第86回センバツ大会総括(チーム編)
今年のセンバツは頭ひとつ抜けた存在として、好投手の田嶋 大樹を擁する佐野日大と岡本 和真のいる智弁学園の2校が挙げられていた。しかし、その2校が2回戦で対戦し、佐野日大が勝利。その佐野日大も4強で甲子園を去り、優勝予想は難しくなった。頂点に立ったのはセンバツ初優勝の龍谷大平安。監督がナインを鼓舞し、ケガを負ったレギュラーの分をナイン全員でカバーした結果だった。
優勝候補がつぶし合いの混戦を制した龍谷大平安
龍谷大平安は、昨年のセンバツ出場メンバーが10人残るチームで、経験値が高く、ピンチでもチームとして対応できた。5試合で159打数55安打.346、43得点と強い打力が光った。本来、龍谷大平安は守備を中心にチームを作るが、このチームは打力アップに力を入れた。
主戦となるのは、2年生の高橋 奎二と元氏 玲仁の両左腕。この2人を、3年生左腕の犬塚 貴哉と「1」を付けた右腕・中田 竜次が支えた。熱血漢の原田 英彦監督にとって93年の就任以来、初めての優勝旗。その快挙を祝福したい。
準優勝の履正社は溝田 悠人と永谷 暢章の継投が今大会での躍進につながった。先発の溝田はストレートとスライダーが武器。その溝田の後を、最速147キロの永谷が力でねじ伏せるパターンを確立できたのは大きかった。打線は駒大苫小牧戦(2014年3月27日)、豊川戦(2014年4月1日)で、逆転したように、非常に粘り強さが目立った。
2013年秋の大会決勝の豊川
初出場ながら4強へ進出した豊川の堂々とした戦いぶりは見事。立役者は4試合中3試合に先発したエースの田中 空良だ。その田中は準決勝の履正社戦では、股関節痛で先発を回避。リリーフとしてマウンドに上がるも、打ち込まれてしまう。
それでも、チームは踏ん張った。6対2とリードを許して迎えた8回裏、固め打ちで5点を奪い逆転する。9回に再び追いつかれ延長戦となり、試合巧者の履正社に敗れてしまうが、沖縄尚学(2014年3月31日)、日本文理(2014年3月22日)、徳島池田(2014年3月28日)を破り、履正社を追い詰めた。
ファンの脳裏に豊川の名前は刻まれたはずだ。
佐野日大のエース田嶋は間違いなく大会屈指の好投手だ。ただ、智弁学園(2014年3月28日)と明徳義塾(2014年3月31日)という2強豪と延長戦を戦ったことは、田嶋の体力をそぎ落とし、準決勝の龍谷大平安戦で本来のピッチングができなかったことが悔やまれる。夏に向けて右腕・稲葉 恒成の一本立ちに期待したい。稲葉は今大会での登板はなかったが、140キロの速球、キレのある変化球を投げる本格派右腕だ。
[page_break実力伯仲した接戦続々で、史上最多となる6回のサヨナラゲーム]実力伯仲した接戦続々で、史上最多となる6回のサヨナラゲーム
明徳義塾は、初戦で智弁和歌山と対戦(観戦レポート Part1 Part2)。延長15回を岸 潤一郎が投げ抜いた。続く2回戦では東京代表の関東一と対戦(2014年3月29日)し1点差で制す。準々決勝の佐野日大戦は、再び延長となり、ここで岸は力尽きた。2番手の育成は早急の課題だが、馬淵 史郎監督の懐は深い。夏までに、いくつものカードを切ってくるかもしれない。
創成館ナイン Photo: Kyodo News
桐生第一は2年生中心のチーム。18名のベンチ入りの中、3年生は5人だけだ。2年生とはいえ、エース山田 知輝のピッチングは見事の一言。2回戦の広島新庄戦で15回171球を投げて、再試合でも9回112球を投げて、勝利を呼び込んだ。準々決勝の龍谷大平安戦は、延長10回に、山田の暴投でまさかのサヨナラ負け。劇的な幕切れを、続く夏への糧にしたい。
3季連続で甲子園に出場し、昨秋の神宮大会で優勝した沖縄尚学の実力は折り紙つき。「琉球のライアン」こと山城 大智は3試合すべてに先発。前の2試合(2014年3月23日 2014年3月28日)で1失点と好調だったが、疲れが出たのか、豊川打線につかまってしまう(2014年3月31日)。神宮大会で見せたように打線をつなげて、初の夏Vを狙いたい。
他では27年ぶりの出場の徳島池田は、古豪海南をサヨナラで下した。かつての豪打はないが、終盤にかけて粘り強さがある好チームだった。往年の強さをどこまで取り戻すか注目していきたい。
駒大苫小牧は2004年選手権優勝時の主将である佐々木 孝介が監督になり、初めての甲子園出場となった。履正社との2回戦では5失策を出したのが痛かった。9回に追いつかれて最後の逆転負け。青年監督にとって苦い経験となったが、夏のリベンジはなるか?
サヨナラ勝ちが6回、これはセンバツ史上最多となった。ファンにとっては手に汗握る展開が多かった。続く夏も拮抗した戦いを見せ、手に汗握るゲームを一つでも多く見せて欲しい。
(文=河嶋 宗一)