高島vs長浜農
野球はチームスポーツ!
「自分としては70点。でも、野球はチームスポーツなので、そのチームが勝てたのでそれで良いです」
滋賀大会で注目を浴びる高島のエース・瀧中瞭太(3年)の夏初戦の感想である。
5回まで長浜農打線をパーフェクト。力強い直球でバンバン押し、相手打線を翻弄した。
6回に内野安打という形で初めて走者を背負うが、「次の試合のこともあるので、変化球を見せたくないという気持ちはあった。でも、変化球を投げるとそれに頼ってしまうので、自分が一番自信のある真っ直ぐでいこうと決めていました」と直球一本のピッチングが続いた。
9回一死から、長浜農の1番松波宏幸(2年)にセンター前に弾き返されたのが、完全に打ち返された唯一の場面だった。
さて、冒頭に記した瀧中の言葉でポイントになる部分がある。
それは「野球はチームスポーツ」と自ら発したこと。
春以降、注目投手と騒がれる中でも、己を見失わないために大事にしてきた言葉に思えた。
投手は、球速というわかりやすい材料もあるが、注目を浴びるほど個人が際立ってしまいがちになる。
ゲームの根幹を作るプライドが、悪い方に出てしまう選手も何人も見てきた。いくら良いピッチングをしても、ゲームで負けて泣く選手も多い。
そういう選手の大半が、「もっと速くなる」「もっと球速が出る」という風に、数字と速さを求めてしまっているのだ。
瀧中が口にした言葉は、それとは真逆だった。その真意が次の言葉からも伺える。
「去年の夏、北大津戦(準々決勝)では自分のせいで負けてしまった」
以降、次の夏へ向けて瀧中に変化が見られるようになったという。
ショートのポジションからエースを見守る主将の寺田悠来(3年)は、「以前は、調子が良い時は周りにも気をつかって投げていたが、悪い時は態度にでることも多く、一人相撲もあった。でも今は、周りがミスをしても声をかけてくれたり気をつかうようになった」と話してくれた。
この日も、マウンド上で常に白い歯を見せて気を配っていたエース。
打撃では、4回に待望の追加点となるタイムリー三塁打を放ったのだが、二塁ベース直前で少し躊躇した場面があった。
「春に右足を肉離れして、ほぼ完治をしているのですが、(再発の恐れもあって)無理をするなと言われていた。でも、三塁まで行ける状況なのに行かなかったら、チームの雰囲気が悪くなってしまう」と心境を話した瀧中。
甲子園出場、将来はプロという大きな夢はあるが、高島というチームでやる野球を楽しんでいるのが今の瀧中。
彼の表情を見ていると、個人だけが注目される球速について聞く気にはなれなかった。
個人が際立っては勝てないし、もし負けたとしても悔いが残る。やはり野球はチームスポーツ。
メンバー外の選手も含めて、チーム全員が同じ方を向いてこそ、初めて選手一人一人の力に変わる。
だから今回はあえて球速には触れない。
スターティングメンバー
【長浜農】
4松波宏之
6藤井克成
8松本生馬
2堤歩夢
9呉屋良信
3滝澤祐太
5伊藤智哉
1西尾仁 (主将)
7井関慎
【高島】
2大久保智貴
5松井寿将
6寺田悠来 (主将)
7中川高充
8土井貴史
1瀧中瞭太
3大須賀仁
9川原林拓斗
4佐藤純
(文=編集部)