低反発バットなど関係ない!“飛距離モンスター”マーティン・キャメロン(東海大札幌) に大爆発の予感!
マーティン・アンドレ・キャメロン(東海大札幌)
「低反発バットでも全く関係ないです。パワーや飛距離は今まで指導してきた選手の中では一番だと思います」
東海大札幌の大脇英徳監督がそう評するのは、北海道に現れた飛距離モンスター“マーティン・アンドレ・キャメロン”だ。鍛え上げられた上半身と、スクワット170kgを挙げるどっしりとした下半身を武器に、ボールを軽々と遠くまで飛ばす。
対外試合が解禁した3月からは、3試合連続本塁打を放つなど、自慢の長打力を発揮してきた。
アメリカ人の父と日本人の母をもつマーティンは、幼少期を流氷で知られる網走で過ごした。
東海大札幌に入学を決めたのは、当時所属していた大空リトルシニアの指導者・冨田大介の言葉が大きい。
冨田は東海大四高(現:東海大札幌)を卒業した後、東京農業大学網走では全日本選手権、社会人・サンワード貿易時代は、都市対抗・日本選手権に出場した名選手。しかし、プロの夢は叶わなかった。
そんな冨田が、マーティンにプロ入りの夢を託したのである。マーティンは、冨田の2つ先輩でもある、大脇監督が率いる東海大札幌に進学を決めた。
内面を変えれば、技術も向上する
入学当初から、長打力は目を見張るものがあったが、まだマーティンは気持ちにムラがあったという。当時を振り返り、大脇監督は、
「気持ちのコントロールが出来ていないところが見られました。良いボールを見逃した後のがっくりする様子などが態度に出ていましたね」と話す。
精神的な成長を促すために、大脇監督がマーティンに伝えたことは、3つあった。
①普段の学生生活からきちんとした行動をする。
②チームの中心選手である自覚をする。
③一打席、一打席をタフな打席にする。
ここで言う「タフ」とは、攻める気持ちを常に出していく、どんな形でも塁に出る気持ちを全面に出すことである。
大脇監督は、技術の前に内面からの変化が重要だとマーティンに伝え続けた。そんな大脇監督の思いは、マーティンに伝わっている。それはマーティンのインタビューでも感じられた。
「寮生活では、だらしない所もしっかり注意してくれた仲間がいました。仲間に支えられてここまで来られました」
野球部で行うゴミ拾いを始めとして、普段の生活・行動を変えることでマーティンの視野は広がった。自分以外の周りが見え出し、周りの人への感謝ができるようになっていった。
「日本一になりたい」
気持ちの安定と共に、技術も向上していった。
「練習量は誰にも負けません。朝は5時30分から練習を始めて、寮の点呼がある6時30分までトレーニングをします。このことは誰にも言っていないのですが、早いときは4時台に起きてやることもあります。誰にも負けないほどの練習をしたという自信を持つためにやり続けています」
この朝の自主練習は、マーティンが1年の秋から始めている。マーティンは自身を律して、継続することで目には見えない、自信という武器を得ようとしている。本人が内面の成長を意識しているのが伝わってくる。
マーティンの内面の成長を周りも感じている。学生コーチに近い存在でもある同校のマネージャー高橋琉我(るうが)は、
「マーティンは入学した時から、いちばん人間性が変わった選手だと思います。昔は調子の波がありましたが、今は副キャプテンになってチームを引っ張れる存在になっています」と話す。
技術だけでなく内面を磨いてきたマーティンの夏は、もう目前だ。
「日本一になりたいです。チームが苦しい時に大事な一本が打てる選手になりたい」
最後の夏の初戦は27日。相手は札幌平岸だ。マーティンの打棒が爆発することに期待したい。