動くことで空気の入れ換えを可能にしています。この横隔膜も左右対称ではなく、右側には肝臓が位置するために常に押し上げられた状態、左側は心臓が位置するために上から押しつぶされた状態となり、右側のほうが呼吸しやすいという身体的特徴があります。
このように左右非対称な体を使って運動を行うと、多くの人は右側の方が安定しやすく、「得意な動き」「非得意な動き」が出てくるのは自然なことです。こうした体の特徴を理解した上で、左右非対称の動作による体力面でのバランスを考慮したり、普段あまり気にしなかった体のクセなどを見直したりして(駅のホームに立っている人の多くは右足に重心をかけている!)、自分の体を理解するようにしてみましょう。
参考書籍)
・野球選手なら知っておきたい「からだ」のこと【投球・送球編】/土橋恵秀・小山田良治・小田伸午著 大修館書店
・「呼吸力」こそが人生最強の武器である/大貫崇著 大和書房
文:西村 典子
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