【高校野球ベストシーン’23・佐賀編】「仮面ライダー」兄弟バッテリーに、激アツな女子マネージャーと、甲子園で話題を振りまいた鳥栖工
2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。
佐賀では、ノーシードの公立校・鳥栖工が夏の佐賀大会を制して、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。佐賀大会初戦の2回戦で優勝候補の佐賀北を2対1で破って勢いがつくと、快進撃を続けて初優勝を成し遂げた。
初の甲子園でも、初戦の富山商(富山)戦で、延長12回タイブレークの末にサヨナラ勝ち。3回戦で日大三(西東京)に敗れたが、初出場ナインの戦いぶりは、甲子園にさわやかな「風」を起こした。
話題性も抜群だった。勝利した富山商戦の6回からマウンドに松延 響投手(1年)が上がった。マスクを被るのは、兄でもある松延 晶音捕手(3年)。この2人は兄弟で、名前は晶音(あぎと)と響(ひびき)。「仮面ライダー」つながりで命名された2人が、甲子園という大舞台でバッテリーを組んだ。幼いころから変身ベルトで遊んでいた兄弟が、晴れ舞台で躍動。弟が144キロを投げ込み、兄がしっかりリードした。このバッテリーの踏ん張りもあり、タイブレークを制して、甲子園初出場で初勝利をつかんだのだった。
もう1人、話題をさらった「選手」がいた。記録員としてベンチに入った女子マネージャーの緒方美月さん(3年)。記録をつけるかたわら、時折、選手以上に大きな声を張り上げて、選手を鼓舞したり、励ましたり、勇気づけたりしていた。普段から、ノックの補助も行い、まるで「選手」の1人としてチームの勝利に貢献していた。緒方マネージャーは、佐賀大会直前に、選手から背番号21のゼッケンと「甲子園に行こう」と書かれた色紙を渡された。ベンチ入り20人プラス1人の「選手」として認められたことに、涙したという。「全国で一番声を出すマネージャー」はこうして生まれ、甲子園で花開いた。
兄弟バッテリーの結束と、選手とマネージャーの結束。記録的な暑さを記録したこの夏の甲子園で、初陣・鳥栖工が起こしたさわやかな「風」は、ファンの記憶に留まることだろう。
鳥栖工・夏甲子園1回戦スタメン
(二)鐘ケ江 瑠斗(3年)
(遊)天本 陽晴(2年)
(中)高陽 章(3年)
(捕)松延 晶音(3年)
(右)戸塚 廉(3年)
(左)林 航海(2年)
(一)藤田 陽斗(3年)
(投)古沢 蓮(3年)
(三)松尾 明芳(3年)