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日大三・國學院久我山・堀越……西東京の群雄割拠が井口資仁、井端弘和ら名選手を生んだ!【東西東京大会50周年物語④】

2024.06.16


侍ジャパントップチーム監督の井端弘和氏(堀越出身)

6月15日、第106回全国高等学校野球選手権東西東京大会の抽選会が行われた。

【トーナメント表】夏の東東京大会 組み合わせ
【トーナメント表】夏の西東京大会 組み合わせ

今年は東西に分かれて50周年という節目の1年になる。今回は70年代から90年代の西東京大会を振り返っていく。(文中敬称略)

これまでの記事を読む:
◇なぜ、夏の甲子園で東京は2つの代表枠を持つことができたのか? “絶対権力者”の反対を振り切った一人の名物監督の“力 ”【東西東京大会50周年物語①】
◇“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】
◇東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

日大三、赤坂から町田に移転 西東京で群を抜く実力校に

東東京大会の話が続いたので、西東京大会の話もしておきたい。西東京大会が始まってから3年目の76年、日大三が赤坂から町田市の丘陵地帯に移転した。赤坂時代の日大三は、野球部員は授業が終わると赤坂見附駅までダッシュして調布市柴崎の練習場に向かっていた。町田市では、学校の敷地内に野球の専用グラウンドがあり、生徒がより野球に打ち込める環境が整った。
日大三が町田市に移転した年に、町田市にある桜美林が全国制覇を果たした。けれども西東京では、歴史を含めた実績では日大三が群を抜いており、西東京では日大三がたびたび甲子園に行くものと思われていた。しかし移転して最初の20年間で、西東京大会で優勝したのは、79年と85年の2回だけ。しかも、2回とも初戦で敗れ、結果を残せないでいた。

群雄割拠の西東京、原因は“人口増加”

この時期の西東京は、桜美林の全国制覇に刺激され、新たな強豪が次々と現れていた。さらにこの地域ならでは事情も絡んでいた。
第2次ベビーブームに加え、多摩ニュータウンをはじめとする大規模住宅地の造成により、人口が増加していた。また日大三の町田移転と同じ時期に、中央大学をはじめとする大学の郊外移転や新キャンパスの建設、企業の研究所の郊外移転なども相次いだ。
私は90年代の初め、予備校の高校受験担当者を取材したことがある。その時、「大学の教職員や研究者など、教育熱心な人たちが多摩地区に多く住むようになり、八王子を中心とした地域の学校のレベルが上がり、さらにそうした人たちの受け皿を求め、レベルアップの波が八王子の東側にも伸びて、その影響は(杉並区の)國學院久我山くらいまで来ている」と言われたことが印象に残っている。
硬式野球部はないが、都立八王子東は78年創立と歴史は比較的浅いものの、都立日比谷などともに、都立校を代表する進学校になったのも、こうした地勢的な要因があったからだ。

こうした多摩地区の高校の盛り上がりは、学力だけでなく、スポーツに影響を及ぼすようになった。83年に創立した東京菅生(後の東海大菅生)は、87年に西東京大会で準優勝した。84年に創立の明大中野八王子(4月からは明大八王子)は、いまだ甲子園に行っていないものの、90年に準々決勝に進出し、西東京の強豪校となった。
こうした新しい学校に加え、第1回の東京大会に参加している日本学園のほか、八王子日大鶴ヶ丘などの歴史のある学校も力をつけ、西東京は群雄割拠の状況になった。

次のページ:
・小野和義(創価)vs.武田一浩(明大中野)、ドラ1投手の投げ合いが実現
・語り継がれる“甲子園の名勝負”を演じた法政一
・東亜学園の躍進と悲運

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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