「甘い言葉をかけてます」 野球教室開催、丸刈り廃止、WEBでのPR……部員不足と闘う都立高野球部のいま
都立江戸川ナイン(23年夏撮影)
40校が合同チームで参加した秋季都大会
著しく進んでいく少子化に伴って、高校野球の現場でも部員不足に悩む学校は少なくない。東京都の高校野球の現実を見てみると、昨年夏の東西東京大会では、東東京では17校が合同チームとなって6チームが参加し、西東京では14校5チームだった。合わせて31校が合同チームで参加せざるを得なかった。それでも、3学年揃っている夏の大会は、まだよかったといえたのかもしれない。
秋季大会になると、単独チームで出られていた都立東や都立日本橋、都立芦花、都立桜修館、都立富士に都立中野工科、都立練馬工科などは、3年生が抜けたことで9人に満たなくなり、これらの学校が合同チームとなった。こうして、秋は40校13チームが合同チームとして参加した。チームを組めず参加を見送らざるを得ない学校もあった。かえつ有明や松蔭、啓明学園などの私立校も合同チームとして参加していた。
「中学生の皆様へ」ホームページで“ボトムアップ野球”を呼びかけ
そんな現実の対策の1つとして、東京都高野連では未就学児から低学年の小学生を対象としてティーボール教室を開催できる学校を募った。野球経験のない子どもたちに、まずは野球体験をさせていこうという試みである。また、高学年の小学生に対しては野球教室なども開催していった。4年前から取り組みを始めようと計画していたが、新型コロナによって、実現できないでいたものを、コロナが5類に移行したことを受けて、12月から1月にかけて26会場で28校が参加して開催された。
現場の部員確保対策としては、1つのネックになっていたとも言われる丸刈りをやめるというところは多い。今年度から丸刈りを廃止したという都立紅葉川の髙橋勇士監督は、練習スタイルとしても、「生徒の主体的な活動を重視して、根性論よりも論理的な指導に重きを置いている」と言う。だから、「苦しいことを乗り越えるより、楽しむ雰囲気を大事にしている」ということだ。
また、都立紅葉川はじめ都立江戸川、都立小岩、都立篠崎の江戸川区4校で合同して、“江戸川ベースボールフェスタ”と称して、小学生を対象とした的当て、フライキャッチ、バッティングなど、野球にちなんだ遊びから野球普及活動を始めている。
就任当初から“セルフジャッジベースボール(SJB)”と称したノーサイン野球を推奨している都立江戸川の園山蔵人監督は、「ボトムアップでのチーム運営を前面に出してやっているので、怒られながらやらされるということがない」ということを強調している。一人ひとりが責任を持ったキャプテンなのだという姿勢を貫いている。そして、それを外部へも積極的に発信していくという意味で、野球部ホームページを充実させていくことも大事だという。「中学生の皆様へ」という形で、ボトムアップ式野球部をまずは見学しに来てほしいと呼び掛けている。