藤田淳平(ソフトバンク育成7位)、「150キロの速球はなくてもドラフト指名」 背景にあった戦略<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑥>
今年のドラフトで「11年連続指名」と史上最多の「同時6人指名」を成し遂げた四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックス。この圧倒的な実績はどこから生まれるのか。
今年指名を受けた6人のインタビューからその秘密に迫るこの企画。最後を飾るのはソフトバンク育成7位・藤田 淳平投手(川島-東亜大)である。
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今年で11年連続26人、チーム創立以来30人の選手をNPBに送ったインディゴソックスだが、意外にも左投手の指名は初めてだ(同時にシンクレア ジョセフ 孝ノ助投手<西武育成1位>も指名されている)。
藤田を一言でいうなら、「丁寧で落ち着きのある投球が魅力の投手」。安定した投球で、インディゴソックスの先発の柱として活躍した。成績は19試合に登板、うち11試合が先発、65回と2/3イニングを投げ奪三振が75個、防御率は1.51。リーグの最優秀防御率を獲得している。
藤田投手は徳島県出身。川島高校から東亜大学をへてインディゴソックス入団1年でNPB入りの夢を叶えた。そのストーリーを追っていこう。
大学では指名漏れ
徳島県出身の藤田だが、高校時代はインディゴソックスのことを知らなかった。
「高校の時はあんまり野球の世界を知ろうとしていなくて……。徳島インディゴソックスのことは全然知りませんでした。
大学は山口県の東亜大学でやらしてもらったんですけど、3年生の時に企業チームからお声をかけていただいたんです。その時に『NPBを目指そう』と決めました。でもドラフトでは指名はもらえなかったんです」
野球界は広いようで意外と狭い。NPBを目指す選手たちに、自然と“業界の噂”は入ってくるものだ。もちろん藤田にもその噂は入ってきた。
徳島インディゴソックスに入れば、何とかなる——。
「誘われていた企業チームに行くのか、育成力が高いと噂の徳島に行くか迷ったんですけど、地元ということもありますし、NPBを目指すってことに関しては徳島が1番いいのかなということで、徳島に決めました」
徳島で受けた2つの衝撃
こうして徳島に入団した藤田だが、春のキャンプで2つのことに衝撃を受ける。まずはその環境。
「トレーニングや体に対するケアに関しても、専属のトレーナーがついてくれて、より自分の身体を知ることができました。本当に野球に打ち込める環境っていうのがあり、これほどまでに充実している環境とは思ってもいなかったです」
次は投手陣たちが集うブルペンだ。
「正直、最初にみんなの投球を見たときに『エグイな』って…。自分の野球人生でここまでの選手がいなかったので。145キロとかの世界でやってたんですが、徳島はほとんどの投手が150キロ出しているんですよ」
当時の藤田のストレートは「MAX140キロ前半で、常時130中盤から後半」だった。
前半戦は絶好調、しかし…
徳島の剛腕投手陣に圧倒された藤田だが、自分を見失うことはなかった。
「自分は試合に勝つための投球を考えて、フィールディングを磨いたり牽制を磨いたりと、とにかく『いやらしい野球』っていうのを大学では目標にしていました。
自分の軸となるものは、『試合に勝つ、試合を作る投球』。徳島に来てもそこがブレることはなかったです。監督さんから投球ドリルとか、教えてもらったことはしっかりと実践していきましたが、投球フォームの変更は考えず、今の感覚で筋量など技術を向上しようと考えていました。
とにかくたくさん投げられるように、シーズンが始まるまでずっとブルペンで投球練習をしていました、つねに打者を想定して投げました。それを監督さんが見てくださって『球数を多く投げられる藤田は先発で行けるな』と評価してくれたと思います」
「勝てる先発」としての藤田のアピールは見事成功。先発の一員としてシーズンを迎え、シーズン前期は大車輪の活躍を見せた。
球界では「今年の徳島の目玉は藤田」、そんな声まで囁かれるようになった。
しかし、シーズンが後期に入ると藤田の調子は落ちていく。疲労の蓄積などで上手くいかない投球が増えていった。
「シーズンを通して野球をやるっていうのが初めてだったので、ペース配分というか…まだまだいけると思っていましたが、実際にはケガをしてしまいました。自分は打者一人ひとりに全力を注いで投げるタイプだったので、見えない部分への負担や自分が思っている範囲外でのアクシデントが多かった」
言うまでもなく、大卒の独立リーガーである藤田に求められるのは、即戦力。
NPB入りに黄色信号が、灯った。
後半はこちら
「社会人に進んでいたら、ドラフト指名はなかったと思う」藤田淳平(ソフトバンク育成7位)が語る「徳島のストロングポイント」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー⑥後編>
取材・文/鎌田光津希(元徳島インディゴソックス、千葉ロッテマリーンズ)