試合レポート

近大泉州vsりんくう翔南

2013.07.12

9人で戦った夏

 りんくう翔南の試合前ノックで、各ポジションにきれいに1人ずつ散らばった選手たち。ベンチ入りは9人、控え選手がいないため文字通りナインの心を一つにして戦う。先発マウンドには背番号2の降井が立ち、背番号1の池田が受ける。
 一方、近畿大学泉州を率いるのは、近畿大学附属で長い間指揮を執った豊田監督。75歳を過ぎた今でも円陣の中心で熱く指示を出す姿は変わらない。

 試合は初回、近畿大学泉州が果敢に攻める。フォアボール、デッドボールで無死一、二塁のチャンスを作ると、3番・渡辺はりんくう翔南の先発・降井のコントロールが定まってないと見るや、バントの構えから見逃し揺さぶりをかける。その後、フルカウントとなると、ランナーはスタート。渡辺はレフト前に運び、エンドランを成功させる形で1点を先制。さらに、無死二、三塁で打席に入った4番・塩田が2球目にスクイズ。これはファールとなったが取れる時に1点でも多く取りたいという監督の思いが現れていた。この思いに、主砲がレフトへの2点タイムリーツーベースヒットという最高の形で応える。続く5番・山本は、三塁へ進んでいた塩田をライト前へのタイムリーヒットで還し、早くも4得点。強烈な先制パンチで試合の主導権を握った。

 早く追いつきたいりんくう翔南は2回、先頭の降井がヒットで出塁すると白地がきっちり送りバントを成功させる。一死二塁と形は作ったが近畿大学泉州の先発・小足のストレートで押すピッチングの前に久山、橘が連続三振に倒れチャンスを生かせず。
 初回に4点を失った降井だが、3回4回は打たせて取るピッチングで近畿大学泉州の攻撃を三者凡退に抑える。5回に二死二、三塁のピンチを背負うが初回にタイムリーヒット打たれた山本をショートゴロに打ち取り、追加点は許さない。裏の攻撃では先頭の白地がフォアボールで出塁すると、7番・久山のカウントが3ボール1ストライクの時にエンドランをしかける。スタートを切っていたことが功を奏し、ショートゴロの間にランナーは二塁に到達するが、この回も得点にはつながらなかった。

 近畿大学泉州は2回以降無得点の攻撃が続いていたが、7回一死からキャプテンの中田がレフトオーバーのスリーベースヒットを放ち、絶好の追加点のチャンスを演出する。是が非でも欲しかった次の1点は、やはり手堅く取りに行く。2番・水野のカウントが2ボールとなったところでスクイズを敢行。ファースト寄りのピッチャー前にうまく転がり、待望の5点目を加えた。


 7回までゼロ行進が続いたりんくう翔南は8回のマウンドにマスクをかぶっていた池田を送る。7回まで投げた降井はサードへ、サードを守っていた久山がキャッチャーのポジションに就いた。

 池田は先頭打者をショートゴロに打ち取るが、続く山本に対してストライクが入らない。ストレートのフォアボールで歩かせてしまうと7番・榎本に内野安打を許し、8番・阪本のバントを処理し切れずにバントヒットにしてしまう。一死満塁となると近畿大学泉州・豊田監督は、8番・小足の打席で1ボールからの2球目にスクイズのサインを送り6点目を狙う。しかし、小足は空振りしスタートを切っていたランナーが挟まれ二塁ランナー・榎本が三塁ベース上でタッチアウト。小足もフォアボールを選び再び満塁としたが、9番・三浦秀がショートフライに倒れた。この回は、ヒット2本を放ち、フォアボールを2つ選びながら結果的にはスクイズ失敗が響き無得点に終わった。

 9回、2イニング目のりんくう翔南・池田が制球に苦しむ。3連続フォアボールで無死満塁とすると5回の守備から出場していた玉置に対しても3ボール。4球目も外れ、押し出しで6点目を献上すると、ここから近畿大学泉州打線がつながる。山本からの4連打と中田の犠牲フライで得点を重ね、この回一挙に7得点。打者11人を送り込む猛攻でりんくう翔南を突き放した。

 りんくう翔南は最終回の攻撃で初めて連打を放ち、一死一、二塁でクリーンアップを迎えるという場面を作ったが、3番のキャプテン・河合、バッテリーをこなす4番・池田が共に外野フライに打ち取られ、近畿大学泉州・小足の前に三塁を踏むことが出来なった。

 大敗を喫したりんくう翔南だが、2~8回までは互角に渡り合った。近畿大学泉州がビッグイニングを作った初回と9回は、先頭打者がどちらもフォアボール。四死球でランナーをため、甘くなったところを狙われるというパターンさえ克服できれば少ない人数でも十分に戦える。りんくう翔南“ナイン”はそんな大事な教訓を示してくれた。

(文:小中翔太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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