試合レポート

鷲宮vs昌平

2012.07.16

フルカウントからのスライダー!両者の想い

投手力の昌平対粘りの鷲宮という一戦。

昌平は春先に肘を故障し今大会は背番号10で臨む左腕・廣橋希(3年)が今大会初先発ということで期待されたが、この日は苦しんだ。
ストレートの伸び自体は悪くなかったが制球が甘い。さらに「うちは前の試合も左投手との対戦だったので自然にバットが出た」(鷲宮・柿原監督)という序盤から粘っこい鷲宮打線に苦しめられる。

1回、2回と2本づつヒットを打たれるが要所を締め何とかしのいできた廣橋だったが4回表、二死三塁から1番佐藤清(3年)のボテボテのサードゴロが内野安打となり1点を失った。

一方の昌平打線は、「今日はストレートが走っていた。相手の左打者が踏み込んできてたんで真ん中のストレートを投げればインコースに見えるんで、そこをみせてあとは外へ投げて。右打者には高めを使ってっていうのが基本的にはうまくいった」と言う鷲宮のエース左腕・戸井田豊(3年)のがんばりもあり5回まで無得点に抑えられる。

鷲宮は6回表にも一死二塁でこの日タイミングが合っていた9番塚本拓也がセンター前タイムリーを放ち追加点を奪う。ただし、その得点の入った本塁クロスプレーでキャッチャーの右膝と二塁走者だった戸井田の頭が激突する。
戸井田は脳震盪を起こし試合が中断。鷲宮には他に春まで主戦だった俄羽がいるだけに鷲宮・柿原監督も迷ったそうだが、戸井田が志願したことで続投を決意した。


しかし、6回裏昌平打線が反撃を開始する。
一死から、この日タイミングの合っていた岩立が左中間へ二塁打を放ち出塁すると4番田倉尚征(3年)、5番野本貴亮(2年)もヒットで続き3連打で1点を返す。さらに二死後一,二塁で7番正木泰行(3年)を迎える。正木はフルカウントで戸井田の投げた低めスライダーを捕らえると打球はレフトスタンドへ飛び込む値千金の逆転3ランとなった。

「6回はフラフラだったんですけどただあの1球が。悪い球じゃなかったと思うんですけど相手がうまかった」(戸井田)
「正木にヒットを打たれたら俄羽に交代しようと思っていたがまさかホームランとは」(鷲宮・柿原監督)

戸井田、柿原監督共に悔やんだが、その後戸井田はきっちり抑えただけに終わってみると悔いの残る一球となった。

一方の正木は、「1球目にファールを打って少し前が開いているかなと思って修正した。狙っていた球ではないが強い気持ちで打った。今まで悔しかったんで」とこの場面を振り返る。
それもそのはず、春4番を打ちながら不調でBチームに落とされた。背番号も13でありそこから夏這い上がってきた選手だ。

廣橋は7回裏一死二塁カウント2ストライク2ボールで突然自ら降板しマウンドをエースナンバーの斉藤に後を託す。だが、斉藤は落ち着いて後続を打ち取るとその後も鷲宮打線をきっちり抑え昌平が4対2で逃げ切った。

鷲宮はとにかく全員が粘った。特にエース戸井田のがんばりが光った。
「今までは練習試合では良くても大会になると良い投球ができなかった。山形遠征と宮崎遠征で結果を出してエースナンバーをもらって、今日初めて気持ちを前面に出して投げることができた。悔いはないです」とまさに鬼気迫る熱投だったが一球に泣いた形となった。

一方の昌平は正木に当たりが出たことは収穫だが、あくまで投手陣が売りのチームである。それだけに廣橋の今後に一抹の不安を覚えた。

「今日は良くなかった。チームに助けられました。ボールも高くコントロールも悪く勝負球が甘かった。交代した場面はボールが行かなくなって自分から代わった」と言うだけに不安はいっぱいだが、次の登板までにまた調整すると言う彼の言葉を信じたい。

(文=南英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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