2年前の決勝の雪辱を胸に。日体大荏原「いつも通りのことを淡々と」
日体大荏原の練習模様
今年の東東京大会で注目したい一校が、日体大荏原だ。
これまでに春夏合わせて3度の甲子園出場経験があるが、1976年に夏の甲子園出場を果たしてから全国の舞台は遠ざかっているものの、東東京では実力校として知られている。2022年には東東京大会の決勝に勝ち上がり、以降ベスト8進出を安定的に果たすなど、再び甲子園が見える位置まで力を付けてきた。
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積極的に飛び交う叱咤激励の声
指揮官・本橋慶彦監督の指導の下、多摩川の河川敷沿いにある専用グラウンドで選手たちは毎日汗を流している。
取材日は主力組、そして控え組と複数のチームに分かれて練習が行われており、終始緊張感のある雰囲気で練習が進んでいた。強豪校らしさを随所に感じられる練習が印象に強く残っているが、同じく印象深かったのは、選手間で飛び交う称賛の声だ。
1つ1つプレーに対して叱咤激励の声かけを、チーム全員が徹底している姿が多く見られた。これについては正捕手・中村逢良に聞いても、「練習の中できちんと相手に伝えることを意識しています。声掛けをしてミスを防ぐ意味でも、選手間でプレーを評価することは大事だと思っています」と話す。
エースである吉田健汰も、「お互いのプレーを1つ1つ評価をするからこそ、1つ1つのプレーを大事にできています」と効果を実感している。
チームをまとめる平塚真寛主将も、「チームメイト同士での会話が活発になるので、今はとてもいい雰囲気で練習出来ています」と来る夏に向けて、チームのコンディションは上昇傾向にある。
先輩たちの背中に見た、勝てるチームの姿
本橋監督は、まさにそうした凡事徹底ともいえる、難しいことではなくて当たり前のことを積み重ねることを大事に、チームを作っている。その成果が、2022年の夏の東東京大会にあると、選手たちの言葉から見えてくる。
「2つ上の先輩たちは、あれだけ大勢のファンが駆け付けた神宮でも、普段やっているプレーをしていました。いつも通りのことを淡々とやっていて、本当にすごいと思っていました」(平塚主将)
「ベンチに入って一緒に戦っていましたけど、やっぱり練習に取り組む姿勢だけではなく、継続する力は見ていて『すごいな』って思っていました。だから先輩たちがやっていたことを繋げられるように、周りへの声かけなど先頭に立って行動するようにしています」(吉田)
それでも、まだ先輩たちに足りない部分を平塚は感じている。
「グラウンドでの練習では、1つのプレーに対して叱咤激励し、毎日の練習に対して課題をもって取り組んでいますが、先輩たちと自分たちを比較したらまだ全然届きません」
昨秋は都大会2回戦で、同じ東東京のライバル・関東一と激突するも、3対8で敗れた。
「ヒット数こそ自分たちの方が多かったですが、チーム全体で繋ぐ意識といいますか、打者と走者が協力して得点を奪う攻撃が、関東一はできていて、自分たちはできませんでした。そこが足りていない部分だと感じました」(中村)
全員で全力で戦って、最低でもベスト8へ
春季大会では巻き返すべく、チームでは打力強化を主眼にしてオフシーズンに突入。6ヶ所に分かれたバッティング練習を実施するなど、1日1000スイング以上はバットを振り込んだ。
特殊なメニューを組むことなく、とにかく練習量をこなして心身共に鍛えた冬。「コツコツ積み重ねていくように練習しましたが、時折ミーティングをやって気を引き締めました」と平塚主将がまとめ役として、創意工夫を凝らした。
「継続することの大切さは、本橋監督がずっとおっしゃっていて、『休まずに続けられる選手が強くなる』という言葉をかけてもらうので、継続力は大事にしています」(平塚主将)
そうして迎えた春季大会。日体大荏原は東京都大会初戦で日本学園に1対0で勝利。続く2回戦も都立東村山西に13対0で勝利して、3回戦まで駒を進めた。
勝てば、夏のシード権獲得。チームとして目指してきたところに迫ったが、修徳相手に5対10で敗戦。夏はノーシードに回ることとなった。平塚主将は「シードを意識してか、気持ちが空回って守備のエラーが多かった」と振り返った。
一方で、秋の課題でもあった繋ぐバッティングとランナーを絡めた攻撃は発揮できた。修徳から5点を奪ったことは、冬からの手ごたえとなった。
とはいえ、夏はノーシード。最低でもベスト8という目標を達成するには、4連勝が必要になる。決して楽な道のりではないが、「自分たちが積み上げてきたものを出すだけ」と平塚主将のなかで覚悟は決まっている。
目標達成、そして2年前に届かなかった甲子園へ、同じ東東京のライバルたちに勝つには、「守備から攻撃に繋げる野球ができれば、あと一歩のところに届くと思います」と話したうえで、平塚主将が集大成の夏へ思いを語った。
「1年間やってきたことをしっかりと出したうえで、勝利という結果にどれだけ近づけるか。目の前の相手に向かって、全員で全力で戦いたいと思います」
平塚主将たちが1年生の夏、目の前で二松学舎大附が優勝を決めて、甲子園へ進んだ。あの時の悔しさ、景色を知る3年生たちが積み重ねてきたものを惜しみなく発揮し、4度目の甲子園出場となるか。
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