高松商vs高知
高松商が高知・森木 大智に教授した「高校野球」
3番手として登板した森木 大智(高知)
「森木くんが出てきた時は歓声が上がっていましたね」。試合後、笑みを浮かべてこう感想を述べたのはスタンドの観客ではなく……高松商・長尾 健司監督である。
四国大会の域をはるかに超え、日本野球界にとって大きな関心事の1つとなった高知・森木 大智(1年・投手・184センチ82キロ・右投右打・高知中出身)の公式戦デビューは、生粋の野球小僧が多い高松商の選手たちをも惹きつけていたのだ。
ただ、センバツ初戦では関東の雄・春日部共栄(埼玉)に対し、香川 卓摩(3年・投手・165センチ62キロ・左投左打・東かがわリトルシニア出身・侍ジャパンU-18代表一次候補)の4安打13奪三振完封と15安打8得点で快勝を収めている彼らは、憧れと共に森木へ「高校野球とは」を教授する術も十二分に整えていた。
象徴的だったのが結果的に勝敗を分ける大きなポイントとなった9回表・高松商の攻撃である。一死後に4番・岸本 将翔(3年・左翼手・右投右打・179センチ82キロ・高松市立紫雲中出身)は初球141キロストレートをレフト前へ。続く香川はフルカウントまで粘り139キロストレートを逆方向への連打。しかも左翼手のもたつきを見るやすぐさま二塁を陥れ、次打者の遊ゴロ野選を誘発させる要因を作った。
森木は試合後「ボールが浮いて打たれた」と自らの投球内容を振り返ったものの、公式戦初戦の相手が高松商のような個の能力と組織を兼ね備えていたことは、今後の森木と「守備のミスからの失点が多かった」と主将の川田 悠慎(3年・遊撃手・173センチ64キロ・右投左打・四万十市立中村中)も反省した高知の成長を考えた上ではむしろ幸運と言ってよいだろう。
試合後、唇を噛み締めて高松商の校歌を聞いた森木 大智だが、この苦い経験も超えるべき関門の1つ。この時期にして最速145キロとやはり素材としては図抜けていることを示した彼の「これから」を今は静かに見守りたい。
(文=寺下 友徳)