県立岐阜商vs可児
西沢(可児)
可児、強豪相手に善戦も惜敗 県立岐阜商の落ち着き際立つ
秋の高校野球岐阜大会は17日、[stadium]土岐市総合公園野球場[/stadium]で2試合を行った。第一試合では可児が7回まで県立岐阜商を相手にリードを奪ったが、終盤に力及ばず惜敗した。
球場に「ひょっとしたら」のムードが漂った。春夏通算53回の甲子園出場を数える名門・県立岐阜商を相手に、進学校・可児が3回表、4番西沢直輝のタイムリーや走塁妨害で2点を先制。8回表まで2対1とリードを保った。県立岐阜商の痛烈な打球が野手の正面に飛ぶなど、ツキも可児に味方していた。
だが、8回裏に力尽きた。県立岐阜商の先頭打者・松尾皐太がヒットで出塁すると、1番河村蓮志の送りバントを可児の投手・樋口忠司が一塁へ悪送球し、走者が還って同点に。直後、2番東泰斗に左翼へタイムリー二塁打を浴び逆転され、その後もスクイズやタイムリー、暴投が重なった。
「我慢強く抑えてくれた。よく投げてくれた」と、真船拡監督はエース・樋口をねぎらった。
毎回のように走者を出しながらも、左腕から繰り出す緩いカーブを駆使し、とらえどころのない投球でかわし続けた。大事な場面で、バッターに本来のバッティングをさせなかったのだ。それだけに、真船監督は「初戦の多治見戦では、控え投手・沢田圭世への継投で逃げ切ったので、試合後の今になって考えてみると、もう少し早く代えておけばという後悔はあります…。でも、あそこまで樋口が投げてくれたら、代えられないですよ」と、苦い胸中を明かしてくれた。「むしろ逆転されるまで毎回のように得点チャンスがありながら、生かしきれなかったのが悔やまれます」と、点差を広げられなかった拙攻を敗因に指摘した。
藤田(岐阜商)
「楽なまま終わるはずがない。毎回が最終回のつもりで戦う」という心構えで、強豪相手に力を出し尽くした可児ナイン。可児は5年前の夏、県ベスト4に進出するなど、文武両道の風土がある学校だ。主将の西沢は「試合中は自分たちのほうが強いと思って立ち向かいましたが、相手の集中力が上で、自分たちはミスを止められなかった」と沈んだ表情だが、このまま意識を高く持って取り組めば、さらなる飛躍が期待できそうだ。
県立岐阜商は8回に逆転し、望みをつないだ。だが、周囲がヤキモキするほどには、当事者は心配していなかった様子だ。藤田明宏監督は「焦ったら負けだ」と選手に言い聞かせていたようで、「どこかでビックイニングを、とは思っていた。それが(土壇場の)9回裏じゃなくて8回裏だったので、まだ良かったです」と、始終腰を据えた対応を強調。捕手・田中宏樹も「準備と確認をしっかりしていたので、焦りはなかったです」と話し、打っても柔軟・強靭なリストを生かして右中間へ三塁打をマーク、5点目をたたき出した。
先発は藤田監督の長男・1年生左腕の藤田凌司が務めた。ボールの伸びや変化球、大崩れしないコントロールなど高い総合力が持ち味だが、
「今日は制球も全然だったし、変化球ももっと精度を上げないと…」と藤田監督は不満なよう。6回からは本格派の高橋快舟、安定感のある藤後彰太とつないだ。
藤田監督は「終盤に跳ね返す試合が今までなかったので、そういう展開を経験できたことはチームにとって成長でしょう」と締めくくった。少々のことには動じない、落ち着き払った県立岐阜商メンバーに、頼もしさが感じられた。
(文=尾関 雄一朗)