Interview

オリックス・山岡泰輔(瀬戸内出身)が語るタメになる投球理論vol2「自分の特性を活かす変化球理論と力を発揮できるメンタルコントロール」

2020.06.16

 今年も6月19日の開幕投手を任されたオリックスのエース・山岡泰輔瀬戸内出身)。山岡は172センチ68キロをフルに使う投球フォーム理論、トレーニング理論はもちろん、多彩な変化球についても注目をされている。その変化球の精度の高さはマニアックなプロ野球ファンから注目を浴びている。そんな変化球について山岡はどういうポイントで投げているのか。大舞台でも動じずに投げられる山岡のメンタリティはどこから生まれるのか。

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オリックス・山岡泰輔が語るタメになる投球理論vol1 「トレーニングの意識、取り組みが投球フォームにつながる」

投球の幅を大きく広げたカットボール

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インタビューに答える山岡泰輔投手

 山岡が投げる変化球はスライダー、チェンジアップ、カットボールがメインとなる。その中でカットボール、チェンジアップはストレートと同じ腕の振りで投げており、負担も少ないという。

「スライダーよりカットボールのほうが負担は少ないかなと思います。 僕は親指で切ることができなくて、人差し指と親指でひねるイメージで投げています。僕はどちらかと言うと、カットボールを縦に落としたいので、縦に回転を与えるイメージです」

 さらに山岡は自分に見合う変化球を習得する必要性を語ってくれた。

 「自分の場合、カットボールが良くなってからピッチングの幅が広がりましたね。
 だからといって、カットボールを習得すればいいという話ではなく、投手の特性によって合う変化球が変わってきます。
 僕の場合は真っ直ぐとスライダーがあって、カットボールは中間球の役割を果たしています。たとえば、真っ直ぐだと思ったらカットボールだった、スライダーと思ったらカットボールだったという。
 そうなると相手側からすれば、狙い球が絞りにくくなる。人によっては役に立つ球種、自分の投球スタイルを活かせる変化球があると思うんです。自分の場合はカットボールという話で、自分の投球スタイルに見合うような変化球を使うと投球の幅が広がると考えています」

 そして山岡はピッチング練習で一番大事にしていることはインコースの制球力を磨くことだと言う。

「自分は160キロを投げる投手ではないです。スピードで勝負できる投手ではないからこそ、身体の近くにしっかりと投げられることを大事にしています。右打者、左打者問わずインコースに投げる練習を繰り返し行っています。シート打撃でも同じことを意識しています」

 まさに理にかなった投球理論である。

[page_break:投球フォームは連動性が大事。下から上に伝えるイメージで]

すべてを受け入れ、投球の準備を行う

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ピッチング練習をする山岡泰輔投手

 先発ローテーションを1年間守り切るためには調整方法なども必要になるが、一番はマウンド上でどれだけ力を発揮できるか。そのために山岡はこれまでの取り組みを発揮するしかないと語る。

 「もうやるだけですね。一週間でやってきた事をそこで出すだけです。当日状態が悪いと感じてもどうすることもできないので、その中で出来る限りのことをやるように心がけてるんですけど、いきなり調子悪いからこれをやろうとか、それはもう遅いですね」

 試合が始まってみると、調子が悪いと感じてしまうことはどうしてもある。そこでも山岡のスタンスは変わらない。

「それで勝負するしかありません。あとは配球、球種によっては『調子悪いけどこのボールは良いな』というのがあるので、その球を軸にしたりとか。そういうのはあります。もちろん、投げていくうちにハマることもありますね。
 基本的には割り切った感じで投げています。そうでないと、バッターと勝負できません」

 高校生だと調子が悪かったり、ピンチになると動揺しがちになる。そこについてアドバイスをいただいた。

「やはり高校生だと試合の日程も違うので、一発勝負で調子を合わせるのは難しいと思います。その中でも探りながら、相手のバッターがアウトになってくれれば、こっちの調子が良くても悪くても一緒なのでアウトにすることだけを考えて投げればいいと思います。考えすぎないことも大事です。
 またピンチの場合、点差によっては割り切ることも必要ですし、絶対に与えられない時もそれを考えすぎるのも良くないと思うので、僕は楽しむことを考えるようにしています。
 ここで抑えたら盛り上がるなとか、かっこいいなと思うことはありますけどね」

 山岡は一定の調子を保つためにあえてルーティンを作らないという。

「一個作って、それが崩れたときにどうしようもないので。やることを忘れてしまったら、もう崩れてしまうじゃないですか。
 だからそれを崩さないために、ルーティンさえなかったら何をやってもオッケーなので、そういう意味で自分のストレスを溜めない生活をしてると思います。無意識にやることがルーティンだと思っています」

 このような心がけをするからこそ、山岡は大舞台でも強い。昨年のプレミア12でも緊張することはなかったという。

「やはり自分がやってきたことに自信があるというのもあるかもしれないですし、緊張よりもワクワク感の方が強かったです。失敗しても成功してもプレミア12に出ていますし、経験になると思うので、僕はそこは打たれたからとかあまり感じなかったですね」

 こうした実戦の強さ、メンタリティの強さは普段からどれだけテーマ性を持って練習を積んでいるか。そしてどんなことでも受け入れる心構え。そこが超一流の実績を残すことができるのだろう。

 今年は昨年以上の完投数、イニング数を投げるために、さらに速球、変化球の精度を高めるトレーニングを積んできた。仕上がりは順調で、シーズン開幕前、最後の実戦登板となった6月12日の阪神戦では5回2失点の好投を見せている。

 山岡は今シーズンの意気込みとして最低Aクラスに入ることを誓った。

 「ここ3年で全部Bクラスので、優勝争いだったりとか、クライマックスの試合を経験してみたいというのはあります」

 山岡は入団してから一度もAクラスを経験したことがない。今年は投打とも能力が高い選手が揃い、本気で狙える年となっている。6月19日の東北楽天との開幕戦で、山岡はその先陣を切るべく、昨年以上の快投を魅せる。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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