SNSを沸かせた逸材に、プロ注目の選手まで センバツで光った好捕手たち
山梨学院(山梨)の初優勝という形で幕を下ろした23年センバツ。エース・林 謙吾投手(3年)が全試合に先発登板した。球数制限が適用された2020年から多くの学校が複数投手制を敷いて、トーナメントを勝ち抜くことが増えたという背景があるなか、全試合先発は話題となった。
1週間500球の制限を考慮して、近年は2番手以降の投手育成にも力を注ぎ始めた。同時に、各投手の良さを引き出すために捕手がすべき役割は、これまで以上に重要度が増したといえる。
スローイングやキャッチング、ブロッキングをはじめとした技術はもちろん、細やかなコミュニケーションなど、投手に寄り添った献身的な働きかけは、投手の力を引き出すためには必要不可欠だ。
世代屈指の超強肩捕手は噂通りの活躍ぶり
報徳学園・堀 柊那
今回のセンバツは好捕手が多かった。特に大会前から注目されていた報徳学園・堀 柊那捕手(3年)は評判通りの活躍だった。
大会前から二塁送球最速1.81秒を記録する強肩が注目されていたが、その実力を発揮。準決勝・大阪桐蔭戦(大阪)で盗塁を刺したスローイングは、SNSで大きな話題となり、「#報徳学園のキャッチャー」でトレンド入りしたほどだった。
実際に試合映像を振り返っても、送球は垂れることなく伸びるような軌道で見事にアウト。この時のタイムは1.85秒前後を記録するなど、やはり超高校級の実力であることがわかる。
エース・盛田 智矢投手(3年)ら投手陣をプレーで引っ張るだけではなく、あらゆるジェスチャーで鼓舞し、チームをさらに勢いづけたのも印象深い。
バットを握っても、大会通算打率.400という数字を残し、攻守で準優勝に貢献した。世代屈指の捕手として、代表候補合宿をはじめ、夏の大会まで注目し続けたい存在だ。
県勢にとって初優勝を飾った山梨学院(山梨)の正捕手・佐仲 大輝捕手(3年)も見逃せない。堀のような強肩など目立ったプレーではないが、打者のデータや観察に基づくリードや、キャッチングなど細やかな部分が光った。
22年の夏の甲子園優勝を経験した仙台育英(宮城)・尾形 樹人捕手(3年)も、投手に合わせて構え方を変える工夫を凝らすなど、気づきにくい細かい部分への配慮もあった。
打線でも中軸を任されるなど、攻守のバランスがとれた捕手だ。夏は甲子園連覇への期待がかかる。集大成の夏、強力投手陣を引っ張る尾形の活躍もチェックしておきたい。
プロ注目の逸材に、強打の捕手も今後に期待
広陵・只石 貫太
惜しくもベスト4で姿を消した広島広陵(広島)で正捕手を務める只石 貫太捕手(2年)も奮闘した。
下級生ながら全試合にスタメン出場し、同学年の高尾 響投手(2年)、先輩・倉重 聡投手(3年)などの投手陣をリード。バッティングでは苦戦したものの、2つ盗塁を阻止するなど、捕手としての役目をしっかり果たした。
捕手歴1年の東海大菅生(東京)・北島 蒼大捕手(3年)もチームのベスト8進出に貢献。守備では大きなミスをせず、エース・日當 直喜投手(3年)を盛り立てた。
特に高速フォークが持ち味の日當にとっては、投球をしっかりと止めてくれることは、何より安心であり、思い切って腕を振り抜けるから、フォーク本来の落差も出て、空振りも奪える。しっかりと信頼を得て、活躍することも捕手にとっては重要な要素だと再認識させられた。
大会序盤で姿を消し、アピールがあまりできなかったが、4月4日からの代表候補合宿に選ばれた常葉大菊川(静岡)・鈴木 叶捕手(3年)は1.8秒台のスローイングにパンチ力のあるバッティングがあり能力は高い。プロのスカウトもチェックしている逸材として、夏の甲子園で再び見たい選手だ。
履正社(大阪)のスラッガー・坂根 葉矢斗捕手(3年)もプロ注目の強肩強打の捕手。初戦・高知(高知)との一戦では、ヒット1本に抑えられたが、本来はがっちりとした体格から鋭い打球を連発する。取材日は木製バットも苦に感じさせないスイングを見せるなど、能力は高いと感じた。
長崎海星(長崎)の田川 一心捕手(3年)も、下級生から活躍した強打の捕手であり、スローイングの正確さも光った。
今大会では高知(高知)・高木 心寧捕手(3年)が躍進した。大会で打率.300をマークし、守っては3つの盗塁を刺した。強気なリードを見せるなど、注目されていた複数投手たちを上手く引っ張った。
2023年世代は投打ともに逸材揃いで有名だ。特に投手は右、左関係なく近年でも上位に入る実力者揃い。その恩恵かはわからないが、好投手に引っ張られるように捕手のレベルが上がり、それぞれの活躍につながったとも言える。
夏の甲子園でも多くの捕手が活躍することを楽しみにしたい。