早稲田実業vs立志舎
早稲田実業、清宮主将のチーム改革で一変!
清宮幸太郎(早稲田実業)
強いチームに共通しているのは、雰囲気が良い、動作にスピード感あることだが、今年の早稲田実業はまさにそのチームだ。
この秋から、高校生ナンバーワンスラッガー・清宮幸太郎が就任。
昨年は準備期間もなく、秋へ突入した。今年は1か月間の準備期間があったのだろう。去年と比べると投打ともに充実しているように感じる。初回からしっかりと主導権を握った。
一死一塁の場面で3番清宮の第1打席を迎えた。1ストライク3ボール。歩かせても良い場面。ここで立志舎バッテリーは変化球で外そうとした。低めの変化球だったが、振り抜いた打球はバックスクリーン直撃の2ラン本塁打。得点板の下に当たる特大の本塁打だった。ここまで飛ばすだけでも素晴らしいが、なんと弾丸ライナーでそのまま入ってしまった。驚愕の一言である。清宮自身も「詰まっていてまさか入るとは思っていなかったのですが、ガシャンという音を聞いて入っただな」と本人も驚きの本塁打であった。
その後も点を重ねる早稲田実業。2回表、2点を追加した早稲田実業。清宮の第2打席はライトへあわや本塁打と思わせる大飛球。これが犠飛となり、5対0。この打席を振り返って
「こすってしまった」と悔しがったが、こすっても、フェンス手前。滞空時間の長さから考えて、しっかりとコンタクトしていれば二打席連続本塁打間違いなしだった。4回表、無死一、二塁の場面で迎えた清宮の第3打席は大きなセンターフライ。清宮はアウトになっても鋭い打球が多い。横から見ると分かることだが、清宮の技術力の高さを実感できる。タイミングの取り方が実に良く、すり足気味でタイミングを取り、どの投手に対してもしっかりと合わせることができている。そしてフォロスルーまでのスイングの鋭さ、打球の速さを直で感じることができる。やはり別格の打者である。
その直後、1年生4番の野村大樹が高めに入ったスライダーを逃さず3ラン本塁打。野村は「第1打席、第2打席ともにスライダーで打ち取られて、とても悔しい気持ちでしたので、逃さず打ち返すことができてほっとしています」とコメント。第1打席は痛烈な遊ゴロ、第2打席も鋭いライナー性の右飛だから、野村も凡退の内容が良い。
内容の良い2人は6回表にも快打を披露。清宮は逆方向へ鋭い二塁打を打つと、野村も左横線の二塁打を放って9対0とすると、無死一、三塁から6番橘内 俊治の適時二塁打で2点を追加すると、二死二塁となって9番雪山 幹太の適時打で12対0とした。
早稲田実業はどの打者もスイングが鋭く、打球も速い。体つきを見ていても、秋にしてはかなりがっしりしている。主将の清宮は体幹トレーニングなどしっかりとトレーニングをやろうと選手たちへ指示。1つのトレーニングを手を抜くことなくやった結果が、今の打撃を作り上げたといっていいだろう。
また投手陣の出来も良い。エースの服部雅生は5回まで無失点の投球。1年春から経験を積んでいる投手だが、この日が最も良く見えた。春先、自分の投げ方を見失い、制球難に陥ったこともあったが、どの投げ方が自分にとって良い投げ方なのかを模索した結果、右サイド気味の投げ方となった。ストレートのスピードは常時130キロ~133キロを計測。スピード表示はそれほど速いわけではないが、両サイドへしっかりと投げ込むことができていて、横滑りするスライダーがきっちりと決まっていた。和泉監督は「清宮と同じく、1年から経験をしている選手。引っ張ってもらわなければならない選手です」と期待を込める。6回裏から2番手として登板した大垣 洸太も良い投手であった。それほど上背がある投手ではないが、下半身主導のフォームから投げ込むストレートは常時130キロ~133キロを計測。
あくまで1イニング限定とはいえ、ストレートの勢いは服部をひけをとらない。入学時から期待されていた投手だったが、ケガで1年間投げられない時期が続いたがようやく復帰。
大垣にとって初の公式戦登板だったため、かなりの緊張が見え、引っ掛けることが多かったが、それでも投手としての能力の高さを実感させた。和泉監督も、「今日は力んでいましたが、いずれ彼を頼りにするときが来ると思います」と戦力として期待している様子だった。
今日の早稲田実業ナインを見ると、活気があって、試合に対しての集中力が素晴らしい。それは清宮が先頭に立って声を出して引っ張っているのが大きいだろう。
チームとしても、個人としても秋とは思えない完成度の高さを見せたが、それは主将・清宮のチーム改革が大きい。清宮は練習前、こういう練習にはこういう意味があって、ここがうまくなると選手たちに伝えてから、練習に取り組ませるという。そこまで注意していうのは、チームも、自分もマンネリ化で惰性で練習に取り組んでしまった反省があったようだ。清宮は意識改革の中身を明かしてくれた。
「野球は同じことの繰り返しじゃないですか。練習も、試合も。ずっと続けていると飽きがきて、流してしまう。それは僕自身、そういうことがあったので、再確認のために何を持って取り組ませるかを意識しています」
以前から清宮についてはまさに高校野球史に残るスラッガーというのは誰もが分かっていることだが、主将としてもしっかりとチームメイトと向き合って、意識改革できる、優秀な主将である。
強いチームは1日では出来上がらない。ただ今年の早稲田実業が意欲的にチーム作りできているのは明らかである。この1年、どんな歩みを見せるのか、楽しみである。
(文=河嶋宗一)
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