伊予vs三島
熱戦の中、現れた伊予の新星右腕
延長11回。試合時間2時間59分のロングゲーム。ただ、その中でも見どころが多い熱戦だった。
試合経過だけを追っても激戦が手に取るように見える。1回表に伊予が一死一塁から4番・白方 大貴(一塁手・3年・165センチ58キロ・右投右打・愛媛松山ボーイズ出身)の左越二塁打で先制すると、3回裏には愛媛三島が一死から3番・熊野 仁(2年・遊撃手・177センチ76キロ・右投右打・四国中央市立愛媛三島東中出身)、4番・森 虎太郎(3年・投手・181センチ79キロ・右投左打・伊予三島リトルシニア出身)、5番・森田 遙人(3年・中堅手・167センチ60キロ・右投右打・四国中央市立三島西中出身)の3連打で同点。
5回表に伊予が無死一・二塁から暴投と1番・髙橋 陸(3年・遊撃手・右投左打・169センチ66キロ・えひめ港南リトルシニア出身)の右前適時打で2点を突き放せば、愛媛三島は土壇場の9回裏、3連打での無死満塁から4番・森の右翼線二塁打で1点差に迫り、なおも二死一・三塁から6番・中井 健太(3年・右翼手・172センチ61キロ・四国中央市立土居中出身)が右前に気迫で落とす適時打で再び同点。1個のプレーで流れが大きく変わるシーソーゲームに両校応援団からは歓声と悲鳴が交錯した。
そんな中、誰もが納得する力投を見せた右腕が2人いる。愛媛三島では森。伊予では4回裏から2番手で登板した西川 泰生(2年・右投右打・178センチ77キロ・松山市立南第二中出身)である。
愛媛三島の森は途中2イニングを1年生左腕・芝 龍之介(163センチ61キロ・左投左打・四国中央市立愛媛三島東中出身)に任せるも計9回で145球。伊予三島リトルシニア時代はリーグ関西選抜で台湾遠征を経験するなど将来を嘱望されながら、相次ぐけがに苦しんだ高校時代の悔しさを払しょくせんとする投球は観衆の心を打った。
一方、その森と少年野球チーム「川之江Dynamites」でチームメイトだった西川は、8回124球被安打10・与四死球2・奪三振2・失点2の結果以上に、スピードと投げっぷりのよさでインパクトを残す。愛媛朝日テレビTV中継のスピードガンに出た最速は「138キロ」。コンパクトなテイクバックから柔らかく、かつ強く振られる右腕と下半身の軽快な弾み方は、将来性の高さを十二分に感じさせるものだった。
試合は延長11回表に一死三塁から1番・髙橋の左前適時打などで2点を追加した伊予が制したが、この2人の演じた「投手戦」は心から拍手を送れるもの。愛媛三島のエースから魂を引き継いだ伊予の新星のこれからに期待すると共に、森 虎太郎のこれからの人生に幸多きことを心から祈りたい。
(文=寺下 友徳)
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