試合レポート

注目打者・モイセエフが流れを変えた! 豊川が終盤粘って高知にサヨナラ勝ち!<明治神宮大会>

2023.11.17


豊川3番モイセエフ6回に右二塁打

<第54回明治神宮野球大会:豊川9-8高知(延長11回タイブレーク)>◇16日◇準々決勝◇神宮

この秋、初めて東海地区大会を制した豊川。明治神宮大会は38年ぶり2度目の出場ということになるが、先回の出場は、当時まだ今のように各地区大会優勝校が出場するという方式ではなく、地区によっては各県の持ち回り制という形になっており、出場校も必ずしも秋季県大会の優勝校ではなかった。その時代の出場のため、東海地区優勝校としての出場は初めてということになる。東海地区大会では、決勝では同県の、この夏の代表校でもある強豪・愛工大名電に先制攻撃を仕掛けて、初回に6点を奪った。終盤追い上げられて苦しみながらも、何とか凌いで初優勝を飾っている。

高知(四国)は、2年ぶり5回目の出場となるが、2006年(平18)の第37回大会では優勝を果たしており、明治神宮枠を四国地区にもたらし、翌年のセンバツでは同県の室戸に出場枠を提供したという実績もある。高知は、この秋の四国大会では準決勝でライバル明徳義塾を下すなどして四国地区大会を制している。

豊川は1年生の中西 浩平投手、高知辻井 翔大投手(2年)と、ともに背番号10の右腕投手が先発した。3回までは、お互いに走者は出すものの決定打を欠き、淡々とした流れで試合は進んでいった。しかし4回、守備には定評のある豊川の守りが崩れて、内野飛球落球など3失策が重なり、高知に4点が入った。

豊川としては、点の失い方が非常によくなかったということもあって、前半は完全に高知の流れとなっていた。5回を終わって、豊川はわずか2安打で、作りかかったチャンスも併殺で潰していた。

それでも6回、1死後、振り逃げなどから一、二塁のチャンスを作ると、注目の強打者、モイセエフ ニキータ外野手(2年)が右翼線に二塁打を放って1点を返す。ここで、高知の濱口佳久監督は、辻井を左翼に下げて1番をつけた平 悠真投手(2年)を送り出した。しかし豊川の長谷川裕記監督も、「(モイセエフ)ニキータが打つと、チームは乗ってくるし、勢いがつく」と言うように、2死二、三塁となったところで、5番・北田 真心内野手(1年)が一塁手の手前で大きく跳ねる安打を放ち、2者がかえって1点差とした。

さらに豊川は7回、7番・山本 羚王外野手(2年)が内野安打で出ると、バントとけん制悪送球などで2死三塁として、1番・林 優翔外野手(1年)が右前打を放って、ついに同点となった。

試合の行方は全く分からなくなったが、高知はすぐに8回、2死走者なしから、1番・筒井 海斗内野手(2年)が左翼スタンドに放り込むソロアーチを放ってリードする。さらに9回にも先頭の4番・谷口 隼斗内野手(2年)がストレートの四球を選ぶと、豊川の4人目、本田 能光投手(2年)に対して2死三塁としたところで、7番・箕浦 充輝内野手(2年)がしぶとくゴロで三遊間を破って2点差とした。

これで、高知が逃げ切るのかと思われたが、9回、豊川は8番からの打順で三浦 康生内野手(2年)、八木 七遼内野手(1年)と、代打で起用された選手が連続安打。起用に応えたが、それを1番・林がバントで送ると、続く高橋 賢捕手(2年)が右前打で三塁走者をかえして1点差。さらに1死一、三塁となって、モイセエフの右犠飛で土壇場で同点とした。

そのままタイブレークに突入したが、豊川は代打の都合で5人目の投手として内野手登録の竹内 雄惺(1年)が登板。投手としての公式戦登板経験はないが、「とにかく、ストレートだけでいいからストライクを投げていけ」という長谷川監督の指示通りにストライクを心がけていった。満塁となったところで、暴投で1点を失ったものの、併殺で抑えるなどして1失点で切り抜け希望をつないだ。

そしてその裏、5番からの豊川は代打・島田 拓実内野手(2年)が送ることはできなかったが、主将で6番の鈴木 貫太内野手(2年)が気持で打った中前安打で二塁走者をかえして同点。延長はさらに続くこととなった。高知のマウンドには、再び辻井が戻っていた。

11回、3番からの高知は、しっかりバントで送り1死二、三塁。4番・谷口はストレートの四球で満塁になって、5番の辻井の中犠飛で高知は1点リードする。

それでも「1点だったら返せる」という思いの豊川は食い下がった。「これ以上延長が続いても、投手が持たないかもしれない」と判断した長谷川監督は、9番からの打順だったが、逆転を狙って強攻するが、前の回に代打で出て安打を放っていた八木は三振。1番・林の内野ゴロで二、三塁となる。そして、高橋の打席。逆転の生還を許したくない高知の外野陣は思い切って前に出て浅く守っていた。

高知のバッテリーとしては、続くモイセエフの前で、どうしてもここで決着をつけたいところだった。そんな意識も働いたのかもしれないが、フルカウントから少し甘く入ったところを高橋が捉えて、浅い中堅手の頭上を破っていく2点サヨナラ打となった。

高知の濱口監督は、「終盤に得点を重ねられたのはよかったのですが…。多くの課題が見つかった試合でした。本当は勝って、もっと試合を重ねたかったんですけれども」と残念がった。そして、「控えの選手も含めて鍛えながら、もっと層を厚くしていかなくてはいけない」ということを当面の目標として、さらなるスタートをしていく意欲を示していた。

豊川の長谷川監督は、「4回の守りは、硬さというよりも神宮球場という雰囲気にも浮足立ってしまったところもありました。それでも、ベンチでは4点くらいだったら、まだいけるという雰囲気もあったし、ニキータが打って、ムードを変えられた」と、粘りを示した試合を戦いきった選手たちを称えていた。

この記事の執筆者: 浦田 由紀夫

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