深部体温とプレクーリング
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深部体温を急激に上げないようにしよう
スポーツを行う前のウォームアップは、筋温を高めて関節や筋肉の動きを良くするために必要不可欠なものです。一方で運動によって発生する熱は安静時の10~15倍にも増えると言われており、暑い環境下での運動では深部体温が急激に上昇しないように、適切に体を冷やすことが熱中症予防につながります。体を冷やす時は
1)冷却方法
2)タイミング
3)冷却時間
を考慮して行うとよいでしょう。今回はプレクーリングという運動前に体を冷やす考え方についてご紹介します。
●プレクーリングとは?
体を冷やすタイミングを「運動前」に設定して実施する方法です。運動によって産み出される熱を想定して行われるもので、特に暑熱環境において熱中症予防の効果が期待できるとされています。運動前にあらかじめ深部体温を下げておくことで、運動によって起こる深部体温の上昇カーブをゆるやかにし、時間的な猶予が生まれることを狙ったものです。実際に体を冷やす方法としては、体を「外から冷やす」方法と、体を「内から冷やす」方法があります。
●体を「外から冷やす」方法
アイスパックや氷、冷たいおしぼりを事前に準備しておき、頭頸部や腋の下など大きな動脈が走行する部位を中心に冷やします。ハンディファンなどを合わせて使用すると、皮膚から熱が放散されて短い時間で涼しさを感じるようになるでしょう。また手のひらを10~15℃程度の冷たい水に浸したり、冷たいペットボトルをしばらく握ったりすることによっても手のひらにある血管が冷やされて、効率よく体全体を冷やすことにつながります。
●体を「内から冷やす」方法
体を内から冷やす方法は、皮膚や筋肉の温度を大きく低下させることなく体の内部を冷却することができます。水分補給がその代表的なものですが、最近は氷と飲料水が混合したアイススラリーの活用が注目されています。細かく砕いた氷と液体を混合させたシャーベット状のもので、スポーツドリンクを用いると体を冷やすだけではなく、水分や電解質、糖質補給も同時に行うことができます。自宅で準備するときは製氷機にスポーツドリンクを入れて凍らせておき、できあがった氷とスポーツドリンクを「3:1」の割合でミキサーにかけるとシャーベット状のアイススラリーを作ることができます。
暑熱環境では運動前だけではなく、運動中や運動後も適切な冷却が必要になるものですが、プレクーリングでは深部体温の急激な上昇を抑えて、多量の発汗による脱水予防などの熱中症対策をはじめ、運動の持続時間を伸ばしたり、集中力に低下を抑えたりする等パフォーマンスにも貢献します。暑い時期は練習や試合前にも体を冷やすプレクーリングをぜひ実践してみてくださいね。
参考資料)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
文:西村 典子
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