木更津総合vs流通経済大柏
6回までノーヒット…。だが7回に木更津総合伝統の連打を見せる!
ノーヒットの試合はノーヒットノーランを達成しようとその重圧を楽しみながら投げるものだが、0対0のノーヒットは全くそんな気がしない。いつ打たれるのか、ヒットを打たれたら、そこから掴まるのではないかとネガディブな気持ちにさせられる。その投手の不安な気持ちをつけば、ビッグイニングを築くことができる。昨夏選手権出場の木更津総合対流通経済大柏の一戦はまさにそんな試合であった。
流通経済大柏の先発・杉浦 彰悟(2年)だが、将来楽しみな右の本格派であった。ゆったりと振りかぶり、左肩を高々と上げながら、テークバックを大きく取るフォーム。テークバックを大きく取ると、右肩が下がり気味だが、彼の場合、着地したときにしっかりと右肩を上げることができている。右胸を大きく張って、上半身を鋭く旋回させる。腕の振りと腰の回転が一致しており、力強いストレートを投げる形ができている。球速は130キロ前半だが、スライダー、カーブ、カーブを交え、木更津総合打線を無安打に抑える投球。
木更津総合の先発は千葉 貴央(2年)。千葉は1年夏からベンチ入りし、昨夏の甲子園・大阪桐蔭戦でも先発登板を果たしている。千葉は足の上げは小さいが、右足を送り込んで、お尻から体重移動するように心がけ、下半身をうまく使う。球速は杉浦と同じくらいで130キロ前後だが、スライダー、カーブ、フォークを織り交ぜる。杉浦は真っ向から振り下ろす本格派だが、千葉は低めに集めて、打たせて取る実戦派向きの投手。対照的なタイプ同士の投げ合いは6回を終えて0対0。木更津総合は無安打。
7回表、木更津総合は3番猿田 瑞希(2年)の右前安打、4番谷田 涼(3年)の右前安打で無死一、二塁。5番寒河江 海人(2年)は一飛、6番東 龍弥(2年)も左前安打で続き、7番秋庭 豪太(3年)の二飛に倒れたが、8番檜村 篤史(1年)が右中間を破る長打を放ち、3点を先制。さらに9番千葉も左前安打で続き、二死一、三塁。1番岡田 裕平(3年)の左前安打を放ち、1点を追加し、4対0。中継プレーの間に千葉は三塁、岡田は二塁に陥れ、二死二、三塁となって、2番逆井 将(3年)が左中間を破る安打で二者生還。なんと6対0。木更津総合はこの回、初ヒットを記録してから7安打6得点の猛攻を見せた。
9回表、7番秋庭が左前安打で出塁し、8番檜村の犠打で一死二塁として、9番千葉は凡退したが、1番岡田が右中間を破る三塁打でさらに1点を追加し、7対2。
その裏を締めて、木更津総合がべスト8進出。昨年に続き2年連続のベスト8だ。木更津総合のつながったときに止まらない攻撃力はやはり脅威。ここぞというときにビッグイニングを作って、試合をモノにする木更津総合打線は健在であった。とにかく木更津総合は1番から9番まで振れること。そして自分のタイミングで待てる選手が多いので、ビッグイニングを呼び起こす。木更津総合は諦めずに試合終了まで振ることを意識してほしい。
流通経済大柏は思わぬビッグイニングとなってしまった。杉浦は良い勉強になったともいえる。打線がつながり始めたときにどうやって勢いを止められるか。投手としての能力を高めるのはもちろんだが、ピンチのしのぎ方を覚えれば、来年の千葉県を代表する好投手として注目されるかもしれない。
(文:河嶋 宗一)