ケガをきっかけに速球派サイドに!山田怜卓(八戸学院光星)はチームに欠かせない絶対的なリリーフエースとなった
強打を存分に発揮する八戸学院光星は投手陣も登板した4投手のうち2人が140キロを超えるなど力量も高い。その中で一際存在感を発揮しているのが背番号1の山田怜卓(八戸学院光星)だ。最速145キロを誇る右サイドで、野球を始めた時から今の投げ方だった。3試合を投げて防御率0.87とリリーフエースとして活躍を見せている。仲井監督から「マウンドに立てば、背番号1」という言葉を贈られ、強気のマウンド捌きで打者に立ち向かう山田の成長の歩みを追うと、1つの怪我が急成長のカギとなっていた。
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昨秋の怪我は寝返りも打てないほどの激痛が起こるほどだった
山田怜卓(八戸学院光星)
抽選会後の取材で仲井監督はチームに手ごたえを感じていた。
「打線は春前から本塁打を多く打てる打線だと思っていて、センバツでは私の調整ミスで広島広陵の河野君を打てずに負けましたが、この夏はだいぶ調子が上がってきました。
投手はこれまで後藤丈海が投げてきて、ほぼ1人でした。その中で左腕・横山海夏凪、右サイド・山田怜卓など投げられる投手が出てきたのは大きい」
新たに背番号1を獲得した山田というのは今までの八戸学院光星にはないタイプの右投手だ。八戸学院光星の右投手といえば、後藤丈海のようなボールの出し入れ、変化球の切れなど総合力の高さで勝負する投手が多い。山田は右サイドでガンガン強気で押すピッチングが持ち味。ストレートは常時140キロ台・最速145キロをマークする。右サイドで140キロ台を投げられて、全国舞台で活躍する投手は異例のことで、山田の存在が投手陣に厚みを持たせているといっていいだろう。
とはいえ、山田は2年秋まで速球派サイドではなく、最速は137キロ。そこそこ速いサイドだった。転機となったのは昨秋の東北大会中に第一肋骨が疲労骨折している怪我に見舞われた。その時は息するだけで痛くて、寝返りを打つと、激痛が走って目が覚めて運動は全くできない。普通ならば気分が落ちてしまうところだが、山田は動けないからこそ考えた。
「リハビリをして、トレーニングができるまでに食べて体重を増やそうと、ひたすら」
三食と学校の休み時間にプロテインなど摂取しての間食、練習中にもおにぎり、寝る前に茶碗ごはん1杯だけ食べる食トレを行い、体重は6,7キロ増えて、怪我明けしてからは筋肉に変える作業を行い、この春には145キロまで達し、大変身を達成したのだ。
甲子園では強気のマウンド捌きを見せるようになった
山田怜卓(八戸学院光星)
その後、練習試合では先発・リリーフの練習を行いながら、調整を進めていったが、いつのまにかリリーフになっていた。
「自分はイニング途中から行くことが多いのですが、自分は肩の作りが早いほうだと思いますし、最初から全力で力のあるボールを投げられるところがリリーフとして起用していただいていると思います」
145キロだけではなく、気持ちの面でも強さが見えた。注目の試合となった智辯学園戦では6回途中からリリーフしたが、逆転打を許したものの、「7回から切り替えていけました。ストレートが良かったのでそれで押していきました」と、3.2回を投げて7奪三振、自責点0の好リリーフ。
そして長崎海星戦では同点打を許してしまったが、ここから切り替え、「スライダーが良かったので、右打者の外、左打者にはボールからストライクに入るスライダー、内角へスライダーをどんどん投げていきました」
左打者に対してはバックドアを使うなど幅広い攻めを使って、3.1回を投げて自責点1のピッチングを見せた。ここまで3試合を投げて、11.1回を投げて、13奪三振、自責点1、防御率0.79と抜群の安定感を発揮している。正捕手の太山 皓仁は「この1年の成長は大きいと思います。自分は春、ケガした期間があって、久々に受けてみたら凄い速くなっていましたし、精神面の成長が大きいと思います。打たれても動じないですし、甲子園にきてから吠えてガッツポーズするようになって、自分もつられてガッツポーズしてしまいました(笑)」
精神面の成長は山田自身も感じている。
「打たれたらどうしようと思ったのですが、甲子園ではこの場面はこう投げて抑えようと切り替えが自分の中でできていると思います」
次は明石商と2年連続の対戦。強敵相手だが、「自分たちも成績面では決して負けていないですが、イニング初めで打たれて失点することが多いので、抑えて流れを切れるようなピッチングをしたいです」と意気込む。
ここまで4本塁打26得点と自慢の強打を発揮している八戸学院光星。いずれも厳しい試合を制しているリリーフエースとして存在感を発揮している山田は強敵・明石商相手にも快投を見せる。
(記事=河嶋 宗一)
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