宮城の公立の雄に注目 県内有数の進学校・仙台三の快進撃に期待
近年、宮城の高校野球は公立校の躍進が目立っている。中でも勢いがあるのが仙台三。21年夏は県大会で準優勝、22年は春、秋の県大会でベスト4に入り、近年の安定した成績などが評価され23年春センバツ21世紀枠推薦校にも選出された。最終候補9校に残ることはできなかったが、23年も注目の存在となることには変わりない。
仙台三は県内屈指の進学校。毎年、国公立大や難関私大への進学者を多く輩出する一方、部活動にも力を入れ「文武両道」を実践している。野球部は1963年創部で、甲子園出場こそないものの夏の県大会は10度の4強入り、うち3度は準優勝と実績十分だ。
経験豊富な2年生が名を連ねる強力打線
加藤 光志郎(仙台三)
最大の強みは打線の爆発力。22年秋の県大会は1回戦で10得点、2回戦で21得点を挙げるなど、6試合で計52得点と機能した。中でも1番・尾形 遥翔外野手(2年)、2番・本郷 泰成外野手(2年)、4番・加藤 光志郎内野手(2年)は昨秋の新チーム発足時から不動。春は3人ともに打率2割台前半だったが、夏、秋は高打率をマークし打線の軸を形成した。
1年から公式戦で活躍している尾形と加藤は、ともに硬式野球チーム「宮城北部リトルシニア」出身。尾形は広角に長短打を打てる右打者で、1年夏から1番に座っている。22年秋も仙台南との準々決勝で二塁打、三塁打を含む5安打を放つなど、リードオフマンとして打線を牽引した。左の強打者である加藤は1年秋以降4番を任され続けており、勝負強い打撃で存在感を示してきた。
本郷は左の好打者で、犠打は多用せず、積極的に打って好機を広げられるタイプの2番打者だ。尾形、本郷は俊足でもあり、様々な攻撃パターンを持つ1、2番コンビは投手にとって厄介な存在となっている。
そのほか、主将の齊藤 夢真捕手(2年)、正遊撃手の服部 恭也内野手(2年)、22年年秋3番を打った神 稜真外野手(2年)らも経験豊富な選手。齊藤は中軸を担える打撃力を持つ一方、一塁、二塁、外野、捕手を守れるユーティリティーぶりも光る。
[page_break:求められる投手陣の成長と勝ちパターンの確立/目指すは「全員で戦い、助け合うチーム」]求められる投手陣の成長と勝ちパターンの確立
尾形 遥翔(仙台三)
課題を挙げるとすれば投手陣だろう。22年春、夏はエース丸山 侑太投手、先発も中継ぎもできる椎名 伯斗投手、リリーフエースの朝倉 光優投手と、いずれも3年生の投手が強力な布陣を築き、主将も務めた藤原 楽捕手(3年)が扇の要としてチームを支えた。
3年生が抜けた22年秋は、2年生の道祖尾 秀明投手、近藤 龍毅投手、1年生の石川 恭祐投手に加え、野手がメインの尾形、加藤も先発のマウンドに上がった。まだまだ盤石とは言えず、勝ちパターンが確立されていないこともあり、準々決勝以降の3試合は順に8失点、9失点、7失点と失点がかさんだ。1年生ながらメインでマスクをかぶった熊 晃太捕手を含めたバッテリーの成長が、チーム力強化の鍵を握ることとなるだろう。
目指すは「全員で戦い、助け合うチーム」
齊藤 夢真(仙台三)
仙台三の強さが垣間見えたのは、22年秋2回戦の石巻好文館戦。この試合は初回に四球を挟む9連打で7点を奪うなど、22安打21得点と打線が大爆発した。
手放しに喜んでも良さそうな試合内容。しかし、齊藤主将は試合後の取材で3番の神が出場選手で唯一無安打だったことに触れ、「(神に対して)他のメンバーが明確なアドバイスをし、助けることができなかった」と悔しがった。強豪私立に勝ち甲子園へ行くためには、ここで立ち止まるわけにはいかない。
「全員で戦い、助け合うチームをつくりたい。自分なりの野球観を持っている選手が多いので、全員がその考えを出せるようになると、もっといいチームになる」(齊藤)。広い視野を持つ齊藤を中心に進化した仙台三が、来春どんな野球を見せてくれるか楽しみだ。
(記事:川浪 康太郎)