鹿児島城西vs加治木工
鹿児島城西、最後は「泥臭く」勝利
<第105回全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島城西4ー3加治木工(延長10回タイブレーク)>◇5日◇1回戦◇鴨池市民
雨による2日の順延、時折小雨の降る曇天と蒸し暑さ、大事な夏の初戦…。実力、実績に勝るシード校といえども、苦戦、もしくは番狂わせがあるかもしれない。そんな予感が半ば的中した一戦となった。
先制したのはノーシードの加治木工。先頭の9番・日高 暢泉(3年)の右方向の打球は平凡な右飛かと思われたが、降り続いた雨で重くなった外野の芝に右翼手が足をとられ、捕球できず二塁打に。野選、送りバントで1死二、三塁となり、3番・濵﨑 優斗(3年)の遊撃手後方、中堅手前方に落ちる適時打で先制した。
4番・丸野 俊太郎(3年)は初球スクイズを決め、5番・花崎 慶太郎(2年)が犠飛。きれいなヒットは1本もない中で、動揺する鹿児島城西のスキを見透かしたかのような加治木工の技ありの攻めが光り、3点を先取した。
続く4回にも先頭打者の7番・藤村 健真(2年)が初球を振り抜いて左翼線に抜ける二塁打を放ち、送りバントで1死三塁。畳みかける絶好機だったがスクイズ失敗で生かせず。ここで4点目をとれなかったことが、のちの展開に大きく影響することになる。
加治木工の右腕エース日高は球が適度に荒れながらも、要所では力強い直球で内角を突く強気の投球が冴え、鹿児島城西打線は5回まで1安打無得点。昨秋、今春と県大会では未勝利の加治木工が押し気味に試合を進めていた。
「このまま負けたままでいいのか?」
鹿児島城西の佐々木誠監督は檄を飛ばした。昨夏、昨秋、今年のNHK旗…。この1年間、ここぞというところで持っている力を発揮できないまま負けてしまった轍は繰り返さない。そんな意識でナインがまとまる。
大切なのは「みんなでつなぐ」(黒川虎大郎主将=3年)意識。6回を2番手・内田 祭人(3年)が3連続三振で切り抜けると、その裏、先頭打者の2番・濱田 陵輔(3年)が意表を突くセーフティーバントで出塁。3番・明瀬 諒介(3年)、4番・池野 航太(3年)がしぶとく打ってつなぎ、押し出しと7番・俣木 将伸(3年)の左前適時打で1点差に詰め寄った。
6回は「どんな形でも良いから、泥臭く、低い打球を打つ」ことを意識した4番・池野の左前適時打で同点に追いついた。
加治木工も7回以降は毎回得点圏に走者を進めながらも、あと1本が出ない。鹿児島城西は9回無死満塁の絶好機を作ったが、加治木工のエース日高が粘り強く後続を断ち、今大会初の延長戦にもつれた。
10回表、加治木工は1死二、三塁とするも生かせず。その裏、鹿児島城西は同じく1死二、三塁から9番・田畑 諒太郎(3年)が適時内野安打を放って決勝点。3時間にも及んだ死闘は鹿児島城西が泥臭く勝利を収めたが、V候補を最後まで苦しめた加治木工の健闘にも拍手を送りたくなる一戦だった。
取材=政 純一郎
加治木工・日髙
加治木工1点目
加治木工2点目
加治木工2点目
加治木工円陣
鹿児島城西2点目
鹿児島城西3点目
鹿児島城西円陣
鹿児島城西4点目