腕の振りと変化球【セルフコンディションニングお役立ち情報】
速球と同じ腕の振りで変化をもたらす球種は、肩肘に負担がかかりにくい
投球動作を行う中で「変化球を多投すると肘に負担がかかりやすい」と言われることがあります。成長過程にある選手は、成人と比較して骨や軟部組織などが柔らかく、強い負荷を繰り返すことで力学的に弱い部分から傷めてしまいがちですが、「変化球」と「速球(ストレート)」で肘への負担は大きく変わるものでしょうか。これについてはさまざまな研究が行われていますが、変化球の場合は手首や腕の使い方、そして体の使い方によって負荷がかかりやすいと考えるもの、速球の場合は変化球よりもスピードが上がる分、肘への負担が大きくなると考えるものなどがあります。まずは肩や肘に過度な負担をかけないような投球フォームを習得し、投球数をコントロールしながら繰り返し練習することが大切です。
変化球を投げるとき、その軌道をイメージしながら「ひねる」動作を強調しすぎると、肘への負荷が大きくなってケガをしやすくなります。腕や手首のひねりを意識せずに投げられる「チェンジアップ」という球種は、比較的肘に負担が少ない変化球として挙げられる代表的な変化球です。握り方の違いだけなので(速球が人差し指と中指を使ってをボールを握るのに対し、チェンジアップはボールを五本指で包み込むようにつかみ、中指と薬指の間隔を少しだけ広げて握る)、速球と同じように腕を振ることで回転数の少ないスローボールへと変化します。
またチェンジアップと同様にボールの握り方を変えることで速球とは違った変化をするものに「ツーシーム」という球種が挙げられます。速球が人差し指・中指・親指・薬指の4本の指を縫い目にかけた「フォーシーム」と呼ばれるのに対し、ボールの2本の縫い目に人差し指と中指を沿わせて握るのが一般的なことから「ツーシーム」と呼ばれます。速球よりも浮き上がる揚力が少ないため、打者には少し沈んでいくように見え、スイングを仕掛けてもタイミングを外されてしまうということが起こります。
ある程度筋力や柔軟性が伴い、下半身から上半身への連動がスムーズに行えるようになったら、この他の変化球についても大きな問題にはなりにくいと考えますが、ボールを数多く投げすぎること(オーバーユース:使いすぎ)は変化球であっても速球であってもケガのリスクは高まります。体全体で腕のしなりをサポートしながらケガを未然に防ぎつつ、変化球を効果的に使いながら投球のパフォーマンスアップを実現させていきましょう。
文:西村 典子
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