神村学園vs横浜
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田中貢大(神村学園)
自信になる勝ち方・神村学園
招待野球とはいえ、全国屈指の名門校・横浜相手の試合は特別なものがある。その横浜に神村は中盤の集中打で快勝した。山本常夫監督は「ゴールデンウイークの遠征から課題にして取り組んだことが出せた。自信になる勝ち方ができた」と納得顔だった。
五回裏の集中打にそれが凝縮されていた。四回まで先発の左投手に散発3安打に封じられていた打線が、8番・中野大介が逆方向に鋭い打球で飛ばしたことを皮切りに目覚める。満塁、押し出しで同点に追いつくと、2番・田中貢大は、四球の後でストライクを取りに来る初球を思い切り引っ張って右翼席に叩き込む満塁弾を放った。「ボールデッドなのでゆっくりベースを回れるのは、気持ちが良いですね」と自身初本塁打の味をかみ締めた。
それ以上に監督が評価したのは、さらに2点をダメ押した攻撃だ。本塁打の後、3番・平藪樹一郎がヒットで続き、4番・柿澤貴裕がエンドランで長打を放ち、5番・二河拓馬もしぶとく右方向に二塁打を放った。
これまでどちらかと言えば苦手にしていた左投手から「逆方向に踏み込んで打つ」「足を絡めた攻撃」というテーマにしていた攻めで点がとれた。
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柿澤貴裕(神村学園)
エース柿澤の投球も安定していた。横浜とは昨年6月の関西遠征で対戦し、柿澤は横浜・柳と投げ合い、良い勝負をしながら惜敗している。この日、柳は故障のため出番はなかったが「借りを返す」気持ちで柿澤はマウンドに立った。「スピードよりも制球」を重視し、「マウンドでリラックスする」ことを心掛け、横浜の強力打線に連打と長打を許さず、5安打1失点の好投だった。
九州大会でみせた守備も随所に好プレーをみせ、無失策で柿澤を盛り上げた。六回には三遊間に抜けるあたりを三塁手・中園史剛がダイビングキャッチ。「内野手の中では自分が一番下手なので、前に落とすことを先ず意識する。三遊間は絶対抜かせない」気持ちで飛びつく好守は九州大会でも再三見られた。遊撃手・田中は三遊間の深いゴロを難なくさばいて、一塁アウトを2度とっている。「守備はうまくいくのが当たり前。うまくいっても特に喜ばない」と言ってのけた。
本塁打や好守以上に田中が手ごたえを感じているのは、1、2打席目のセンター前ヒットだ。センバツ前は2番打者でありながらチーム一の打点を挙げる好打者だったが、センバツ、九州大会と満足いく結果が残せなかった。
「良い打球を打っても正面ならヒットにならない。逆に当たりは良くなくてもヒットゾーンに飛べばヒットになる」ことをテーマに、センターから三遊間方向に打球を飛ばすことを打撃練習で取り組んだ。本塁打はうれしいが「やってきた成果が出せたのは、その前の2打席です」と胸を張る。神村ナインのどん欲な向上心が生んだ好ゲームだった。
(文=政純一郎)