Interview

「喧嘩最強」を目指した中学時代……元阪神外野手に再び野球の道を目指させた「心奮い立つ恩師の言葉」

2024.06.28


平下 晃司氏

「父親の教えは『何でもいいから一番になれ!』でした。その言葉を曲解して、僕が一番になろうとしたこと……それは喧嘩だったんです」

そう語るのは元プロ野球選手・平下晃司氏(46)だ。
近鉄・阪神・ロッテ・オリックスの4球団で10年以上活躍した平下氏を「野球の道」に導いたのは、一人の教師だった――。

<前回を読む:「この人の下で野球はできない」オリックス暗黒時代に引退した外野手の回想>

サッカーをやるつもりだったのに……

もともと僕は野球をやるつもりはありませんでした。入りたかったサッカーチームは小学校1年生に入団資格がなく、親から「兄と同じ少年野球チームに入りなさい」と薦められました。両親は共働きで、子供を違うチームに送迎する余裕はなかったんです。
4年生まで野球をやって、それからサッカーへ、ということを考えていたんで、野球は遊んでばかり。グラウンドにある泥んこを丸めてボールにして監督に渡す、みたいな変なことばかりしていました(笑)。

4年生になると、野球の試合に出ることになり、結構活躍することができたんです。すると監督や周りの人々が「お前、野球センスあるな! 野球やめてサッカーいくの? 野球だったらいい選手になるんじゃないの?」と言ってくれて……性格上「じゃあ野球やるわ!」となったんです。

「この先生についていきたい!」野球を再開するきっかけとなった恩師の一言

小学生時代は外野手としてレギュラーになりましたが、それほど実力のある選手ではありませんでした。
中学校になると僕よりももっと上手い選手がいました。先輩には市内で有名な選手もいて、出場機会はありませんでした。

それが面白くなかった。
中学には腕自慢のヤツらが集まっていたので、野球部に籍だけおいて、ケンカに明け暮れる日々を送りました。父親の「一番になれ!」って言葉をケンカで実現しようとしてたんです。高校ではボクシング部に入りたいなと思っていた時期もありました。

そんな中2のとき、野球部の監督が代わったんです。新監督は毎日学校で僕にしつこく話しかけてきました。「持っているものは凄いんだよ、君は。なんで野球をやらないの? 部活に来いよ、野球しようぜ」と。

最後は自宅にまでついてきて、同じことを言うようになったんです。ここまで褒めてくれてうれしくないはずはありません。じつは中学時代、喧嘩していたのはただ一番になりたいだけではありませんでした。家族にも不満があったんです。兄は野球もできて、勉強もすごくできる人で、両親は兄に目をかけていましたが、僕は……。大人が信用できず、ぐれていたんです。こんなに褒められたり、期待される経験がなかったんですよね。だから「この先生についていきたい!」そう思ったんです。ですので僕はついに、「部活に行きます」と答えました。

次のページ:どんどん野球がうまくなる

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この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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