早稲田実業vs拓大一
早実の投打の軸 伊藤・生沼の活躍でベスト16入り!伊藤は6安打完封!
6安打完封の伊藤大征(早稲田実業)
早稲田実業vs拓大一の一戦は終盤まで緊迫とした接戦となった。
拓大一の先発・齋藤 陽太(2年)が好投。左スリークォーターから投げ込む直球は120キロ~120キロ中盤と決して速くないが、ストレートと同じ腕の振りでスライダー、チェンジアップを投げるので、想像以上に打ちにくく、また、しっかりとストライクを稼げる投手なので、しっかりとピッチングを組み立てることができる。
早稲田実業は齋藤を打ちあぐみ5回まで無得点。なぜ打ちあぐんだのかを主将の生沼弥真人(2年)に聞いてみると、
「僕らが想定した以上にボールが来ていないので、タイミングがとりづらいんえす。なんとか対処しようとしたんですけど、なかなかできず回が進んできました」
ボールが遅いことも1つの武器になることが分かる事例である。
対する伊藤大征(2年)は140キロ近い速球を投げていた一次予選と比べると、120キロ後半~130キロ前半の速球が多く、ストレートの走りは以前ほどではない。だが内外角へのコントロールが安定し、スライダー、カーブの精度もよく、要所で勢いのあるストレートを投げて打ち取れるのがこの投手の良さ。伊藤は力の入れ加減を意識しており、「球速を抑えたストレートと球速を意識したストレートを投げていましたが、力を入れた時のストレートは非常に良いストレートだったと思います」
この試合の奪三振を振り返ると、ほとんどがストレートだった。
早稲田実業は6回を大事にするチームで、仕切り直しのイニング。この回で勝負を仕掛けた。先頭の生沼は「とにかく先頭打者として出塁して、チャンスを作ること」を頭に置いて、中前安打。さらに投前安打、バントミスで1点を先制。さらに舘 祐作の適時二塁打で2点目を入れた、
そして9回表、2番手の安西 航輝(2年)からチャンスを作る。2番手の安西は齋藤とは対照的に勢いのある腕の振りから常時120キロ~133キロのストレートとスライダーで勝負する本格派。真っ向から力強い投球フォームを見ると、将来的には140キロ超えが期待できる逸材だ。
だが制球が粗い。コントロールがままならず、無死一、二塁の場面で、打席に立ったのは生沼。生沼は「調子が上がらず、内容はよくなかったんですけど、この打席では技術的なことを意識せず、みんながつないでくれたチャンスなのだから、来た球をしっかりと打とうと思いました」と心に決めて入った第5打席では外角に入ったストレートをしっかりと押し込んで右方向へ適時打。貴重な3点目を入れた。その後、敵失や押し出し四球で5点目を入れた。
伊藤は6安打を浴びるも、要所を締め、112球・10奪三振完封勝利。今大会、15イニングを投げて無失点、さらに18奪三振、四死球5と抜群の安定感を見せている。
伊藤は「先週はあまり良い投球はできなかったので、今日は試合前から完封を狙っていました。それができてよかったですし、だんだん自分のピッチングはできるようになっています」
そして3回戦の相手は帝京に決まった。帝京だからといって、変に意識する様子はない。
「相手どうこうではなく、自分のピッチングをするだけ。しっかりと内容を高めて勝負をしていきたいです」
あくまで自分の投球に徹し、勝利に導く姿は去年の伊藤にはない姿である。初戦では本塁打攻勢、2回戦では逆転サヨナラと勢いに乗る帝京打線をどう抑えていくのか。
東東京と西東京を代表する名門同士の対決は大盛り上がりしそうだ。
(文=河嶋 宗一)