Interview

東北楽天ゴールデンイーグルス 松井稼頭央選手

2013.02.20

第136回 東北楽天ゴールデンイーグルス 松井稼頭央選手2013年03月09日

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 高校時代はPL学園で投手として、92年春のセンバツにも出場。卒業後、西武ライオンズで10年間プレーしたのち、海を渡りMLBで7年間。現在は、東北楽天ゴールデンイーグルスで活躍。今年でプロ野球生活20年目を迎える松井稼頭央選手に、走塁・打撃・守備から、WBCのお話しまで幅広くお伺いしました。

高校野球ドットコム 2月特集「WBC戦士たちの高校時代」
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自分が定めたゴール次第で結果は変わる

東北楽天ゴールデンイーグルス
松井稼頭央選手

――2004年から2010年まで、MLBでプレーされた松井選手ですが、最も刺激を受けた部分や、驚いたことはどんなことでしたでしょうか?

松井 稼頭央選手(以下「松井」) 意外に基本重視だったことですね。それまでは、試合でしか彼らの野球を見たことがなくて、どちらかというと軽くやっているイメージがあったんです。
 でも、メジャーの環境に飛び込んでみて、MLBの選手たちは、基本練習を重視していることが分かりました。守備はきちんとやりますし、技術練習もしっかりやっていますし、すごいなと思いましたよ。あれほどの体格をした選手がそこまで考えて、徹底して取り組んでいると、こちらは勝てるわけがないですよね。
 ただ、実際にメジャーでプレーして、勉強になることはいっぱいありました。行ってよかったと思いますね。

――松井選手といえば、ニューヨーク・メッツ時代のメジャーでの初打席で、初本塁打も放ちましたね。これは、史上初となる開幕戦新人の初打席・初球本塁打となりました。

松井 僕は、まずバットを振ることから始まるんです。振らないと何も起こらないですから、あの時もとにかく振ることを意識して打席に立ちました。周りもビックリしていましたが、自分もビックリしていますからね(笑)練習でもあんな打球を打てないので、まさか1打席目にあんな本塁打を打つとは、本当に驚いています。

――その他にも、多くの好プレーをみせて、日本だけでなく、世界の舞台でも観客をざわつかせた松井選手も、今年でプロ野球選手20年目に突入します。ここまで、長く活躍し、観客を魅了できるのは、なぜでしょうか?

松井 好きなことだからこそ、上手くなりたい、もっと打ちたい、優勝したい。そういう気持ちでしょうね。プロに入ってから、今までその気持ちは変わらないですし、その気持ちでやったら、あっという間に20年経ちました。
 もし、高校生でも、日本や世界を舞台に活躍をしたいと思う選手がいれば、もちろん目標を高く持ってもらいたいと思いますが、その目標はすぐに達成できると思わないですし、地道な積み重ねが大事だと思います。
 打つことに関しても、すぐには上手くならないし、打てない時もある。そのために、バットを日々振ると思うんですけど、それを続けてほしいですね。ちょっと打てたからといって、練習をしなくなったら打てなくなりますし、打てたとしても、どこまで高みを目指しているか。まさに自分との戦いですよね。野球をする上では大事なことで、MLB、プロ関係なく、高校、大学でプレーする選手も同じようなことがいえると思います。

――松井選手から、勝負の場で力が発揮できる選手の共通点とは何だと思いますか?

「納得するまでやり切ることを意識」

松井 難しいですが、周りの評価が良くても、自分が納得していないのなら、自分が納得できるまでやるきること。やはり自分次第ですよね。

――では、このあと技術的な質問もさせていただくのですが、その前に松井選手のような三拍子揃った選手になるための秘訣を教えてください。

松井 とにかく練習ですね。そこまでやるかといわれるぐらいの練習ですね。
 あとは、僕は中学時代に、キャッチボールは毎日やっていましたが、野球以外にも色々なスポーツをやってきました。バスケット、サッカー、卓球、バレーなど。
 中学はボーイズリーグでプレーして、ボーイズは土日だけだったので、平日に色んなスポーツが出来たんです。それが、神経系を鍛える意味でメリットになったというのは、プロに入ってからトレーニングコーチから教わりました。
 基本は野球でも、色んなスポーツも取り入れてみるのもいいんじゃないかなと思いますね。

[page_break:走ることで攻守のリズムを生み出す]

走ることで攻守のリズムを生み出す

――では、まず走攻守3拍子揃った松井選手に『走』について、アドバイスをいただいていきたいと思います。松井選手はこれまでに3度、盗塁王を獲得されていますが、盗塁を成功させるために大切なポイントとは?

松井 まず、スタートするタイミングの位置。あとは、走るのを止める勇気も大事ですね。走塁は本当に難しいですからね。そう簡単に決まるものではないですし、塁上で投手の癖を盗んで、走れる準備をしなければなりません。また、アウトカウントやボールカウントなど状況を考えますよね。
 相手も盗塁させまいと対策をしてきますので、それ以上のことをしなければ成功することはできません。だから、走ったら、ボールに聞いてくださいと思うしかないですよね(笑)スタートしたら結果はボールに聞いてもらって、アウトになったらごめんなさいと割り切るしかないですね。そう考えると気持ちも楽ですよ。

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――松井選手自身、走塁の重要性はなんだと思われますか?

松井 僕は走る選手ですから、走ることでリズムを掴んでいきます。一つ先に進めることで相手にプレッシャーをかけることもできる。守備側の心理としても、走れる選手が多いのはとてもしんどいですよ。逆にホームラン打者が多いチームは、守っていて非常にラクなんですよね。
 また走塁は、一つの走塁が試合の勝敗を分けることも多いですし、打って守ってのリズムに、走塁が入ることで相手にプレッシャーを与えることになる。そういう意味で走塁は大事ですね。

――MLBでもそういう野球が多かったのでしょうか?

松井 もちろん。アメリカは積極的に走りますよ。いけると思ったら、どんどん走ってきます。

――松井選手は、高校時代は投手でしたが、野手としてプロ入り後、3年目に50盗塁しました。

松井 僕はプロに入ってから、盗塁の方法を色々なコーチから教えてもらったんです。高校の時は投手だったので、リードにするにも、ちょっと出るくらい。頭から滑るなと言われていたので、帰塁の方法もプロ入り後に、学びました。
 ただ、逆に未経験者だからこそ、どんどん行けました。それだけ、足の速さには自信がありましたので、どんどんスタートしましたね。初めから上手くなるのは難しいので、まずは走って、何かを感じることですね。僕は、オープン戦でもどんどん走って行きましたし、そこで何かを覚えて、走れるようになりました。

[page_break:打撃:良い時のバランスに近付けるための練習/守備:基本に忠実だからこそ、遊びのプレーが出来る]

打撃:良い時のバランスに近付けるための練習

「良い球が打てなかったら割り切ることも必要」

――続いて、バッティングについて、お伺いします。松井選手は、どのような意識を持って打席に立っているのでしょうか?

松井 僕はメジャーでプレーしていた時は、動くボールが多くて、中々打てなくて難しいなと感じていたのですが、それでも甘いボールがくれば飛ばしていきますね。とにかく、色々なボールに対応しようとするのではなく、甘い球は逃さない。それで、予想以上の良いボールが来て打てなかったら、これは投手が良かったと割り切りすることが必要だと考えています。

――松井選手は、これまでも打率では安定した結果を残されてきた印象がありますが、どのような練習をされたり、調整をされているのですか?

松井 打撃は一日、一日変わっていくものだと思うんですよね。練習方法もティーにするにしても、5種目ぐらいやります。何のためにやっているかというと良い時のバランスに近づけるためですね。ですから、普段の練習から自分の感覚やバランスを感じるのは、とても大事なことだと思っています。

――松井選手の打撃時のチェックポイントは?

松井 打つことは感覚も大事ですが、フォームでは、頭の位置とトップの位置を確認しています。もし、ティーを打つならば、ボールの飛び方をチェックしています。あとは、自分のスイングを確認することですね。
ティーは、変なスイングでもボールに合わせれば、打てるんですけど、自分のスイングで打つ感覚を掴むことも大切ですね。

守備:基本に忠実だからこそ、遊びのプレーが出来る

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――続いて、守備に関して伺います。MLBでは、天然芝にどのように対応されていたのですか?

松井 みんな天然芝ということで、足が止まってしまうケースが多いんです。イレギュラーもしますし、バウンドの仕方も変わります。だから、慌てないことが大事ですね。一歩目も大事なんですけど、『一歩目も前へ突っ込め』と思う選手が多いんですけど、ただ前へ突っ込むだけでなく、バウンドの跳ね方をしっかりと見極めなければなりません。だからこそ、慌てないことが大切だと思います。

――本番で慌てないプレーを出来るようになるために、日頃の練習ではどんなことをされているのですか?

松井 人それぞれの基本があるんですけど、僕なりの基本練習があって、その積み重ねが良いプレーにつながっていると思います。シーズンオフの自主トレはそこを重点的にやっていますね。
 練習方法としてはゴロを打ってもらって、股を割って取る。他にも、壁当てがあれば、壁当てをしたり、素手で取るなど、いろいろなメニューをやりますよ。とにかく、ゴロが転がったら、しっかりと取って投げる。その動作の繰り返しですね。

――松井選手のような華麗な守備に憧れているのは高校球児だけでなく、NPB選手にも多いと伺います。

松井 映像で映っている僕のプレーは基本重視の守りなんですけど、その中で年に1回、遊びをすることがある。いわゆる華のあるプレーですね。それができるためには、基本の取り方が身に付いているかどうか。
 僕にいきなり、今日はスーパープレーできるかといったら出来ませんよ。だから、普段は基本に忠実に。でも、たまに遊びを取り入れると、とても面白いんです。僕の中でも、遊びがないと気が狂いますから(笑)
 一生懸命やっている中でも、遊び心は必要ですね。

[page_break:2013年に向けて]

2013年に向けて

――ありがとうございます。では、最後に今回のWBCについてお伺いします。WBCでは、どんなプレーをみせたいですか?

松井 WBCといっても、いつも自分がやっていることを出すだけですし、特別なことをやるつもりは全くないです。環境関係なく、自分のプレーをしたいなと思います。
 この時期に、これほどの緊張感を感じながらプレーすることはないですし、チャンスを与えてもらっているので、今回のWBCはとても楽しみですね。

「WBCでもいつもどおりのプレーをしたい」

――では、2013年の今シーズン、松井選手のこんなところを高校生やファンの皆さんに見てほしいというプレーはありますか?

松井 僕は走攻守で勝負する選手なので、やっぱり“走攻守”を見てほしいですね。基本的に打つだけとか、走るだけとか、守るだけとか、分けられないので、トータルで“松井稼頭央”だと思っていますから。観客の皆さんに、走攻守三拍子揃ったパフォーマンスを見せるために、常に準備をしています。
 その中でも、僕は走ってリズムを作る選手なので、走ってリズムを作っていくというのは、ありますね。

――今シーズンも松井選手らしいプレーがたくさん見れそうですね。

松井 そうですね。それに、ファンの皆さんの盛り上がりは僕たちが思っている以上の力を発揮させてくれたりもします。野球をやっているからには、あいつスゴイなと思われたいですよね。

――では、最後に、高校時代にこんな気持ちで取り組むと上達につながるといったワンポイントアドバイスをお願いします。

松井 とにかく、『野球が好きである』という気持ちです。野球をやる以上楽しくやりたいと思いますし、声の出し方だけでも楽しくやれるかどうかが決まるものだと思っています。
 僕自身、野球は好きか、嫌いかといったら、今でも当然好きですし、その気持ちは今でも大切にしています。

松井稼頭央選手、貴重なお話しをありがとうございました。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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