運動後の内臓疲労をカバーしよう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
日中はまだまだ暑さを感じても、夕方になると秋の涼しさが心地よい季節となりました。場所によっては日が陰ると肌寒く感じるところもあるでしょう。秋の地方大会が続くチーム、そして一区切りついたチームがあると思いますが、どちらにしてもコンディションを整えながら次の試合、次のシーズンに向かってしっかり準備することが大切です。さて今回は運動をした後に起こるさまざまなコンディションの低下は内蔵に関連があるのかも?というお話をしたいと思います。
激しい運動後は体全体が疲労している
激しい運動を行った後は筋肉だけではなく、内臓も疲労している
体は筋肉を収縮させてさまざまな動作を行っています。激しい運動後には筋線維が引き伸ばされて傷んだ状態となり、そのまま放置しておくと筋肉にダメージが残って筋肉痛の原因となったり、柔軟性が低下してケガにつながったりすることがあります。そのため選手の皆さんは運動後のダメージを少しでも軽くするために、クールダウンを行ったり、帰宅してしっかり入浴したりといったセルフコンディショニングを実践することが大切になってきます。さらに実感しやすい疲労の他にも、体の内部にある胃腸をはじめとする内臓全般も疲労するといわれています。運動中は全身の血流が主に筋肉へと集中するため、内臓への血流は少なくなることが知られていますが、この状態が長く続くと内臓の機能にも影響が及びます。
運動中は安静時よりも多くの酸素や栄養素を必要とし、その大半が筋肉へと供給されます。食後にすぐ運動をはじめるとお腹が痛くなることがありますが、これは胃腸に必要な血流が十分に届かないために起こることではないかと考えられています。また運動をすると体内に蓄積された疲労物質を排出するために、ろ過装置である腎臓や解毒機能などをもつ肝臓などへの負担が大きくなります。クールダウンで血流を促すようにする理由には、こうした内臓への血液供給を回復させる目的もあるのです。運動後に考えられる内臓疲労の例を挙げます。
《内臓疲労による主な症状》
・体が重だるく、やる気が起きない(全身倦怠感)
・いつもに比べて朝起きるのがつらい、寝ても疲れがとれない(肝臓など慢性疲労)
・顔や手足のむくみ(腎臓)
・胃痛や食欲不振、胃もたれなど(胃)
・便秘や下痢などお腹の調子が悪い(腸)
・体調を崩しやすい、風邪をひきやすい(免疫力の低下)
このような傾向が見られる場合は、内臓の機能も低下していることが考えられます。
[page_break:内臓疲労をカバーするために]内臓疲労をカバーするために
運動中からこまめな水分補給を忘れずに。食欲がないときは少し時間を空けてから食事をとろう
クールダウンでは筋疲労とともに内臓疲労もより早く回復させるようにしていくことが大切です。クールダウンを行うことはもちろんですが、特に内臓は外からなかなかアプローチしにくいため、運動中から口に入れるものに気を配っておく必要があります。
《運動中》
運動中は体温調節のために汗をかきますが、発汗がすすむと体内の水分は減少します。こまめな水分補給を行い、血液の濃度を一定に保って血流を促すようにします。胃腸に負担をかけないようにやや冷たいと感じる程度の温度がオススメです。
《運動後》
水分補給とともにすみやかにエネルギー源を補給することが大切です。アスリートであればタンパク質をとる意識は高いと思いますが、タンパク質だけをとるのではなく一緒にビタミンB群を含む食材や、炭水化物、脂質などもバランス良くとることが理想的です。運動直後は軽く補食をとる程度にとどめ、時間をおいてからしっかりと食事をする方が内臓への負担も軽くなります。このときも胃腸を急激に冷やすような飲み物や食べものはなるべく避けるようにしましょう。
激しい運動をした後に「なぜかお腹が空かない」といった経験をした選手もいると思います。こうした時は内臓も疲労し、食べものを受け付けられない状態です。消化に良いものや食べやすいもの(場合によってはゼリータイプの栄養補助食品など)で少し栄養補給を行い、しばらくしてから食事をするようにすると使った分のエネルギー源や体づくりに必要な栄養をとることができるでしょう。運動後の疲労回復はコンディションを整えるために必要不可欠なもの。ぜひ内臓もいたわりながら運動前後の食事などにも気を使ってみてくださいね。
(文=西村 典子)
次回コラム公開は10月15日を予定しております。