高瀬vs多度津
研究し尽くし、必然の快勝
「次の対戦相手には申し訳ないですけど、1回戦に全てをかけるつもりでした。だから多度津の試合DVDは何度も見て研究しました」。
試合後、主将・4番・そして二塁送球2秒を切る強肩の女房役である久穂遼太(3年)がこう語った通り、6年ぶりの夏1勝を目指す高瀬の相手研究は万全であった。
まず守っては多田博之監督と協議しつつ各打者ごとに作り上げた攻略法をベースとしつつ、「先発の三宅翔(23年)は左のサイドなので、外の変化球を見せ球にインコースのストレートを決め球にする」(久穂)隠し味を加えて相手に的を絞らせず。
返す刀で攻撃では「DVDを見たら相手の配球は外のストレート中心だったので、それだけを狙って打席に入った」1番・久保智志(2年)のヒット号砲に、先発・富田雄介(3年)、左腕・多田一斗、豪腕・橋口天斗といったいずれも130キロ台のストレートを有する3投手から8安打8得点を奪う猛攻。「DVD通り」。図らずも久穂、久保が口をそろえたコメントはそのまま彼らの手ごたえを言い表すものといってよい。
さらに多田監督のベンチワークも冴えていた。3回裏二死二塁の先制機で2番の森田龍也(2年)に対しては、「彼はこねる癖があるので、逆方向に素直に返すように話をして」片手一本で内野の頭を越える先制打へ。
「相手に頂いた点が多かったし(多度津の失策3・暴投3)、終盤のエラー(計4個)は反省しないと」と指揮官はあくまで謙虚な姿勢を崩さなかったが、ここはむしろ昨秋、今春と県大会初戦でいずれも高松商業に自滅で敗れた原因を追究し多度津のミスを先に誘発させた高瀬を褒め称えるべきであろう。
「終盤ミスが重なった点を反省して、気持ちを入れて次に臨みたい」と指揮官同様に気を引き締めた久穂。その意識が変わらなければ、7年ぶりの夏2勝目。さらに初の夏3勝目=1991年以来4度目となるベスト8進出も十分射程内である。
(文=寺下友徳)