綾羽vs国際情報
チームのために戦い抜いた大黒柱
マウンドに立ち続けた背番号3は、ゲームセット後も最後まで笑顔だった。
「自分の持ち味は速いストレート。とにかく強気に攻めていくことだけを考えていました。負けはしましたけれど、投げていて楽しかったです」
そう口にしたのは国際情報の4番で主将でもある前川竜悟(3年)だ。
清々しい表情をも見せた背番号3は、そう言って大粒の汗を拭った。
1回から威力のあるストレートで強振してくる打者をフライアウトで三者凡退。2回には初安打を許したが、二死後、7番の小森崇誼(3年)を空振り三振に斬って取った。
強打者揃いの綾羽打線を相手に内角を強気に攻め続けたが、3回と4回に1点ずつを失った。
「もっと勝負どころで三振を取れたら、リズムに乗っていけたのかもしれないです。でも、ここという場面でみんなが守ってくれたし、今日は自分だけが抑えたんじゃない。みんなのお蔭です」と前川は無失策で守り抜いた野手陣に心から感謝していた。
本来は、そのマウンドには背番号1をつけた竹内克行(3年)がいるはずだった。
だが、3月の下旬にヒジを痛め調子が上がらないまま夏を迎えた。そのため稲畑昭則監督は「チームで一番野球センスがあるから」と、前川を投手として起用するようになった。
復帰の目処が立たないまま夏のメンバー選定をする時期に入り、復帰を願って背番号1を竹内に与えたが、大会に入っても状態は上がらないままだった。
そんなチーム状況の中、投手として一生懸命奮闘する主将の姿にナインの心はひとつになった。何より投げられない仲間のために、「少しでも自分がチームのためになりたい」と前川は最後まで歯を食いしばった。
試合後、泣きじゃくるナインの中で「自分は力を出し切れたから」と前川は満足感を漂わせ、笑顔で仲間を称え、気丈に振る舞った。
稲畑監督は「今日は前川がよく投げてくれたし、ミスもなかった。特に前川は中軸にも真っ向勝負をしていて、うちらしい試合でした。素直に打たれて点を取られたのですから、完全な力の差。でも、よく戦ってくれました」とナインをねぎらった。
敗れはしたが、100%の力を出し切った国際情報ナイン。
その真ん中にいた背番号3は、間違いなくチームの大黒柱だった。
スターティングメンバー
【国際情報】
5木内裕喜
2櫨本陸
6久徳俊之
1前川竜悟 (主将)
8飯田英嵩
9竹内克行
7山中翼
3飯田雄斗
4杉江翔太
【綾羽】
4土平厚樹
3新井彩人
6古谷和哉 (主将)
5大西恭平
8山田遼馬
9泉祐介
7小森崇誼
1仲畑光
2正岡勇将
(文=沢井史)